第18話 正しい排除
「じゃあ、証明しようか」
その一言のあと、誰もすぐには動かなかった。
空気が、少しだけ重い。
「……レイン」
ガルドが低く言う。
「条件、聞いてないぞ」
「聞いてないね」
「聞くべきじゃないのか」
「聞いても変わらない」
短く答える。
やるか、やらないかだけだ。
「……雑だな」
ザックが呆れたように言う。
「でも、そういうとこだろ」
ジンが笑う。
「細かい条件で動くタイプじゃねえ」
「そういう問題じゃないわよ」
ルナがため息をつく。
「今回は“管理局の案件”よ? 絶対普通じゃない」
「普通じゃない方がいい」
「は?」
「見せやすいから」
沈黙。
その理屈は、分かる。
でも、納得はしづらい。
「……」
リゼが静かに言う。
「どこまで想定していますか」
「失敗する可能性?」
「はい」
「あるよ」
即答。
「普通に」
「……」
全員が少しだけ顔をしかめる。
「でも」
続ける。
「失敗してもいい」
「よくねえだろ!」
ザックが即座に突っ込む。
「排除対象なんだぞ俺たち!」
「だからこそ」
短く言う。
「“どう失敗するか”が見せられる」
「……」
ガルドが目を細める。
「……つまり」
「勝ちだけじゃなく、過程を見せる」
「……なるほどな」
小さく頷く。
理解は早い。
「……気に入らねえけど、筋は通ってる」
ザックも渋々納得する。
ルナは肩をすくめる。
「ほんと、やり方がいやらしい」
「褒めてる?」
「褒めてない」
軽く笑う。
---
その日のうちに、場所は伝えられた。
街の外。
旧迷宮区域。
「……ここか」
ジンが低く言う。
荒れている。
放置された区域。
人の気配が少ない。
「……なんでこんなとこが案件なのよ」
ルナが周囲を見回す。
「放置されてるなら問題ないんじゃない?」
「あるよ」
僕は短く言う。
「放置されてるのが問題」
「……」
リゼが小さく息を呑む。
いい反応だ。
理解が早い。
「……レイン」
ガルドが言う。
「これ、管理局が失敗したって話だったな」
「そう」
「つまり」
「処理できなかった」
それだけ。
「……」
全員の表情が少し引き締まる。
軽い案件じゃない。
「……来るぞ」
ジンが低く言う。
気配。
複数。
でも。
どこかおかしい。
「……」
見える。
影。
人影。
「……人?」
ザックが眉をひそめる。
「いや、違う」
イーリスが即座に否定する。
「動きが不自然」
近づく。
そして。
「……ああ」
僕は小さく呟く。
「なるほど」
「なんだよ」
「これが“失敗”」
目の前。
現れたのは。
元・冒険者。
だが。
動きがおかしい。
目が焦点を結んでいない。
同じ方向を見ていない。
「……操られてる?」
ルナが呟く。
「違う」
「違う?」
「壊れてる」
短く言う。
「……」
沈黙。
それが一番近い。
「……管理局は、これを?」
リゼが言う。
「処理できなかった」
「そう」
理由は簡単。
「数が多い」
影が増える。
次々に。
「……おい」
ザックが後ずさる。
「これ、普通にヤバくねえか」
「ヤバいよ」
軽く答える。
「だから残ってる」
「……」
ガルドが剣を握る。
「……どうする」
視線が集まる。
ここだ。
見せる場面。
「まず、倒さない」
「は?」
全員が固まる。
「何言ってんだ」
「倒したら終わる」
「終わるだろ普通は!」
「終わらない」
短く言う。
「これ、“原因”がある」
「……」
イーリスが目を細める。
「……制御元」
「そう」
いい理解だ。
「管理局は、これを見つけられなかった」
「……」
「だから失敗」
簡単な話。
「……なるほどな」
ガルドが頷く。
「じゃあ、探すのか」
「そう」
「戦いながら?」
「そう」
「……」
ザックがため息をつく。
「ほんと、面倒なことするな」
「効率いいでしょ」
「知らねえよ」
ルナが笑う。
「でも、面白いじゃない」
「それ」
ジンも頷く。
「やるしかねえな」
全員の空気が変わる。
戦闘じゃない。
探索。
でも、危険度は高い。
「……来る」
影が動く。
一斉に。
「ガルド、受ける」
「任せろ!」
「イーリス、抑える」
「了解!」
「ザック、ルナ、抜ける」
「おう」
「はいはい」
「リゼ、全体見て」
「任せてください」
形ができる。
「……いいね」
小さく呟く。
「じゃあ」
軽く言う。
「見つけようか」
“壊れてる理由”を。
その奥にあるものを。
管理局が見つけられなかったものを。
今回は「勝つ」ではなく「見つける」話になりました。
敵を倒すだけじゃ解決しない問題。
ここで作品の幅が一段広がります。
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次は、“原因”に触れます。




