23 引っかかり
左右から近づく赤松と緑沢は全く無視されていたが、足下まで来られるとさすがに放置できない。赤松と緑沢はおそるおそるキングゴーレムの足に斬りつけ、キングゴーレムは大振りな蹴りを繰り出して追い散らそうとする。キングゴーレムに隙ができた。さらに桃井が『リトル・フレイム』をキングゴーレムの顔面に放ち、気を逸らす。
これでいける。赤松たちの支援を受け、一気に薔薇の剣士は『キングゴーレム Lv.50』との距離を詰めた。
「「決めてやる! [黒薔薇葬送録 永遠]!」」
青と黒の無敵オーラを噴出しながら、薔薇の剣士は突進する。『フェザースラッシュ』から始まる連続剣技がキングゴーレムに炸裂する。しかし、対プレイヤーに使用したときとは勝手が違った。キングゴーレムは初級のモーションスキルがヒットした程度では後退してくれない。
必然、薔薇の剣士はキングゴーレムの周囲をピョンピョンと跳ね回りながらモーションスキルを撃ち込むという形になった。無敵オーラは放出されたままなので、キングゴーレムの反撃は受け付けないが、どうにも撃ち込みづらい。
スペシャルラッシュ使用時の青と黒のオーラもどこまで無敵なのかは未知数だ。キングゴーレムの攻撃を正面から受けると破られそうな気もする。そして、そんなイメージを抱いてしまう時点で破られるのは確定のようなものである。
しばらくは殴り続けたが、キングゴーレムのHPはじわじわとしか減らない。キングゴーレムはダウンどころかのけぞることさえなく、元気に手足をぶん回し続ける。これはだめだ。スペシャルラッシュを続けられない。敵の反撃を封じる永久パターンになっていないのだ。
キングゴーレムの豪腕を回避した後、薔薇の剣士は剣技を打ち切り、いったん引く。削れたのはHP1/4~1/5といったところか。HPも防御力も高すぎる。物理耐性もあるのだろう。このペースでは倒しきれない。初級モーションスキルをつなげたスペシャルラッシュでは勝てない。
「「……だったら! 『チャージスラスト』!」」
薔薇の剣士は、ツボミがダンジョン探索中にスキルカードを入手して覚えた中級技を出す。わずかだがキングゴーレムはたじろぎ、その後即座に反撃してくる。薔薇の剣士はオーバーライドで硬直をキャンセルし、さらにモーションスキルを繰り出す。
「「『捨て身スラッシュ』!」」
大きく前に踏み込んで斬りつけ、大ダメージを狙う技だ。これは雅雄の新技で、使用機会がなかった。ダメージ量が多い代わりに大振りで硬直が長いが、オーバーライドでキャンセルできれば問題ない。
キングゴーレムは拳を握って乱暴に薔薇の剣士目がけて叩きつける。〈ブラック・プリンス〉の時間加速スキルを発動して避け、大きな拳は虚しく空を切る。薔薇の剣士はさらにカウンター気味に攻撃を合わせた。
「「『スラッシュ』!」」
『フェザースラッシュ』よりやや発動が遅く、攻撃力が高い通常の斬撃。しかしそれだけに使いやすく、今回は相手が無防備になった瞬間にねじ込んだ。狙ったのは胴ではなく、拳そのものである。クリティカルヒットで薬指と小指が落ちた。少しずつであるが、キングゴーレムは追い込まれ始める。
その後も大技と硬直キャンセル、時間加速を繰り返して薔薇の剣士はキングゴーレムを攻める。本当は雅雄とツボミが新たに覚えたモーションスキルを組み合わせて新型スペシャルラッシュを作り出せればいいのだけど、いかんせん雅雄が覚えたスキルに未使用が多すぎて難しかった。今回でその使用感も体に刻み込む。
中級技の威力は絶大で、キングゴーレムのHPをあと1/3というところまで削る。まだ余力は残っている。攻めるのみだ。
この調子でいけば勝てると確信したのだろう、赤松は戦闘中なのに笑顔を見せ、嬉しそうに声を掛けてくる。
「いけるぞ、ツボミ! 勝ったらLv.20だ! すぐLv.40になって、おまえは一人で〈ブラック・プリンス〉を使えるんだ!」
「え……?」
雅雄の中では、もう少しいけるという感触があった。しかしそれは勘違いだったのか? 限界だったのか? 気付けば雅雄とツボミは分離し、キングゴーレムの真ん前に放り出されていた。
雅雄は思わず信じられないという表情で横を見る。呆けたような顔をして、ツボミが立ち尽くしていた。
「に、逃げないと!」
「うん……」
雅雄の言葉でツボミは動き出す。雅雄もツボミも、HP赤ゲージで息も絶え絶えという状態だ。中級技のスペシャルラッシュがあれば、倒し切れていたかもしれない。即座に青木は回復魔法を使い、雅雄とツボミのHPは満タンとなるが、精神的な消耗は大きい。二人はよたよたとキングゴーレムから離れる。
後は赤松の秘策とやらに期待するしかない。雅雄、ツボミと入れ替わりで真正面からキングゴーレムと打ち合う赤松は叫んだ。
「おい、雅雄! おまえの〈ブルー・ヘヴン〉を貸せ!」




