第19話 ズレた評価
「見つけようか、“壊れてる理由”を」
その直後、影が一斉に動いた。
「来るぞ!」
ジンが叫ぶ。
元・冒険者たち。
動きは鈍いが、数が多い。
そして。
「……連携してない」
ルナが眉をひそめる。
「バラバラね」
「そう」
僕は頷く。
「だから厄介」
「は?」
ザックが言う。
「連携してないなら楽だろ」
「普通はね」
でも違う。
「統一されてない動きは、読めない」
「……」
ガルドが小さく息を吐く。
「確かに」
来る。
正面。
横。
斜め。
同時。
「ガルド、受ける」
「任せろ!」
前に出る。
大剣で受ける。
「イーリス、抑える」
「範囲でいく!」
火が広がる。
まとめて削る。
でも。
「……止まらない」
ジンが低く言う。
普通なら、怯む。
でもこいつらは違う。
感覚が壊れている。
「ザック、ルナ、抜ける」
「おう!」
「はいはい!」
二人が動く。
横からすり抜ける。
「……レイン」
リゼが言う。
「どこを見ますか」
「中心」
「中心?」
「“ズレてない場所”」
「……」
理解に一瞬かかる。
「全体はバラバラ。でも」
視線を走らせる。
動き。
間。
向き。
「一つだけ揃ってる」
「……あ」
リゼが気づく。
「視線……」
「そう」
全員が。
同じ方向を“見ている瞬間”がある。
「そこが制御元」
「……なるほど」
ガルドが笑う。
「分かりやすいな」
「分かりやすいけど、見えにくい」
それがポイント。
「……右奥」
小さく呟く。
「建物の裏」
「……行くか」
ガルドが言う。
「いや」
僕は首を振る。
「今は行かない」
「は?」
「なんでだ」
「確認が先」
短く言う。
「本当に“そこ”か」
「……」
リゼが頷く。
「確証を取る、ということですね」
「そう」
「……面倒くせえな」
ザックが舌打ちする。
「最短だよ」
「どこがだよ」
「外したら終わる」
それだけ。
「……」
ルナが笑う。
「まあ、そうね」
「イーリス」
「なに」
「一点集中で撃てる?」
「できる」
「じゃあ、あそこ」
指す。
建物の裏。
「……撃つわよ」
詠唱。
短く。
圧縮。
火が走る。
一直線。
そして。
――当たる。
次の瞬間。
「……!」
影の動きが変わった。
止まる。
ほんの一瞬。
でも。
「……当たりだな」
ジンが笑う。
「止まった」
「うん」
確定。
「ガルド、突破」
「行く!」
踏み込む。
ザックとルナが続く。
「……!」
影が追う。
でも遅い。
「イーリス、抑え続けて」
「了解!」
火が続く。
動きを止める。
「……」
建物の裏。
そこに。
“それ”はあった。
人。
いや。
人だったもの。
装置に繋がれている。
目が虚ろ。
だが。
周囲と“繋がっている”。
「……これか」
ガルドが低く言う。
「そう」
「壊す?」
「壊す」
短く答える。
「ザック」
「任せろ」
一閃。
装置が断ち切られる。
次の瞬間。
影が止まる。
完全に。
沈黙。
---
「……終わったな」
ジンが息を吐く。
「終わった」
僕も答える。
「……」
リゼが装置を見る。
「これが……原因」
「そう」
「……」
ルナが少しだけ顔をしかめる。
「気持ち悪いわね」
「効率はいいけどね」
「やめて、その言い方」
軽く笑う。
「……」
ガルドが言う。
「管理局は、これを見つけられなかった」
「そう」
「で、俺たちは見つけた」
「そう」
「……」
ザックが腕を組む。
「じゃあ、証明できたってことか」
「まだ」
「は?」
「これだけじゃ弱い」
「……」
全員がこちらを見る。
「なんでだ」
「管理局も、いずれは見つける」
「……確かに」
イーリスが頷く。
「時間の問題」
「そう」
だから。
「違いを見せる」
「違い?」
「過程」
短く言う。
「どう見つけたか」
「……」
リゼが小さく息を呑む。
「そこまで……見ているんですか」
「見てるよ」
ユリウスの目を思い出す。
「全部」
「……」
沈黙。
でも。
納得はしている。
「……」
その時だった。
背後。
気配。
振り返る。
ユリウス。
もう来ていた。
「……早いね」
「当然だ」
短く答える。
周囲を見る。
止まった影。
壊れた装置。
「……なるほど」
小さく呟く。
「原因特定、排除」
「そう」
「……だが」
少しだけ間。
「評価は変わらない」
「……は?」
ザックが声を上げる。
「なんでだよ!」
「これは“想定内”だ」
ユリウスは淡々と言う。
「時間をかければ、管理局でも解決可能」
「……」
空気が冷える。
「……じゃあ何が違う」
ガルドが低く言う。
「何を見てる」
ユリウスは、少しだけ視線を動かす。
僕を見る。
「過程だ」
「……」
「どうやって辿り着いたか」
その一言で。
完全に一致した。
「……いいね」
僕は小さく笑う。
「ちゃんと見てる」
「当然だ」
ユリウスは言う。
「だからこそ、判断する」
少しだけ間。
そして。
「次だ」
「……」
「次で、決める」
その言葉で。
空気が変わる。
試験じゃない。
選別だ。
「……」
僕は少しだけ息を吐いた。
「いいよ」
軽く言う。
「受ける」
その瞬間。
戦いは、もう一段上に進んだ。
「結果」ではなく「過程」を見られる段階に入りました。
ここからは、ただ勝つだけでは通用しません。
“どうやって勝つか”が試されます。
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次は、本当の選別です。




