☆一月【サバゲー男子】
【板東伴也】編
はじめは、風紀の取り締まりなどをするつもりはなかった。
この島に眠る秘宝を求め、気ままにアドベンチャー生活を楽しむことができれば、小生も十分にリアルを充実しているものと認めることができると思っていた。
ところがどっこいだ。あの和智田陽平(まさか傭兵!? 刺客なのか!?)は、クラス内で徐々に勢力を拡大させ、和智田ファミリーなるリア充グループを結成し、小生が目をつけていた洞窟のお宝までもをかっさらっていった。
許せん! 小生の楽しみと財宝を奪い、ワイワイキャッキャとハーレムに興じるその不埒な性根、我が聖なるカタルシスライフルで木っ端みじんに撃ち砕いてやる!
「──バンバン、あけおめ!」
食堂で朝カレーを食べていると、噂の総大将が目の前に現れ、噛みつかんばかりに白い歯を見せて笑った。
こいつはいつまで年始の挨拶をするつもりだ。年が明けてもう二週間だぞ。
「よく用意できたな、その装備」
銃はもちろんのこと、頭部にはヘルメットとゴーグルを着け、上半身をがっつりプロテクトするプレートキャリアに、厚めのグローブとゴツめのブーツ。ホルスターはレッグ、ヒップ、ウエストにじゃらじゃらと提げ、全体的にとりあえず揃えた感がさすが初心者だな。ダサい。
「昔、サバゲーにハマってた先輩がいたらしくてさ。その残骸だ。全員分はなかったから、戦力になりそうな奴を優先的に着させてやったぜ」
ほう、弱者は切り捨てるタイプか。意外だな。……しかし、そんなことを敵である小生に話してしまうあたり若輩者だ。言わずと貴様らの作戦が見えてくる。
「和智田、これ脱いでいいか? すっげぇ窮屈で気分悪ぃんだけど」
赤髪の不良、通称オスヤマ。身体能力こそ優れているものの、一学期二学期ともにクラス内での成績ワースト一位の典型的な体育会系。どうせがむしゃらに突っ込んでくるだけだろう。
「あたいも嫌だよ。重いし動きづらいし、いいところないじゃないか」
年中無休ロングスカートのスケバン女。女で有力そうなのはこいつくらいだな。授業中に一分一秒でも長く寝ようとするぐうたらなところを見ると、もともとの運動神経がいいだけのようだ。そんな奴にサバイバルは生き残れない。
「ちょっとぉ、もっと可愛い色のものはないの? フリルとかリボンがついてないとテンションが上がらないわ! もう、むっさ苦しいったらありゃしない!」
ネカマ。論外。
一同はぶちくさ文句を言って装備を脱ぎ散らかした。……お前ら、寝間着の上に着ていたのか。なめてるだろ。
やはり、小生とまともにやり合えるのは、和智田陽平ただ一人のようだ。分析するまでもなかったな。残りの控えもパッとしない奴らばかりだ。
「あなたたち、本当にやるの? 夕方から天気が悪くなる予報なのよ。やめたほうがいいわ」
確か、留年しているという噂のお姉様。年上のお姉様……お姉様……。ふむ、いい響きだ……。
「そうよ。新年早々、風邪なんて引きたくないわ」
それだけ胸に栄養を蓄えていたら風邪など引かないだろう。けしからん!
「俺っちはすでに引いてる気がするよぉ……。でも、わっちーのためなら頑張る!」
やる気は認めるが、フィールドに鼻水をまき散らす前に帰れ。
「最近思った……漢方薬の処方を有料化にしようと……」
このクーデレ系ロリっ娘ははじめから参加をするつもりがないようだ。
「野蛮な奴らめ……。施設に危害を与えたら許さんぞ」
ガリ勉はペンでもくわえて黙ってろ。
「まあまあまあ、とりあえずやってみようぜ。大人のお遊戯だ。今日が最初で最後だと思って楽しめばいいんだよ」
前言撤回。和智田陽平も敵として認識しない。小生の生き甲斐をただの遊びだと思っている奴らには鉄槌を下す! 断罪だ!
「貴様ら、死を見て後悔するんだな。正午の鐘が鳴りし時、貴様らの耳には閻魔のしゃがれた笑い声が聞こえてくるだろう。首を洗って待っていろ!」
我ながらセオリーな言葉だ。とろけたオツムには伝わりやすかろう。
黄色い声が聞こえてもいいくらいに熱い視線を浴びながら、空になった食器を持って席を立った。――その時。
「っ!?」
毒針を刺されたような痛みに背筋が凍り、聖なるカタルシスライフルを手に振り返った。
な、なんだ、今の殺気は……!?
「どうかしたのか、バンバン」
和智田じゃない……。オスヤマでもスケバン女でもない……。
気のせいか……。奴らに早く制裁を加えたくて、神経がうずき始めただけのようだ。
小生もまだまだ青いな。
戦いは、天川ねねの家が所有する山の一角で行われることになっていた。
昼時を知らせる鐘が鳴り、雪に埋もれた畑の掃除をしていたご老人たちが家へ戻る頃、密林の中で岩に背中を預けていた小生は腰を上げた。
──さあ、狩りの始まりだ。覚悟しろ、和智田陽平!
「バンバーン!! どこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
って、いきなり来るのかよ!!
思わず足を滑らせ、体勢を整える。
馬鹿なのか!? 総大将は一番最後の一番イイところで出てくるものだろうが! しかもなぜ貴様は手ぶらなんだ! サバイバルを何だと思っている!
「ちょっと待ちなさいよ、和智田! 忍びの如く取り囲む作戦はどうしたのよ!」
「なぜ僕がこんなことを……」
チチとガリ勉を引き連れ、奴は元気に散歩でもするかのようにスキップをしている。
スリーマンセルか。しかし、個人の基礎がなっていなければチーム行動などなんの意味もなさない。なぜあの二人を……。
「寒いから一気にカタをつける! お前らもちゃんと探せよ!」
まあいい。まずはあのガリ勉からゲットするか。
片膝を地面につけ、射撃体勢に入る。奴らが五十メートル圏内に入ったタイミングでブナの林から銃口を覗かせ、ゴーグルと眼鏡の二重レンズに照準を合わせてトリガーを引いた。
その刹那。ガリ勉は首をわずかに動かし、弾の軌道から逃れた。
――はっ!? 今、避けたのか……!?
「おい、弾が飛んできたぞ。お前の望み通り、狙われ放題だ」
そんな馬鹿な!! どんな動体視力してるんだよ!! 新幹線よりも速いんだぞ!? というか、貴様はバスケの授業で顔面に球を受けていなかったか!?
「え? 銃声なんかしなかったぞ?」
「エアガンが〝バーン!〟なんて派手な音立てないでしょ。それか遠くから狙ってきてるのよ」
な、ならば、次はあの巨乳をターゲットに……!
「──! 和智田、あっちよ!」
的を変えた瞬間、その人差し指がスコープを通して目に突き刺さる。
「あっちのほうから気持ち悪い視線を感じるわ!」
なんだそれはっ!! 敏感にもほどがあるだろ!!
「よっしゅあぁぁぁ!! 行くじゅえぇぇぇぇぇ!!」
和智田は雄叫びを上げ、雪に足を取られて腕をバタバタさせながら近づいてくる。
立ち上がり、奴を視界に捉えたまま中腰で後退する。
すると、そばに垂れ下がっていた枝葉に何かがチップした。
「背中がガラ空きだよ!」
声に振り返ると、ハンドガンを両手で構えたスケバン女が堂々と立っていた。
……なるほど、和智田のオーバーアクションは陽動だったのか。
続けて弾が発射されると同時に、木の幹の裏へ飛び込む。
テレビの観すぎじゃないのか。敵を仕留める前に無駄口を叩いていいのはお芝居だけだ。本物のサバイバルでは自分の居場所を知らせて撃ってくださいと言っているようなものよ。
腰のホルスターからフルオートガンを引き抜き、幹から顔を出して素早くショット。スカートに当たった気もするが、無視されたようだ。無言のまま岩陰に消えた。
「あ、あああああ当たれぇぇぇー!!」
間もなくして、右手の雑木林からは無数のアリンコ流星が飛来する。〝イノシシ注意〟と書かれた看板の裏に飛び移り、全くもって統制の取れていないその軌道が尽きる時を待った。
貴様も来たのか、鼻垂れ小僧。銃だけを物陰から出して撃つ行為は厳禁だぞ。ヒットするわけもない。索敵をおろそかにすれば弾を無駄にするだけだ。──そして。
「敵の銃を押さえつける行為も禁止されている!」
右から飛び出してきた赤髪にターゲットチェンジ。その伸ばされた素手に一発撃ち込む。
奴は弾を掴み取ってニヤリとほくそ笑み、再び茂みの中へ逃げ込んだ。
いや、キャッチしたところでヒットはヒットだからな。本物の銃弾なら貴様の右腕は恐ろしいことになっている。
まったく、浅はかなアタッカー部隊だ。だが、小生の殺気を感知できるほどの能はあるらしい。むやみに姿を見せなくなった。
「貴様ら、いい加減にしろ。そもそも、敵と接触すること自体がはばかられるものだ」
脇のハンドガンも抜き、二丁の銃を構えて神経を張りめぐらす。
「んなこと言われても、オレたちルール知らねぇし」
昨日説明しただろうが!
「喧嘩ってのは、やるかやられるかさ。逃げる以外の行動はすべて許されるんだよ」
喧嘩じゃない! 貴様はそれでも女か!
「一見、慣れているお前のほうが有利に見えるかもしれないが、とんだ勘違いだぜ! 俺様たちはルールに縛られない分、自由に動ける。頭カッチカチのお前は動きが読めないだろう!」
警戒することなく目の前に現れた和智田が鼻で笑う。
「悪いことは言わない。ルールなんて捨てるんだな。じゃないと、お前は俺様たちの前にひざまずくことになる!」
全身で感じる数多の視線。いつの間にか包囲されているようだ。
アマチュアなど束になったところで取るに足らないと思っていたが、誤算だった。素人というのは風の吹くまま気の向くまま。やりたい放題だ。
「……ふっ、そうだな。リアルな戦場にはレギュレーション――ルールも慈悲も存在しない」
そっちがその気なら、こちらもリミッターを解除する。
逢魔が刻。封印されし百鬼を解き放とう。――もう誰も、小生を止めることなどできぬ!
「手加減は終わりだ!!」
イン・フロント、セット・ツイスト、ロック・オン……――ガトリング!!
「陽平ちゃん、危ないっ! ──ぎゃあっ!」
捨て身で和智田をかばった矢井馬博美は、背中に弾丸の五月雨を受け、飛び出した勢いのまま崖を転がっていった。
撲滅――いや、殲滅だ。奈落の底で後悔するがいい。
「ヤバ美!!」
堕ちていく亡骸を剥き出しの目で見ていた羽場真知子は、仁王立ちになって銃口を差し向ける。
「あんた、なんてことを――! うっ!!」
その左胸を撃ち抜いた。――戦場に慈悲などない。そう言っただろう。
崩れ落ち、動かぬ屍となった肢体をなぶるように見下ろす。
「バ、バチ子ちゃんっ!!」
濛々しい雑草の奥から上がる声。隙間からわずかに見える怯えた瞳。
撃たれるのが怖いのならこの場に来るべきではない。和智田に巻き込まれたのが運の尽きだ。せめて、苦しまぬようあの世へ送ってやろう。
奴の背後に生える巨木に狙いを定め、トリガーを引く。
「がっ!?」
幹に当たって跳ね返った弾は、狙い通りの反射角度で原勇介の後頭部に突き刺さる。
どさりと前倒れに雑草を押し潰し、初めてその姿を現した。右手には銃、左手にはポケットティッシュが握られていた。……鼻水はまき散らさなかったようだ。
凍てつく風が吹き込み、周囲から人の気配が薄れていく。
形勢を立て直すつもりか。賢明な判断だ。だが、逃がすわけにはいかない。
両手の銃を握り直し、足跡を追って林の中を突き進んでいく。
すると、座敷わらしのように突っ立っている小さな影を見つけた。
「ウチは審判。撃ったら即退場」
この状況でよくそんなことが言えるな……。まあ、フィールド提供者だ。見なかったことにしてやろう。
となれば、残りは六人。五分もあれば片づくな。
地面を蹴って、一直線に駆け出す。足跡は分かたれていたが、鼻が誘われるほうへ向かった。草木が生気を失った死の世界に似つかわしくない、ほのかな甘い香り。まずは簡単な獲物から仕留めよう。
追いついたところで正面に回り込み、その手に握られたハンドガンを蹴り上げる。
「きゃっ!」
女は驚いて足を滑らせ、尻餅をついた。そのたわわな実りは大きく揺れる。
「貴様は禁断の果実そのものだ。イッツァ・ギルティ」
──バンッ!
額スレスレの銃口から放たれた黒い弾丸に弾かれ、笹垣恵実梨は雪に沈んだ。
「エミリーっ!! ――テメェ!!」
飛び出してきた押山城司は、周囲の雪が溶けそうなほど顔を赤くしている。
「安心しろ、威力は抑えた。……痛みなど死者には関係ないだろうがな」
「このクソ野郎っ!!」
計画性のない乱れ撃ち。無駄まみれのアクション。見なくても避けられる。いや、避ければ逆に当たりそうなものだ。もったいないな。貴様なら、ちゃんと訓練を受けてさえいれば女一人を守ることなどたやすかろうに。……さあ、いつ息の根を止めてやろう。
「隠れてんじゃねぇよ!! そのクールぶったツラを出しやがれ!!」
いい具合に怒りと憎しみで煮込まれている。貴様の脳ミソはドロドロだ。もはや原形という名の理性は失われた。だがしかし、負傷してもかまわず襲ってきそうな勢いだ。少し様子を見るか。
木々と岩山の間を飛び交い、弄ぶように撹乱させる。
奴はおもちゃを取り上げられた子供のようにわめき、暴れ、やがて足を止めた。
スタミナは無限大じゃない。学習しろ。
奴が呼吸を整えている間、周囲に視線を凝らして耳を澄ませる。
すると、右手の奥に見える腐りきった杉の木からかすかな白い息が漏れているのが見えた。
足音を立てずに忍び寄り、残り一歩を大きく踏み込んで銃を向ける。
「動くな」
その人は一瞬だけ目を見開き、すぐに肩を下ろした。
……なんだ、亜里紗お姉様か。
「私は戦う気なんてないわ。みんなが無茶をしないか見ているだけ」
「なら、その銃はなんだ」
「護身用よ。持たされたの」
その淡々と話す口ぶりに偽りはないように思えた。
だが、どんな理由であれ、戦場に立つ者は兵士であり、武器を持つ手は戦闘意思の表れ。見逃すという選択肢はない。
「ま、待て!! 姐さんにはまだ小さい子供が……!!」
追いついてきた男に、油断なく一方の銃を突きつける。
「子供……?」
そういえば、教室でそんな話をしていた気が……。まさか、本当だったのか!? 嘘だろう!?
「そろそろお昼寝から起きる時間だから、帰るわね」
────。
今年最大勢力の風紀荒らしを確認。
「……即刻、排除する……」
嘲笑うかのように向けられた背に、震えを抑えた腕を伸ばす。──その時。
「ぬっ!?」
腕に鈍痛が走り、銃を落としてしまった。どこからともなく飛んできた黒い物体が直撃した。ブーツの爪先に落下したそれは、ホルスターだった。
「──それが男のやることかよっ!! このクズが!!」
怒り狂った和智田が投げてきたよう──いや、違う……!?
「お、お前は!! 姐さんをマジクソ野郎から守ってくれた、謎のヤバい男──ヤバ男!!」
は……? 誰だ……? 少なくともうちのクラスの奴じゃないな。だが、その凶器のような鋭い目つきは確かにヤバい。──そうか! 今朝の殺気はこいつの……!
「また来てくれたの? 優しいのね」
そんなヤバ男に微笑みかけるお姉様。これは事件だ……。
右の銃で押山城司に二発放ち、後退しながらヤバ男にも数発撃ってみた。動きを読んでいたのか、引き金を引く瞬間には地を蹴って茂みに飛び込んでいた。
なかなかやるな。飛び入り参加しただけのことはある。
「一緒にぶちかましてやろうぜ、ヤバ男!」
「ふっ、遅れんなよ!」
ザクザクと踏みしだく足音に、ハンドガンをホルスターに戻して背中のマシンガンを手に取った。
小生が落とした銃を拾うヤバ男と、死んだ女のことなどすでに忘れ去ったとでもいうように笑うレッドモンキー。──少しは楽しめそうだ。
「かかってこい、血に飢えた野獣どもよ!」
脇を締めて走り出し、振り返りざま、慈悲なきハチの巣射撃を開始。
左右に分かれた奴らは木から木へと飛び移り、身を隠しながらも着実に間合いを詰め、隙あらば撃ち返してくる。
飛び散る銃弾が幹をむしり、枝を喰む。攻防を重ね、奴らに集中しすぎている間に樹木の道から外れ、河原に出た。――前門の虎、後門の狼。挟まれたか……。
作戦か偶然か、奴らは高揚に鼻を膨らませ、不敵に笑んでいる。
「これで逃げられないだろ! 男なら、まずは土下座で謝罪しな!」
「テメェが奪った命はテメェの命で償え!」
正直、土下座などいくらでもできる。その辺のプライドはない。しかし、こちらに非があるわけではない。
「過去のことに頭を下げたところで誰が満たされる。小生は間違った選択をしたとは思っていない。どんな手を使ってでも生き延びた者が勝者だ」
「はっ。そんな生き方じゃあ、誰も幸せにできないな」
「反省する気がねぇんなら消すだけだ!」
両者、見合って見合って――。
「地獄で後悔しやがれ!!」
「地獄で後悔しやがれ!!」
撃ち放った。重なる声に、重なる銃声。つけ焼き刃のタッグにしては息の合ったプレーだ。
――だが、それが仇となったな。
トリガーが引かれたタイミングで、腰を軸に体を大きく後ろへ反らす。
サバイバル超秘奥義・イナバウアー!
「がっ!?」
「ぐあっ!?」
わずかな高さのズレがあった奴らの弾は、相殺されることなく小生の目の前を通過し、その先にいた相方の顔面を貫いた。
ドウッ、と倒れた体に、一陣の風が枯れ葉を這わせる。
「……貴様らとは、くぐり抜けてきた場数が違う」
幾度となく修羅の道を踏み越えてきたのだ。初めて銃を握った輩に止められるはずもない。
空になっていたマシンガンを捨て、脇のハンドガンを引き抜く。
これで残りは三人。いや、お姉様は結局フィールドから離脱していったから、あとは和智田陽平と立花太史か。
──? ちょっと待て。謎の男はクラスメイトじゃない。数に含めなければ、やはりあと三人だ。あともう一人……もう一人……誰かが──。
──カチャリ。
「!!」
顎の下で、聞き馴染みのある音が聞こえた。
そして、思い出す。最悪の事態はうまくいっている時に起こるものだと。
見開いた目から熱が、水分が奪われ、瞳は乾燥していく。
かすむ視界でとらえたのは、小生の顎に冷えきった拳銃を突きつける、お団子頭。
──少女は、笑っていた。
「き、貴様っ……!」
少女の手に握られている見覚えのあるハンドガンと、軽くなった太もものホルスター。
一体、いつの間に……!!
「なぜ、気配が……!? どうやって近づいた……!!」
少女は何も答えない。漂う殺気をペットのように従え、ただただ笑っている。
「──やめろ! 愛!」
木の裏から出てきた立花太史は、焦りと怒りをないまぜに叫んだ。
「家にいろと言っただろ! どうして来たんだ!」
その声を聞き、少女から笑顔が失われていく。
「早くこっちへ来い! お前がやる必要はないんだ!」
小生を見つめる瞳が悲しげに揺れ、振りきるように顔を逸らした。震え出した指先に力が込められる。
「待てっ、愛――」
バンッ!!
銃声が一つした。目の前の少女は崩れ落ちる。
火を噴いたのは、小生でも立花太史でもない。もう一人の少女だった。
「あ、天川っ……!?」
自ら審判であると進言し、このサバイバルを真に支配していた、天川ねね。その手に握られた銃は、まだ下げられていない。
「ウチは、こういうやり方しかできない……」
そして、続く銃声。
彼女もまた、自らの手で地に堕ちた。
「……どうして、そんなことっ……!」
残った男は茫然と立ち尽くした。生気すら失われ、二人の少女の亡骸をぼんやりと見つめる。
情を同じくしても、その隙を逃しはしない。躊躇わず、引き金を引いた。
はじめから避ける気がなかったのか、顔を上げる挙動もないまま肩に一撃を受け、立花太史も雪の上に転がった。
「…………」
なんだ……この虚無感は……。邪魔者を排除して、自分の命を守りきったというのに、嬉しくともなんともない……。
戦場は墓場だと言い聞かせても、やりきれなさが重くのしかかった。
「──どうだ、今の気分は」
立ち尽くしていると、装備をすべて脱ぎ捨てた無防備な和智田が姿を現した。
「楽しいか? 満たされたか? バンバンが探していたものは見つかったか?」
ゆっくりと歩み寄ってくるその顔は、凍ったようにまっすぐで、無駄がなくて、空白だった。
「銃を持って武装して、作戦を考えて戦い合って……。確かにかっこいいだろう。銃だって刀だって、男なら惹かれる気持ちはわかる。俺だって昔はそうだったさ。……けどな、そんな気持ちは子供だからこそ許される。お前はいつまで子供なんだ」
「何を言う。大人だからこそ許され、マナーを守って興じることができるんだ」
「そうじゃない。このゲームが本来どういうものなのか、理解できる歳になってるはずだって言ってるんだ。――人に銃を向けて撃つ。そんなの、人殺しと一緒なんだよ!」
──!
「戦争のない平和な時代に生まれたから、ゲームとして遊べるんだ。ごっこ遊びとして楽しめるんだ。実際に戦争を経験した人間からしてみれば、とんだバチ当たりな遊びだろうよ」
我にもなく視線が手のひらに落ちる。
……この手で裁いてきた人間は数知れない。怒りも憎しみもない感情で、敵を撃ち砕くことに快感を覚え、優越感に浸っていた。何かを守っているわけでもないが、何かを傷つけているわけでもない。
そうだ、これは遊びなんだ。馬鹿にされたって仕方がない。どれだけ本気で向き合っても、遊びであることには変わりない。ルールさえ守っていれば、そこには責任も義務もないのだから。だからこそ、戦争を望んでいるわけでも煽っているわけでもない。
「まさかとは思うが、自分は平和主義者だとか思っているんじゃないだろうな。平和な国に生まれて、安全な環境に囲まれて、ぬるま湯な生活を送っているだけで、お前自身は真に平和のことなんか考えちゃいない。……どうしてそんなことをしているんだ。バンバンは将来的に、どんな人間になりたいんだ。どうやって生きていきたいんだ。〝なんとなく〟以外で答えられるのか」
小生にとってのサバイバルゲーム……。そんなの、〝生き甲斐〟以外になんと言えよう。楽しいことであり、かっこいいことであり、胸を張って真剣に取り組めること。こんな人間でもヒーローになれるのだと心酔させてくれるもの。
――そう。二次元で描かれるような非現実的な恐慌や異変が、いつか訪れるかもしれない。そのためにも、事前に力を蓄え、備えておくことは利口であり賢明なことだ。
「小生は……! 地球が滅びに向かった時に、一人だけ生き残るんだ! このサバイバルのように! そして、天使のような謎の少女と運命的な出会いを果たして、仲睦まじく暮らし、子孫を残して新たな人類の祖先となる! この星に生きるすべての人間の遺伝子に小生が根を張るのだ! そんな未来のために今を生きている!」
誰だって考えるはずだ、オンリーワンになった自分を。現実では叶えられそうにないからこそ、それはまぶしく熱い。
「今よりも未来のことばっか考えてる奴が、今よりも綺麗な未来を作れるわけないだろ!! このオタンコナスの中二病が!!」
グサァッ!! ――胸に刺さった。感動したんじゃない。痛いところを突かれただけだ。
「夢の中で生きるな! そのうち困難に直面して、つらい思いをするのは現実の自分なんだぞ! 自分を守るためにも、自分を成長させられる生き方をよく考えろ! そう、清く正しく美しく生きるんだ!!」
貴様は宝塚俳優か!!
そう叫ぼうとした瞬間――ドンッ――山の上方から、大砲を撃つような鈍い音が聞こえた。
ザザッ、ガサガサ、バキバキ。雪、枯葉、枝がひしめく音が続く。
和智田とともに振り返ると、茶色い塊がこちらに向かってくる様子がうかがえた。あれは――。
「イ、イノシシ!?」
驚いたのも束の間、自然と銃を構えた。出没することは聞いていた。予想の範囲内だ。
狙いを眉間に定め、三発発射。すべてヒットしたが、猪突猛進の勢いは止まらない。
「馬鹿!! 避けろ!!」
和智田は小生を突き飛ばし、代わりに肉弾の軌道上に倒れ込んだ。
駆け抜けることが生き甲斐なのか、イノシシは全身フルスロットルで突っ込んでくる。
転がってでも避けるには、あと一秒足りなかった。
「和智田っ!」
――バーンッ!!
叫び声に重なった、弾ける銃声。体の髄を震わせ、どんよりと陰る空にも響き渡った。
和智田の鼻先で悶えたイノシシは転がり、やがて動かなくなる。
「――お前さんたち! ここで何をしておる!」
緊張の糸が切れないまま動けずにいると、一人のご老人が浅瀬を渡って近づいてきた。手にはライフル銃が握られている。
「ねねっこのじいちゃん!」
和智田が声を上げると、倒れていた天川はむっくりと体を起こした。
「……昨日言ったじゃん。山で遊ぶって」
「それは聞いていたが、許可を出した覚えはないぞ。危ないから早く下山しなさい」
「はーい……」
倒れていた他の奴らも立ち上がり、ある者は仲間を呼びに、ある者はそそくさと川沿いを下っていった。
「お前さんたちは運ぶのを手伝っておくれ」
ご老人は背負っていた木のソリのようなものを地面に下ろし、イノシシを指差した。
和智田と顔を見合わせ、断ったら撃たれそうだからおとなしく従おうと目で送り、頷く。
死んだ動物を持ったのは初めてだ。……なんか、超絶重くて、臭い。
獲物が乗ったソリの紐を握り、満足そうに引きずっていくご老人。
――歌うようなその口笛が、試合終了の合図となった。
外でハリケーンブリザードが猛威を振るい始めた頃。
小生は、なぜか和智田たちと天川家のいろりを囲み、鍋をつつきながら、ご老人の説教にも似た教訓を聞かされていた。
真面目に聞いている奴は少なく、万病に効くといわれているイノシシの肉を頬張りながら、冷えた体を温める。
「喧嘩など、同じ釜の飯を食えば万事解決じゃ」
喧嘩でも釜の飯でもないがな。
「どちらかが勝ってどちらかが負けるかなど、小さい考えじゃ。どちらも勝者にすればいい。友情というのはそうやって生まれる」
「小生は友情を得るために決闘を申し込んだわけではない。クラスを乗っ取ろうとしていた和智田を制裁しようとしていただけだ」
「で、逆にやられたってか」
押山城司はウッキッキと息を漏らす。
「まだ決着はついていない!」
「いーや、あたいも隠れて見てたけど、あれは完全にあんたの負けだったね。頑固な人間ほど、現実逃避をするもんだよ」
羽場真知子の言葉に、全員の視線が集まる。
全部聞かれていたのか、我が野望もすべて……。だが、それなら、小生の気持ちがわかると名乗りを上げる者がいてもおかしくはないはずだ。
そっとお椀をわきに置き、短く濃いため息をつく。
そうすると、今までは馬鹿にされることを恐れて口に出せていなかったことが、いけよいけよと押し出されるように流れ始めた。
「……小生は、唯一無二の存在になりたかった。冒険の中でオンリーワンの力を手に入れた主人公のように、無数の手下を引き連れたナンバーワンのボスのように、てっぺんに立ちたかった。たとえ、ゲームの中だけであってもいい。小さな内輪の中だけであってもいい。小生はそれで十分だった……」
節句多難な日常の中に、自分だけの安らぎの世界を持たなければ、この世はまことに生きづらい。夢があるのも幻想があるのも三次元なんだ。逃げていることにはならない。
「誰かを命懸けで守れるような、誰かの身代わりになって死ねるような、小粋な人間になりたいと思った時期もあった。だが、現実はそう甘くない。魔法も超人的なパワーもない世界でできることなど、限られている……」
中学の頃は無駄に体を鍛えた。クライミングも遠泳もハングライダーもなんでもやりこなした。しかし、どの世界にもすでに一番はいる。やる気や興味のない者の中にも、小生より才能を秘めた奴はいくらでもいる。やろうと思えばできるんだ。
それなら、この世界における小生の必要性はどこにある? 探したって見つかるはずもない。
なぜなら、自分はこの世界のヒーローでも主人公でもないのだから。誰からも必要とされる神のような力はないのだから。
そう気づいた時の感情を思い出し、膝の上のこぶしは無意識に握られていった。
「……ねぇ。この子、抱っこしてみる?」
すると、すぐ隣にいたお姉様が体ごとこちらに向き直った。
アクションを起こすよりも早く、赤ん坊があぐらの中にセットされた。
な、なんだ、この生き物は……。ちんちくりんだ……。首はすわっているようだが、支えていないとぐにゃぐにゃとバランスを崩す……。でも、温かいな……。
「平和なこの国にだって、つらいことや苦しいことが起こらないわけじゃないわ。何か大変なことが起こった時に、子供たちや困っている人たちを助けてくれる存在は必要なの。……あなたでも、その小さな命を守ることはできるのよ」
「!」
小生でも……守れる……。
「これから世界に羽ばたいていく子供たちが、安心して夢いっぱいな未来を描けるように見守ってあげてほしいわ。かっこいい姿で生きて、かっこいい背中を見せてあげて。……それじゃあダメなの?」
覗き込む澄んだ顔に、すぐには頷けなかった。目すらまともに合わせられない。
それを見かねてか、和智田は「ノン、ノン!」と突然の教師面で指を振り、立ち上がった。
「山あり谷ありの冒険を乗り越える人間になるためには、努力が必要だ。途中で無理だと決めつけて、挫折して、ゲームの中に逃げ込むにはまだ早いぜ。お前は限界を超えていない。行き先を誤るな。――お前はその手に、悔しさ以外のものを握れるはずだぞ!」
なっ……! なん、だと……!?
小生は、見えない敵に負けを認めて、心半ばに折れていたというのか……!? この世界で生き延びられる可能性はまだあるというのか……!?
小生よりも立派な大人はいくらでもいるのだぞ! 小生の背中を見て育ったところで大した大人にはなれないのだぞ! それでもいいのか、和智田っ!!
「四の五の言わず、自分に課金しなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
あω☆@△べ※■し∀◎ッ――!!
なるほどそれなぁぁぁぁぁーー!!
守れる力がまだ備わっていないのなら、付与すればいい!! 課金に限界はない!!
課金!? 課筋!? 課勤!? かきんカキンKA☆KI☆N!!
やる気さえあれば無償で無性に心から湧き出てくる!! 無制限の無限ループだ!!
この手に勇気を!! この手に正義を──!!
「――決めた! 小生は、自衛官になる!!」
「はっ!?」
騒然と驚き顔が花開く。情けないほど恍惚とした表情でぽっかりと口を開けた面々に、満悦の笑みを返し、立ち上がりざま小さき命を天に掲げた。
「この子を守る! この子の未来を守る! この子は小生の子だぁぁぁぁぁ!!」
この国の子供はみんな小生の子だ!! 小生が守るんだ!!
「ちょっと! 変な言い方するから、あかりちゃんが泣いちゃったじゃない!」
「こんな奴に守られたくないと言っているぞ」
赤ん坊の言葉がわかるのか、立花太史は嘲るように鼻を鳴らした。
「あ~ら、いいじゃない! 自衛隊なんて男の色気がムンムンに集まる宝庫よ! 羨ましい~♪」
「すっごい夢だよ! 俺っちは彼女一人を守るだけで精一杯!」
「先の短いジジイのことも守っておくれ」
もちろん、人生の先輩方も宝だ。代わりに女性の口説き方でもご教授願おう。
「……本当にやる気?」
焚きつけたはずのお姉様が、一番疑り深い顔をしているような気がするのは気のせいか?
赤ん坊を返し、座り直して腕を組む。
「小生に二言はない。己の魂に火がついた時こそ、不可能が燃え尽きる時だ!」
訓練がつらそうだからとか、大変そうだからとか、甘えた考えを持つ人間に銃を握る資格はなかったのかもしれない。この手にかかる重みを理解して、現実を見て、今の自分を見るんだ。
「いいことだ。出発の原点は他人のためであったほうがいい。自分本位だと辞めやすくなるからな。そして、人間の真の価値は、何を目指しているかによって決まる。──見直したぜ!」
和智田は親指を立てて、二カッと笑った。
「未来の英雄、誕生だ!! ハッピーバースデー、バンバン!!」
幻想は捨てる。いや、たまに見るくらいは許してくれ。
「はぁ……。やっぱり、和智田だけで十分だったわね。無駄に怪我をしたわ」
「そんなこと言うなよ。オレが撫でてやろうか?」
「ブツわよ!」
額を押さえた笹垣恵実梨に、いかがわしい手つきを見せる押山城司。……もともとは紳士の競技だ。規制を解除しなければ怪我をさせたりなどしなかった。和智田を恨め。
「愛、いい加減機嫌を直せ。何をそんなに怒っているんだ。天川に撃たれたからか?」
「んぅ……」
さきほどからずっと、玉崎愛に睨まれている。……おかしいな、そこまで敵視されるほど貴様に何かをした覚えはないが……。
「そういえば、あの謎の男はどこへ行ったんだい? また消えちまったのか」
「えっ!? 謎の男さんがまた来てくれたの!? 俺っちも会いたかったな~!」
なんだ、誰も奴のことを知らないのか。妖精か? SSS級のレアキャラか?
次に会ったら捕まえてやろうと考えるなか、急に「あばばばば~!」と大きな声で赤ん坊をあやし始めた矢井馬博美を、お姉様は含み笑いで見つめていた。
「助っ人がいても勝てないんだもんな~。やっぱりバンバンは強いぜ!」
褒めるなよ、いい気になって成長が止まってしまうだろ。
『──さすがバンドー君。リアルでも強いんだね~』
和智田を筆頭に皆々から飛び交う称賛の声に浸っていると、押山城司の隣でシシ汁をすすっていた丸刈り太っちょが「へへ」と頬をほころばせた。
「な、なんだオメェ!? いつからいた!?」
「えぇ? ずっといたよ~。美味しい匂いにつられて来てみたら、みんなが真剣な話をしてたから、おとなしくモグモグしてたんだ~」
中学時代にネットゲームで出会った、ゴンザレス氏。通称ゴン。ゲーム内ではマッチョで強そうなアバターだったからこの島の宝探しでも活躍してくれるだろうと思って誘ったのに、実物はこんなんだから最近はあまり絡んでいなかった。ちょっと歩いただけで「お腹減って動けない」とか言うし。
本名は確か……大石三満、だったか。
「ごちそうさまでした~」
ソーセージのようにふっくらとした指が合掌する。鍋は空になっていた。
「ゴン、今週末は本土に帰ると言っていなかったか?」
「めんどくさくなったからやめたんだよ~。船の中は飲食禁止って言われたし~。久しぶりに美味しい国産牛が食べたかったんだけどな~」
どこまでもデブ街道まっしぐらだな、貴様は。
「この島って、ステーキとかハンバーグとか全然食べられないよね~。肉じゃがとか親子丼はあるけど、野菜多めだし、鶏肉とか安っぽいお肉使ってるし~」
「文句があるなら帰れデブ……」
「肉がないなら魚を食べればいいだろうが」
島出身組から避難の声を浴びても、「えへへ~」とたるんだ笑みは消えない。
「──大石三満! お前は確か、ニクの日がバースデーだったな! なら、俺様が素晴らしいごちそうを用意してやろう!」
「えっ! ホント!?」
ニクの日……。ああ、二月九日か。
「任せろ! 真心が込もった最高のプレゼントにしてやるぜ! 期待しておくがいい!」
「わ~い!」
和智田は料理が得意なのか。意外だな。
「ということで、和智田ファミリーの諸君には、明日からお料理教室に参加してもらう。俺と一緒に、オマール海老とムースリーヌのコンソメゼリー添えを作れるようになろうぜ!」
プロ!? プロ志向なのか!?
和智田がさわやかに両手を広げると、立ち上がった他の者たちはそそくさと玄関で靴を履き始め、雪風がやんだ白銀の世界へ飛び込んでいった。
「……おい、全員消えたぞ」
「俺は人の心を動かすのが得意なんだ」
意味が違う!
「あいつらなりの照れ隠しなんだよ。ああ見えて、心の中ではディスコ開催中だ。待ち遠しくてウキウキよぉ! ――バンバンもよろしくな! 待ってるぞ!」
そう言い残し、和智田は飛行機のように腕を伸ばして駆けていった。
残念ながら、小生は料理をはじめとする家事全般が苦手だ。力にはなれない。
……いや、何かしら方法はあるか?
食材を集めるくらいならできそうだな。
調理器具を研ぐことも、銃の手入れと似ていて天職かもしれない。
ふむ、だったら皮むきもできそうだ。
――気がつけば、この手はどんな形で役に立てるのか、どうすれば力を最大限にまで引き出すことができるのかと、真剣に考え込む自分がいた。




