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22 ダンジョンのボス

 また地道な攻略を続け、数日が過ぎる。雅雄たちは第十九階層まで降りることに成功した。


「多分、この階が最後ですね。パズルが再利用になってますから」


 青木はメガネをクイッと上げながら、推測を述べる。この階層の扉や宝箱には、今までの階層で見たパズルが複数個くっついていた。ジグソーパズルから立体パズル、数式パズルなど様々な形式のものを解いてきたが、鍵が複数というのはかなり面倒くさい。思わず雅雄もツボミも、げんなりした表情を浮かべる。赤松は笑って言った。


「おまえら、そんな顔すんなよ。もうちょっとなんだから。それにツボミ、おまえはもう少しでLv.20だろ? 多分、この階の敵と戦えばいけるぜ」


「そうかもね……」


 特に嬉しくもなさそうにツボミは応じた。最近、ちょっと元気がないけれど今日はことさらに沈んでいる。昨日の晩ご飯のときには雅雄の話で笑ってくれていたのに。雅雄は声を掛けようと思うが、今は一応ダンジョン攻略中だ。後衛のパズル解きという仕事を放棄して前には行けない。


 浮かれ気味の赤松を見て、青木はキリリとした顔で注意を喚起する。


「この階はボス的な存在が出現するかもしれませんね。油断せずに行きましょう!」




 ここ数週間ずっと取り組んでいたので、パズルを解くのにもみんな大分慣れてきていた。今までと同じものが複数あっても恐れることは何一つない。ただ、向かう先が広間になっているときは注意する。モンスターの群れがポップする可能性が高いからだ。


 慎重に広間を避けて、パズルがなんと四つ取り付けられている大きな扉の前に到達する。きっと、この扉を開ければ最下層への階段が現れるのだろう。いつものように赤松、緑沢とツボミが警戒に回り、雅雄と青木、桃井でパズルを解いていく。


 モンスターに襲われることがなかったので解錠作業はスムーズに進展した。ほどなくして木製の扉はぎしぎしと音を立てながら開く。中はコロシアムのような円形の広いスペースになっていた。出現した相手を見て、雅雄は緊張で身を固くする。


「こいつがラスボスってわけか……!」


 赤松も険しい表情を浮かべる。ポップしたのは『キングゴーレム Lv.50』。五メートルほどの巨人が雅雄たちの前に立ちはだかる。ボスモンスターとしては弱い部類かもしれないが、雅雄たちには充分に強敵だ。コロシアムのごときボス部屋に足を踏み入れた瞬間、襲ってくるのだろう。


「これはパズルから解いてみるべきですね……!」


 青木がいつになく真面目な顔をしてメガネをクイッと上げる。円形のフィールドの縁には、等間隔でパズルが設置されていた。解けば敵が弱体化するのかもしれない。しかし赤松は首を振った。


「いや、最初から全力で攻めるぞ。ツボミ、雅雄、オーバーライドを使ってくれ」


「え? 絶対に最後まで保たないよ……?」


 赤松からの指示に、雅雄は困惑するしかなかった。オーバーライドは長時間使えないということを、当然赤松も知っている。いったい何を考えているのだ。


「大丈夫だ。俺には秘策がある!」


 赤松は自信満々に言った。信じていいのだろうか? 雅雄はツボミの方をチラリと見てみる。


「……秘策なんか使わせなければいいだけだよ。きっとボクらだけで倒せる!」


 赤松には言及せず、ツボミは力強く言った。確かに、いかにも防御力が高くて物理耐性がありそうな相手だが所詮はLv.50でしかない。雅雄とツボミがオーバーライドのスペシャルバーストで一つになった上でスペシャルラッシュを撃ち込めば、赤松たちの手を借りることなく倒しきれるのではないか。


「いや、我々何の相談も受けてないんですが……」


 青木は困った顔をして首を捻っていたが、転がり出した石は止まらない。坂道が続く限り加速するだけだ。雅雄もやる気になってきていた。


「その意気だ! ツボミ、おまえはこいつとの戦いでLv.20になれる!」


「……ッ!」


 赤松が親指をグッと立てる。全く想像の埒外だったのだろう、ツボミは少しうろたえたような仕草を見せた。


「……ツボミ?」


 雅雄が声を掛けると、ツボミはいつものようにキリッとした顔に戻る。そして、ボス部屋に飛び込んだ。


「行こう、雅雄!」


「うん、ツボミ!」


 それぞれの剣を呼び出し、交差させる。大丈夫、ツボミとならやれるはずだ。雅雄は不安を押し殺し、ツボミとともに叫ぶ。




「今、青薔薇の奇跡はこの手の中に!」「そして、黒薔薇の永遠は二人を包む!」


「「奇跡の願いは永遠となり、運命を切り開く! 目覚めよ、薔薇の剣士!」」




 青と黒のオーラとともに、二人は一つとなる。『薔薇の剣士 Lv.40 デューク』。レベルの差は二刀の刃とそのスキルで埋める。薔薇の剣士はキングゴーレムに斬りかかった。


 キングゴーレムはその巨大な手で石畳の床を削り取り、薔薇の剣士に投げつける。薔薇の剣士は回避に徹し、避けきれなければ両手の剣で撃ち落とす。薔薇の剣士はHPも防御力も低い。一発でも受ければ致命傷になる。


 だから、先に一発入れた方の勝ちだ。薔薇の剣士のスペシャルラッシュが決まれば永久パターンではめ殺せるし、逆にキングゴーレムの一撃をまともに喰らえば薔薇の剣士は即死してしまうだろう。


 遅ればせながら赤松たちもボス部屋に入り、薔薇の剣士の支援に動く。赤松と緑沢は囮のつもりだろう、左右から大きく回り込んでキングゴーレムに近づくが、無視されていた。青木は支援魔法を薔薇の剣士に飛ばし、桃井はタイミングを見計らいつつ炎の魔法を放つ。魔法への耐性はあまりないようで、じわじわとキングゴーレムのHPが削れていく。


 あまり時間もない。スペシャルバーストを維持できるのは短期間だけだ。薔薇の剣士は慎重に、しかし着実にキングゴーレムに接近する。決着は近い。その場にいる誰もが確信した。

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