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10 頼もしき? 仲間たち

 結果として雅雄たちが助けた形になった男は、赤松といった。モブ顔といってはなんだけど、ちょっといかついどこにでもいそうな顔の男だ。「おっさん」というあだ名がつきそうな雰囲気である。赤松は雅雄の存在に気付かずツボミをパーティーに誘ったが、ツボミはきっぱりと拒否する。


「お断りだよ。ボクのパートナーは雅雄だけさ」


「あん……? 雅雄……?」


 ツボミにまで言われて、赤松は初めて雅雄に視線を向ける。雅雄は背の高い赤松に、完全に見下ろされる格好になった。雅雄は赤松にまじまじと見られてたじろぐ。なんだこいつ、と言わんばかりに赤松は雅雄を見て微妙な表情を浮かべた。


「ほ~ん、こいつがパートナーねぇ」


 やがて値踏みは終わり、赤松はニヤニヤと笑う。雅雄は頬がカァッと熱くなるのを感じた。間違いない。赤松は勝った、と感じている。そして雅雄は無駄に敗北感を味わう。


「なるほど、二人でフュージョンするオーバーライドを使えるのですね。非常に珍しい……! パーティー入りは無理ですが、よろしければ我々と手を組みませんか? お互いにとっていい結果になると思いますよ?」


 またもモンクのチビ男はメガネをクイッと上げた。



「やっぱり断った方がよかったかな~、協力するなんて。どうもうさんくさいんだよね、彼ら」


 ログアウトしていつものように雅雄の家でゴロゴロしながら、ツボミはつぶやく。どうやら雅雄が思っている以上に気乗りしていない様子だ。


 洗濯物を畳みながら雅雄は苦笑する。台所はツボミが入れてくれないので、料理以外は雅雄の仕事だった。遅くなったら風呂に入ってから帰るので、ツボミは結構服を雅雄の家に置いている。


「いや、あの人たちと手を組むのは理にかなってるよ。僕らだけであのダンジョンを攻略するのは厳しいと思う」


 ツボミが嫌がったにもかかわらず、赤松たちの申し出を受けたのは雅雄だった。人数が多いというのは戦闘はもちろん、パズルを解くのにも力になる。複数人でモンスターを警戒して、複数人でパズルを解いた方が早いに決まっているのだ。


 それに、雅雄とツボミが協力を断ってもあの人たちはダンジョン攻略をやめない。雅雄たちと競争のようになってしまったら、彼らは実力で雅雄とツボミを排除しようと動く可能性さえある。協力さえ約束すれば、PKされるという最悪の事態は回避できる。


(うん、僕は間違ってない。そのはずだ)


 本音を言えば、よく知らない人たちと手を組むなんてまっぴらごめんだった。赤松は完璧に雅雄を下に見ていたし、ツボミにべたべた触っていたのも不快である。


 でも、理屈の上では共闘を断る意味なんてない。それどころか彼らを拒絶すれば、気分を害した赤松たちの攻撃対象になってしまう心配が出てくる。だから、雅雄の判断は正しい。そのはずだ。


(お兄様、本当にそれでいいの? あの男の顔、思い出した方がいいんじゃない? ウフフフフ……)


 ふいに頭の中で声が響いた気がした。雅雄は首を振って打ち消す。惑わされてはいけない。突然首を振り始めた雅雄を見て、ツボミは首を傾げる。


「? どうしたの?」


「なんでもない……。なんでもないんだよ」


 雅雄はぎこちなく笑うが、雅雄を見てツボミが固まる。


「ま、雅雄! それ!」


「え……? うわぁっ!」


 雅雄が手にしていたのはかわいらしいクマさんのイラストがプリントされたショーツだった。慌てて雅雄はショーツを洗濯物の山の中に突っ込んでなかったことにする。


「ご、ごめん! 下着は自分でやるんだったよね!」


「雅雄なら別にいいんだけどね……じゃなかった、次から気をつけてよね!」


 雅雄は目を白黒させながら顔を真っ赤にするツボミに謝った。



 長身でちょっといかつい顔をしている『赤松康平 Lv.34 ソードマン』。雅雄より身長が低いチビで、常にメガネを触っている『青木裕次 Lv.30 モンク』。ひょろガリでおかしなしゃべり方をする『緑沢大地 Lv.29 ナイト』。ちょっとかわいいけれど、すぐにヒステリーを起こすので正直怖い『桃井はるか Lv.26 メイジ』。


 これが雅雄とツボミが協力するパーティーの全員だった。率直に言って、レベルは低い。前線近くのプレイヤーたちはほとんどLv.40を超えて上級職になっているのに、全員が基本職のままである。まあ低レベルといっても『平間雅雄 Lv.1 無職』と『香我美ツボミ Lv.8 無職』に比べれば軽自動車と戦車くらいに差はあるのだけれども。


 自分たちが弱いことは赤松たち自身も自覚していて、だからこそパズルだらけで高レベルパーティーが寄りつかない知恵の洞窟にアタックしている。そして、いったん口約束で協力を取り付けた雅雄たちと、詳細な条件を詰めようとする。普通のパーティーなら雅雄たちは弱すぎて交渉の対象にさえならないだろうに。


「……NPCからの情報だ。知恵の洞窟の一番奥には、五体合体のゴーレムが眠っているんだそうだ。時間制限ありだが、プレイヤーが乗り込んで戦える。要は合体ロボだな。俺たちはそれを手に入れたい」


 そんな戦隊ロボ的な大型武装が隠されているとは。赤松からの説明を聞いて、雅雄は確信した。やはりこの洞窟は【マキナシティ】周辺フィールドにおいて弱者救済のため設置されたものだ。利用しない手はない。


「ダンジョンの奥には我々がとても敵わないモンスターが潜んでいる可能性があります……。その場合、あなたたちのスペシャルバーストは切り札になる。我々はゴーレムだけ確保できれば、他はいりません。他のレアアイテムは譲りますので、協力していただきたい」


 青木はやはりメガネをクイッと上げながら条件提示する。破格の条件だ。ゴーレムのような大型武装が眠っているなら、移動用の乗り物くらいはありそうな気がする。なかったとしても、入手したレアアイテムを売り払って何かしらの乗り物を購入すればいい。


「ま、俺はオーバーライドなんか信用できないと思ってるから、反対したんだけどな。こいつら全員が一緒にやりたいって言うんだ。受けてくれるよな?」


 拒否を許さない雰囲気で、赤松は迫る。緑沢や桃井はうなずいた。


「うむ。我が輩は貴殿らの力が絶対に必要だと考えている。貴殿らなら我らの特記戦力となるだろう」


「アタシも。こんな誰もいないところでつぶし合うより、協力しましょう」


 話し合った結果、赤松のパーティーメンバーも雅雄たちと同じ結論に達していたのだった。赤松の迫力に押されつつも、雅雄はうなずいた。


「う、うん。よろしくお願いします」

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