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36 不死身の双頭竜

 七階建ての塔を、メガミたちはずんずんと昇っていく。この塔に出てくるモンスターはスライム系、ゴーレム系などおしなべて足が遅く、メガミたちは雅雄を守りながらでも特に苦戦することはなかった。


(この感じなら僕一人でも頂上まで行けたかな……)


 戦いを観戦しながら雅雄は思う。こそこそ隠れながら逃げ回れば、わりと何とかなりそうだ。一人で頂上に辿り着いたところで、ラスボスに一捻りで殺されるだけであるため無意味だが。


 三十分ほどでメガミたちは頂上まで登り切って、広い屋上に出た。奥には祭壇があり、宝箱が安置されている。


「さぁみんな、行くよ~!」


 メガミの号令で一向は祭壇に近づく。ボスである『不死身の双頭竜 Lv.67』が屋上に真ん中にポップし、立ちはだかった。


 前に見た暗黒竜より一回り大きい。いかにも頑丈そうな銀色の鱗に覆われた巨体は、威圧感満載だ。鱗一枚一枚の厚みが一メートル以上ある。この鱗には、物理攻撃は通じないだろう。二つある頭がそれぞれ別の方向を見ているのも不気味である。口元から覗く鋭い牙は雅雄の身長ほどもあって、ぎらりと真っ白に光っていた。


 恐怖心で、雅雄は思わず後退る。


「ほら、雅雄君、作戦通りに! こいつは私たちで引きつけるから!」


「う、うん!」


 メガミにうながされ、雅雄は脇から祭壇を目指す。とはいえ一気に駆け抜けることなどできず、双頭竜の様子を見ながらおそるおそるだ。雅雄は流れ弾一発でも当たれば即死なのでこうするしかない。一回なら〈身代わりのお守り〉で耐えられるが、気休めである。


 雅雄が祭壇を目指す一方、暗黒竜と戦ったときのように、メガミたちは初っ端から全力の攻撃を始める。


「『ハイ・ブリザード』!」


「『ハイ・フレイム』!」


 まず冷司と火綱が呪文を使い、左右の頭に同時に着弾する。二つの頭は同時に悲鳴を上げた。


「「ギャアアアッ!」」


 叫び声さえもハモっている。攻撃を受けながらも左の頭は炎のブレスを吐き出し、右の頭は何やら薄いもやのような塊を吐き出す。


「レベルドレインでござる! 回避しなされ!」


 後方でアナライズを行っていたユメ子が警告を発する。冷司と火綱は硬直キャンセルして左右に散らばり、ブレスを受けながらもレベルドレインは避けた。弾速は遅いが、他の攻撃と連続でくれば厄介だろう。いかに双頭竜の攻撃を封じるかが鍵となる。


「『ハイ・サンダー』!」


 その間に前へ突っ込んだメガミは呪文を放った。眩しいくらいの雷は双頭竜の鼻先に命中し、苦悶のあまり双頭竜は尻尾を振り回して暴れた。尻尾は前衛三人に命中し、HPがまた削られる。


「『ハイ・ヒール』!」


 冷司が回復の呪文を使うが、間髪入れず左の頭が炎のブレスで攻撃してくる。続いて、右の頭はまたレベルドレイン。メガミ、冷司、火綱はレベルドレインだけは避けるも炎のブレスは受けざるをえない。メガミたちの動きが止まったところで双頭竜は翼で風を巻き起こし、さらにメガミたちにダメージを与える。


「『ハイ・サンダー』!」


「『ハイ・フレイム』!」


「『ブリザード・ウォール』!」


 メガミ、火綱が攻撃し冷司は氷の壁を作る。そのままメガミと火綱はオーバーライドを使い、連続で呪文による攻撃を仕掛けていくが、全く怯むことなく双頭竜は反撃を続ける。堅い鱗は魔法さえも弾き、後ろに逸らしてしまうのだ。冷司もオーバーライドで回復、補助魔法をどんどん使って前線を支えるが、双頭竜の攻撃で溶けるように三人のHPは減っていった。


 正直、メガミたちがここまで苦戦するとは思っていなかった。というか、メガミたちでなければあっという間に全滅しているだろう。オーバーライドを使いこなしているメガミたちだからこそ、一発もレベルドレインを受けることなくここまで凌げている。


 不死身の双頭竜は特にメガミに対してしつこく攻撃を仕掛けていた。メガミは攻撃魔法のみならず補助魔法、回復魔法も駆使して不死身の双頭竜の攻撃を受け流し続けた。


 やがてユメ子はアナライズの結果を知らせる。


「物理無効、炎、氷、風、雷に耐性でござる……!」


 さすがのユメ子も声が震えていた。物理攻撃は効かず、魔法にも耐性あり。魔法で押し切るしかないが、MPが保つのか。MP不足でもオーバーライドで無理矢理魔法を使うということはできるが、連続使用は難しい。MPが切れた後の悪あがきにしかならないだろう。オーバーライドで耐性を無視するという手段も同じように連続使用できない。


「やっぱり装備だけ回収してさっさと逃げた方がよさそうだね……! 雅雄君、頼むよ! 雅雄君が宝箱に近づいたら大技使うから!」


「う、うん……!」


 メガミの声に応えつつ、雅雄はじりじりと屋上の縁を進む。メガミは雅雄が宝箱にリーチを掛ければオーバーライドで大技を出して、双頭竜を引きつけるつもりのようだ。


 メガミの言葉なら信じられる。盾代わりに使う予定だったツボミが現れるのを待つ必要はない。ならばなるべく急いで宝箱まで到達したいが、下手を打つと雅雄は即死だ。ちょっとずつ行くしかない。

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