26 強者の力
「二人が支えてくれた分、私が削る! [中級連続魔法剣技 キュクロープス]!」
メガミは剣を振りかぶり、モーションスキルを発動する。ベーシックな剣技『スラッシュ』だ。普通なら剣を振り下ろし終わったところで動けなくなるが、メガミは止まらない。虹色のエフェクトを吐き出しながら硬直時間を無視。流れるように下から斬り上げて暗黒竜の体を強引に起こし、至近距離で剣から雷撃の呪文を放つ。
どうやら虹色のエフェクトはスキル発動後の硬直時間をキャンセルする効果があるらしい。メガミは同時にモーションスキル発動時に発せられる黄金のオーラも放ち続けている。連続技の最中は、ダメージを受けないということだ。
さらにメガミは感電している暗黒竜に回転斬りを浴びせ、薙ぎ倒す。そこから暗黒竜の鼻先にサッカーボールキックを見舞って再び暗黒竜の巨体を浮かせ、充分にタメを作ってから放つ『ハードスラッシュ』でしめる。
コンボの追加ダメージか、暗黒竜の体をエフェクトと効果音が走った。雅雄が全く知らない技術だ。雅雄がわかる限りでも三つ以上のスキルを連続使用している。
(こんなにスキルをつなげられるなんて……!)
しかしそれでも暗黒竜は死なない。ゆらりと起き上がり、尻尾を振り回したりブレスを吐いたりして反撃してくる。連続技の後で動けなくなっていたメガミは格好の的だ。しばらく剣で捌くが、すぐに限界が来る。しかしメガミは引かなかった。
「耐えられるよ、これくらい!」
メガミは剣を鞘に収め、アイテムボックスから大型の戦斧を取り出す。斧を振り回しながら、メガミの全身から虹色のエフェクトが放出される。鎧も換装され、メガミは重厚なプレートアーマーに斧を装備した姿に変わった。『神林メガミ Lv.47 アックスマン』に職業も変化している。斧使いの基本職だが、マジックナイトより遙かに堅い。
メガミは斧を振り回して力負けすることなく暗黒竜と渡り合う。職業を戦闘中に変えることができるなど聞いたことがない。いったい何のスキルなのだ。
「ユメ子! そろそろわかった!?」
メガミは後ろで静観しているニンジャ、ユメ子に呼びかける。
「『心眼』による解析、完了でござる……! 氷属性に耐性があって、雷属性が弱点でござる!」
ユメ子は別にサボっていたわけではないらしい。ユメ子の言葉を聞いて、パーティーが動き始める。
「雷属性の魔法を使えるのはメガミだけですね……! 私は支援に徹させてもらいます!」
冷司は補助魔法をこれでもかとメガミに掛ける。火綱は回復魔法で前衛に回っていた三人を治療しつつも前に出て剣を抜き、暗黒竜を引きつける盾役となる。この隙にメガミはいったん後ろに引いて、マジックナイトに戻る。火綱は絶叫した。
「短期決戦プランしかないわ! こいつ、結構攻撃力が高い! 普通にやってるとMPが保たない!」
「Lv.80クラスのマジックスキルならきっと倒せるよね……! 精神集中するから、しばらくお願い!」
無謀にもメガミは暗黒竜の真ん前に出て、祈るように手を合わせた後目を閉じる。冷司と火綱は体を張ってメガミを守る。ここでユメ子は動いた。
「ニンニン! ここは拙者に任せるでござる!」
役になりきっているのか、奇妙な口調で喋りながらユメ子は暗黒竜の背後に回り込む。非常に身長が小さいロリッ子で、小学生にしかみえないがいったい何歳なのだろう。少なくとも、うちの中学校の生徒でないことは確かだ。忍び装束で暗黒竜の脇を走り抜ける彼女の姿は、なかなか様になっていた。
「必殺! 『雷切千鳥』!」
ユメ子は雷を帯びたクナイで暗黒竜の足下を攻撃する。威力は低いが硬直の少ない技であるようで、ユメ子は暗黒竜の足下をちょこまかと動き回りながら連続して技を出す。
「オーバーライドを無駄遣いするのは二流でござるよ! ニンニン!」
暗黒竜はバランスを崩し、その場に倒れ臥す。スタン効果もある技だったようだ。ユメ子はドヤ顔を見せて、メガミが畳みかける。
メガミは数歩前に進んでから、マジックスキルを使った。
「悪を滅ぼすは神より借りし力……! 正義の雷よ、天を震わせ! 『ギガ・サンダー』!」
メガミの体から一際大きい虹色の光が放たれ、暗黒竜の巨体を眩しいくらいの稲妻が包み込む。暗黒竜は断末魔の悲鳴を上げながら焼き尽くされ、消えた。まさかの一撃必殺である。
(無茶苦茶だ……! ボスを一撃なんて……!)
隠れて様子を見守っていた雅雄は呆然とする。呪文詠唱で強化した上で、メガミのレベルでは使えないはずのマジックスキルを使った。いったい何が起きているのかさっぱり理解できない。
今さらながらに長船君が言っていたことを思い出す。「メガミたちが戦ってるの見たら、絶対勝てないってわかっちまった」。同感である。こんなの、絶対に勝てるわけがない。Lv.1の雅雄が同じことをやるのは逆立ちしたって無理だ。戦術で補うとか、そういうレベルを超えている。




