第二話 今日はよく眠れそうです
赤い花に近づけば近づくほど、不思議なんです。
こんなに広い花畑なのに、どうして今まで気付かなかったのでしょう。
彼女にとっては嬉しい出来事でしょうね。
「ん~。う~ん」
ガサガサと花畑に踏み込んで、バキッと茎を折る。
まじまじと花を見て、クンクン鼻を鳴らしています。
でも、ほっぽり投げては呻いていますけど。
どうやら目的の薬を作る材料ではなかったようですね。
あれ?大剣をまた取り出しましたよ?
まわりには何もいないようですが……。
大剣を振り回すたびに、花も土も飛び散ってますね。
酸っぱい匂いも漂ってますし……。
おや?あまりの花嵐で彼女の姿が見えなくなったのかな?
……見失ってしまいましたね。
でも何か音がします。
ガラガラガラッ!
石が崩れ落ちるような音です。
そのあと、キン!キィン!
金属がぶつかり合う音まで聞こえてきました。
動物の巣穴でしょうか?
それともモンスターが眠っていそうな穴でしょうか?
「あ~~~~。うぐぅ。あ~」
まだ転がっているようなので、かなり深い穴かもしれません。
大丈夫ならいいのですが……。
深い深い地の底は静かだった。
森の下には、人の知らない空間があった。
天井から垂れる無数の根からは赤い液体。
どこかへ流れ落ちる雫だけが、ぽたり、ぽたりと音を響かせている。
光など届くはずもない場所だった。
……そのはずだった。
空間の一角に、作られた部屋があった。
人間なら五人ほど暮らせそうな場所だ。
ゴブリンなら十匹か……。
コン、コン。
カン、カン。
先ほどから、壁の亀裂から現れた鎧を、枝や小石、ホークなどで叩いているらしい。
ミントは落下で気を失ってしまったのでしょうか?
いいえ、見て下さい。
大剣を未だしっかりと握っていますね。
いきなりむくっと上半身を起き上がらせました。
脅しのつもりだったのでしょうか。
「ぐわぁ~」
あまりにも可愛すぎましたね。
それでも半分のゴブリンは、扉のない部屋から逃げて行きました。
でも、逃げた仲間について行けばいいのに、戦う気満々です。
ゴブリンたちは、そこらに落ちていた武器を拾いました。
ひときわ体の大きなゴブリンが、盛り上がった筋肉の腕で先端の太いこん棒を振るいます。
もしこれが人間だったら……。
普通の人間だったらと言う意味ですよ。
ガンッ、こん、こん。
ミントは立ち上がりました。
ガンッ、ガンッ、こつん。
先に逃げた仲間たちは賢かったのかもしれません。
彼女にとっては、撫でた程度だったでしょうから。
壁に五つの染みが増えた頃には、また静寂がやってきました。
「ひっくぅ」
「あ、やばい。こいつら魔物だったっけ?」
「潰さなければよかったよぅ~ひっく」
彼女もどこへ行くのかわかっていませんが、とにかく部屋を出ました。
新鮮な空気を吸う為に、兜から顔を出しました。
真っ赤な顔。
少し虚ろな目。
残念ながら、こんな地下に新鮮な空気などありません。
でも、そんなことも考えられないのか、
スー。
ハー。
と深呼吸をしています。
足取りもフラフラです。
そのまま岩の通路にしゃがみ込みました。
また一つ、大きく息を吸い込みます。
何やら呟いていますね。
「眠くなるだけで、よかったぁー」
すぅー、すぅー。
安らかに眠るミントは可愛いですね。
このピカピカな全身鎧をお宝だと思って近寄ったら……。
ミミックより危険かもしれません。
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この物語はフィクションです。
実況、憶測、個人の感想が含まれています。
今回もミント本人への確認は行っておりません。




