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11 係を決めるときは大抵ろくなことがない

「君たちはオーバーライド使えないの?」


 ダンジョンを歩きながら、ツボミは赤松たちに尋ねる。桃井が答えた。


「使えるのは私だけよ。……っていっても大したことないけど」


 桃井は少し顔を背ける。赤松が茶化すように言った。


「火の魔法が爆発になるだけだもんな」


「しかもコントロール不能……。洞窟の中では危険なので、このダンジョンでは役立たず……。勘弁してほしいですね」


 青木は嘆息し、桃井は顔を真っ赤にする。


「うるさいわね! それだけ威力が強いんだから、いいじゃない! 吹っ飛ばすわよ!?」


 桃井は杖を青木に向ける。桃井の大声で、雅雄はビクッと肩を震わせた。青木も慌てる。拳銃を向けられたようなものだ。気軽にやっていい行為ではない。


「ちょっと桃井さん、洒落になってないですよ!?」


「あんたが悪いんでしょーが! あんたが!」


 桃井は頭のねじが飛んでいるようだ。端から見ていた雅雄は顔を引きつらせる。桃井は喚き続けるが、赤松が苦笑いを浮かべながら止めに入る。


「桃井、その辺にしとけ。おまえの魔法がすんげーのは事実だが、コントロールできねーのも事実だろ。一長一短あるのは当然なんだから、胸を張りゃあいいんだよ」


「……フン、見てなさいよ! いつか使いこなして見せるからね!」


 ビシッと桃井は青木の鼻先に人差し指を突きつける。青木は若干気圧されながらもメガネをクイッと上げ、言った。


「そ、そうなってもらわなくては困りますね。洞窟の中以外では、あなたの魔法こそが我々の最強の切り札なのですから」


「ま、俺としてはそんなよくわからない力に頼るより、地道にレベルを上げるべきだと思うけどな。心の力で強くなるとか、意味わかんねーよ。理不尽すぎて今時マンガでもありえねーわ」


 赤松の言葉を聞いて、雅雄の心臓の動悸が跳ね上がる。まるで自分を非難されているように感じたのだ。


「皆の者、そこまでである。敵が来た」


 緑沢が大仰な仕草で剣を抜く。『レッドゴブリン Lv.32』が四体。雅雄とツボミも剣に手を掛けるが、赤松は手で制する。


「おまえらは無理すんな。俺たちに任せろ。あの程度なら俺たちで余裕だ」


 まあ、順当な指示である。ここで消耗して、いざというときに雅雄とツボミが戦えないなら意味がない。


 しかしツボミは完全に赤松を無視して、前に飛び出した。


「見くびらないでほしいね! こんな程度の相手なら、ボクらだって遅れをとることはないさ!」


 ツボミは右手で剣を抜きつつ、左手で金の装飾が施された短筒をぶっ放す。利き手でない方で発砲したが、これだけ接近していれば当たる。黒色火薬の爆音でレッドゴブリンたちは一瞬ひるみ、弾丸が命中した一体にツボミは斬りかかる。


 このパーティーに混じっても、ツボミのスピードは抜けていた。長船君と山口さんに作ってもらった〈ドラゴンスケイルメイル〉は金属と布を組み合わせているので頑丈な割に軽量だし、【はじまりの村】付近のクエストで手に入れた〈翼のリング〉の効果が大きい。すばやさ+50なので、10~15くらいのレベル差は簡単に覆してしまう。また、赤松たちはすばやさが伸びる職業に就いていない。


「ほら、あんたたちも行きなさいよね! 私が援護してあげるから! 『リトル・フレイム』!」


 即座に桃井が反応して火の魔法を撃ち込んだ。赤松と緑沢は剣を振りかざして斬り込んでいく。二人とも市販の重い甲冑を着込んでいるのでツボミほどのスピードはないが、その分突進力は凄まじい。あっという間に密集陣形を組んでいたレッドゴブリンは薙ぎ倒されて分断され、一体ずつ倒される。


 雅雄も押っ取り刀で参戦しようとしたが、慌てて駆けたので足下の小石につまずいて思いっきり転け、かなわなかった。最初からやる気がなさそうに後方で控えて動かなかった青木がメガネをクイッと持ち上げながら言う。


「平間さん、無理をする必要はないのですよ。適材適所です」


 そうはいっても、雅雄が後方待機していたところで、回復役の青木と違って何もできないのだが……。




 結局、ツボミが赤松や緑沢に混じって最前線で戦う一方で、雅雄は扉や宝箱のパズルを解く係となった。ツボミと一緒に買った短筒で戦闘に参加しようともしてみたが、全く敵に当たらない。かなり敵に接近しないと命中は期待できそうにない。むしろ味方に当たりそうで怖いので、今後一切やめてくれと赤松に厳重注意された。


 かといって雅雄がツボミのように前衛として戦うのは難しい。雅雄では単純に赤松や緑沢の下位互換でしかないのだ。左手に剣、右手に盾を装備した雅雄のスタイルでは短筒の有効活用もできない。大人しく弾薬をツボミに渡して使ってもらうのがベターだろう。


「なんだかなぁ……」


 ツボミのように盾はやめて鎧を着た方がいいのだろうか。しかし運動神経の悪い雅雄は鎧を着るとうまく動けない。


「平間君、そこは違うでしょう。そのピースを左では?」


「それじゃあこっちが詰まっちゃうよ」


「本当ですね。じゃあどうすれば……」


 雅雄はパズルに向かい、青木と二人で頭を悩ませるばかりだ。この間にもツボミたちは華々しく戦っている。雅雄は本当にこのままでいいのだろうか。

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