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2 助っ人と馬車

「助太刀するでござるよ~! ニンニン!」


 馬車からどう見ても小学生にしか見えない忍び装束の少女が飛び出し、とつげきバッファローやファングパンサーにくないを投げつける。現在トップを走るメガミパーティーの一員、ユメ子だ。ユメ子のたった一回の通常攻撃で次々とモンスターたちは倒れていく。


 かつてない危機にとつげきバッファローたちが大きな雄叫びを上げた。草原から次々ととつげきバッファローが駆けてくる。


 しかしトッププレイヤー集団がこれくらいで動じるはずがない。のんびりとした声を上げながら、メガミも馬車から出てくる。


「雅雄君、大丈夫~!? 今助けるからね!」


「放っておけばいいのに……。やれやれ、仕方ないですね……」


「冷司! ブツブツ言ってる暇があったら、さっさと片付けなさい!」


 冷司も肩をすくめつつ外に出てくる。火綱は馬車の御者席から動かないまま冷司に喝を入れる。三人で充分ということだろう。


「はいはい姉さん、わかってますって。『ハイ・ブリザード』!」


「こんなやつら、私たちなら一瞬で倒せるよ! 『ハイ・サンダー』!」


 冷司とメガミが放った吹雪と雷が荒れ狂い、モンスターの群れを一掃してしまう。そして残ったわずかなモンスターは、ユメ子の餌食となった。


「忍法『影分身』でござる!」


 十人ほどに分裂したユメ子は残ったモンスターに飛びかかり、一撃で倒していく。ものの数分で戦闘は終わった。




「別にボクらだけでも勝てたのに……」


 ツボミは不満げだ。まあ、オーバーライドを使えば勝ってはいたと思う。その代償として次々に敵が出現し、大して経験値も稼げないのに今日はもう戦えないというくらいに消耗しただろうが。ツボミはちょっと拗ねていたので、苦笑しながら雅雄は素直にお礼を言った。


「ありがとう。メガミたちのおかげで助かったよ」


「弱き者を助けるのは忍びの役目でござる! ニンニン!」


「ありがとうね。ハハハ……」


 雅雄を見上げながらユメ子は満面のドヤ顔を披露する。子どもに馬鹿にされたと怒る気にもなれない。実際、メガミたちと戦えば雅雄とツボミはスペシャルバースト状態でも勝てないだろう。雅雄は乾いた笑いを漏らすだけだ。ツボミはフンと鼻を鳴らしながら、尋ねた。


「ところで君たちは、どうしてこんなところにいるの? オークの砦はこの先だろう?」


 ツボミが投げかけた疑問に、メガミは簡潔に答えた。


「オークの砦ならもう落としちゃったよ。オーク・ナイトは結構強かったけど、他のパーティーも来てたから何とかなっちゃった」


「そ、そうなの!?」


 雅雄は顔を引きつらせる。前線に到着する前に戦争は終わってしまった。砦に籠もるオークと十数パーティーが入り乱れて激突する壮絶な戦いだったが、メガミたちがユメ子の先導で砦に忍び込んで指揮官オークを討ち取り、決着をつけたということである。忍者ってすごいなあ(棒読み)。


「これで東へのルートが解放されたから、そっちに向かうつもり。雅雄君たちも一緒に来る?」


「誰が君らとなんか……!」


 ツボミは断りかけるが、雅雄は身を乗り出して主張した。


「ぜひお願いします! 僕らも次のステージに行きたいんだ!」




 そうして雅雄とツボミはメガミたちの馬車に乗せてもらい、一緒に新たな町に連れて行ってもらった。ツボミはちょっと不機嫌になったが、雅雄の決断が正しいので何も言わない。


 火綱や冷司は多少嫌な顔をしたが、反対まではしなかった。「まぁ、同じ学校だし、前にパーティーを組んだ縁もあるし……」とのことである。ピヨちゃんは「メガミ様のご慈悲に感謝するのですぞ!」とメガミの肩で飛び跳ねていた。


 馬車の中で雅雄はここぞとばかりにメガミに話しかけ、情報収集に走る。


「……馬車に乗ってたら街道でもモンスターに襲われないの?」


「結界が張られてるから、モンスター遭遇率はかなり減るよ~!」


「なるほど……! どこで入手したの?」


「普通に町で売ってたのを買っただけだよ~! ものすご~く高かったけど!」


「でも、街道の移動で時間が掛かっちゃうのを考えると、高い買い物ではなかったわね。このゲーム、早い者勝ちの早解きゲームみたいなものだし」


 雅雄とツボミごときに情報を与えても全く問題ないと考えているのだろう、御者席に行った冷司と入れ替わりで馬車に引っ込んだ火綱も会話に参加してくる。


「ふうん。じゃあ、ボクらも買った方がいいのかな?」


 しばらく経って少し機嫌を直したツボミも訊く。メガミは普通に答えた。


「う~ん、どうだろう? まだしばらく雅雄君と二人だけで行く気なんだよね? 馬車に乗ってても、モンスターに遭遇することはあるから、そのとき馬車が空っぽになるのは不安かな?」


 メガミによると、馬車にもHPが設定されていて、モンスターの攻撃で破壊される可能性があるということである。もちろん破壊された馬車は元には戻らない。雅雄とツボミがたった二人で馬車を守りながら戦うのは厳しいだろう。馬鹿高い馬車が一瞬でガラクタになってしまう。


「じゃあ馬車は厳しいなあ」


 雅雄は腕組みする。隠蔽スキルで街道を突破していくやり方は、隠蔽スキルを破れるモンスターの出現で難しくなった。何かしら移動手段を確保しなければ、ここから先では一切通用しない。


「この先にある【マキナシティ】は魔導機械の町だそうだから、雅雄君たちが使えるのも何かありそうだけどね。バイクとか」


「そっかぁ。着いたらさっそく捜さないと……! 明日は時間もあるし……!」


 明日は休日だ。持ち越している時間を消化しよう。雅雄はウキウキと声を上げるが、次のメガミの一言で凍り付く。


「えっ、明日は体育祭だよ? 体育祭の後にやるのはきつくない?」


 ゲームの楽しさですっかり忘れていたが、そういえばそうだった。雅雄が学校生活で一番敬遠したいイベントだ。リハーサルは昨日無事に終わり、今日は準備だったが部活、委員会に無所属の雅雄には何もなかった。すっかり油断していた。


「今年こそ学年優勝狙いたいんだよね~! 私は絶好調だから雅雄君、応援してね!」


「う、うん、がんばってね……」


 ニコニコと笑顔を浮かべるメガミに、雅雄は内心絶望しながら応じる。メガミは無邪気にうなずいた。


「うん、私、がんばる! 雅雄君が見てくれるなら!」


 話をしているうちに、オークの砦攻略により解放された関所を通過し、一同は着々と【マキナシティ】に近づいていく。

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