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37 襲撃者と謎の助っ人

「さぁ、終わりの時よ!」


 膠着状態が続く中、階段からとうとう静香たちが現れる。見れば人数はなんと十五人、三パーティーも連れてきていた。ギリギリLv.40に届かないくらいの通常職の中堅プレイヤーばかりだが、ラスボスと対峙しているこの状況では悪魔の集団だ。


「雅雄、よくやったわ! 後でたっぷりかわいがってあげるね!」


 静香は満面の笑みで雅雄に声を掛けるが、雅雄は素知らぬ顔で宝箱を目指し続ける。メガミは自信満々だったが、双頭竜と静香に挟み撃ちを受けた格好だ。本当に大丈夫なのか。今さらながら不安になってきた。


 しかし雅雄と違ってメガミたちは全く動揺しない。双頭竜の足下をちょこまかと動き回っていたユメ子が反転し、果敢に静香たちに挑み掛かる。


「ここは拙者に任せるでござる! 忍法・『影分身』!」


 静香たちに向かっていくユメ子が虹色のエフェクトとともに分身していき、十数人ほどになる。レベルは30まで下がっているが、それでも数なら静香たちに負けないくらいになった。低レベルの分身を作り出す技を、オーバーライドで強化したらしい。


「「「「「拙者の忍術を受けてみるでござる! ニンニン!」」」」」


 増殖したユメ子は煙幕弾やら手裏剣やらを静香たちのパーティーに投げつけて走り回り、現場は大混乱となる。十五人+ラスボスでメガミたちを袋叩きにするはずが、この展開だ。静香たちのパーティーは恐慌状態に陥り、背を向けて逃げる者さえ現れる。


「相手は所詮Lv.30だわ! 普通にやれば勝てる! 陣形を組みなさい!」


 静香はパーティーを一喝して戦士系を前に出し、自分はユメ子の群れに雨あられと呪文を撃ち込む。静香の指揮でPKパーティーは嘘のように冷静になった。態勢を立て直した静香たちは、まずユメ子を潰そうとする。


 見れば静香パーティーの前衛は槍装備ばかりだ。狭いダンジョンで長物は邪魔になりそうだが、対人戦ならこれほど効果的なものはない。前衛が槍衾を作って後衛を守り、後衛は魔法や弓矢を乱射する。ユメ子たちは迂闊に近づくことができず、魔法を回避するだけで精一杯だ。


 しかしユメ子のスピードもなかなかのもので、紙装甲だが静香たちもどうにも倒しきれない。じわじわと分身したユメ子は数を減らすが、静香はメガミたちに手を出せない。

 そうして戦場が混沌を極める中、さらなる乱入者は出現した。




「え……? なんだあれ……?」


 後ろを見た雅雄は思わずつぶやく。顔を真っ黒な仮面で隠し、黒薔薇の描かれた白いマントをひらめかせた剣士が、真っ黒な剣を振るって静香たちを追い散らしていた。


 ステータスを見ると、『??? Lv.68 ロード』と表示される。全く意味がわからない。ネーム欄が非表示なのは多分仮面の効果なのだろうけど、いったい何者だろう。メガミを助けに来たというのか。


 Lv.60台と現状最強プレイヤーであるはずのメガミより遙かに高レベル。黒い薔薇の装飾が施された剣もかなりのハイレベル装備っぽい。そして何より、剣士はオーラでも纏っているかのように、全身から虹色のエフェクトを放出し続けていた。この男、常時オーバーライドし続けているのだ。


 静香たちはやられる一方である。どういう仕組みか、仮面の剣士はわずかに残像を残しながら高速で動き回り、その影を静香たちに踏ませない。ロードのスキルに高速移動なんてないだろうし、高速移動を使っていないときもエフェクトが出ているのでオーバーライドの力でもない。いかにも強力そうな黒剣のスキルだと思われる。凄まじいチートスキルだ。


「お兄さん! やっぱり来てくれたんだね~!」


 メガミは戦いながら仮面の剣士に声を掛ける。メガミが当てにしていたのは彼らしい。


「手紙は確かに受け取ったぞ! 俺は誰かのピンチに必ず駆けつける……。昔からそういう男だった!」


 仮面の剣士は仮面のせいか、くぐもった声でメガミに応えた。二人は知り合いらしい。


「あんたがここのところPKパーティーを狩っているっていうPKキラーね。安心しなさい、あんたも私の粛正リストに入ってるから。この場でメガミたちともども血祭りに上げてやるわ……!」


 静香はこの機会に仮面の剣士も纏めて抹殺する気なのだった。先ほどは後ろをとられて隊列が崩れたが、メガミたち同様自分から袋のねずみになってくれた。槍衾と弓矢や魔法による弾幕を張れば勝てると踏んでいるのだろう。


「PKだけを狙ってるつもりはないんだけどな……! でも俺は自由をはき違えて人の足を引っ張ろうってやつが一番許せないんだ!」


 静香は剣呑な表情でパーティーに指示を出し、仮面の剣士に前衛の槍を向けさせる。仮面の剣士は真っ黒な剣を静香たちに向け、応戦の構えを見せるが、メガミがストップを掛けた。


「お兄さん! その人たちはいいから私を手伝ってよ~! そっちはユメ子が抑えるから! お兄さんがいれば、きっとこいつに勝てる!」


 メガミは仮面の剣士に手を合わせてお願いする。十数人のユメ子も一斉にうなずき、両手で印を結ぶ。


「「こちらは拙者だけで充分でござる。一人も殺さず帰してみせましょうぞ! ニンニン!」」


「……わかったよ。できれば俺だってPKはしたくないしな。君らならそう言ってくれると思っていた」


 ここまでやろうと思えばできただろうに、仮面の剣士は静香パーティーを一人も殺していない。静香からそれは甘さで突くべき弱点だ。仮面の剣士が誰一人殺さずメガミたちと合流すると読んだ上で、静香はこの作戦を決行した。


 仮面の剣士は静香たちに背を向け、堂々と不死身の双頭竜の前まで歩いていく。静香は攻撃の指示を出すが、ユメ子の大群に阻止された。ここからが本当の勝負、という雰囲気である。

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