27 まさかのお誘い
あまりの光景に雅雄が動けないでいるうちに、メガミがステージの奥にある宝箱を開けてしまった。
「無事にお宝ゲットだね~! 私、使っていい?」
中から情報通り、〈ツィルニトラ〉なる細身の片刃剣が出てくる。あれを手に入れることができていれば、全然違っただろうに。メガミはさっそく〈ツィルニトラ〉を装備して軽く振る。装備することで魔法攻撃の威力が上がるらしく、メガミは魔法の試し撃ちをする。その間に火綱は全員を丁寧に回復させていった。
「意外と楽勝だったね~! 明日はどこに行く~?」
遊びに行く約束でもするかのようにメガミは軽い調子で皆に尋ねる。しかし冷司が苦笑いしながら手を挙げた。
「その件ですが明日は休みにしていただけませんか。明後日に山田先生が抜き打ちテストするって情報が来てるんですよ」
「ごめんね! あの先生マジで厳しいから!」
火綱も手を合わせてお願いする。メガミは二人の意見を受け入れる。
「七組も大変だね~! じゃあ明日は休みにしよっか」
ユメ子はうなずく。
「ニンニン。そういうことなら拙者は、一人で修行をさせてもらうことにするでござる」
休みといいつつ、ユメ子は単独行動することに決めたようだ。意識が高い小学生(多分)である。話が纏まったところで四人は一ヶ所に集まる。大方帰還の魔法を使うのだろう。
そこでいきなりメガミが動きを止める。心なしか雅雄の方を見ているような……。いや、〈ダークレザーコート〉の隠蔽効果があるので雅雄を発見するのは至難の業であるはずだ。
メガミは他のメンバーから距離をとる。
「先、帰ってて! やることができた!」
「え? ここでやることなんてもうないんじゃ……」
火綱は首を傾げるが、メガミは「いいから、いいから!」と強引に三人を帰らせる。そして三人が帰った後、まっすぐメガミは雅雄のところに駆け寄ってくる。〈ダークレザーコート〉の隠蔽効果はLv.40。Lv.40を超えているメガミには見破られてもおかしくはない。
「雅雄君、こんなところで何やってるのかな?」
「あ、えっと、ごめんなさい……」
世間話のように話しかけられた雅雄は視線を宙にさまよわせながら、メガミに意味もなく謝った。
メガミの魔法で雅雄は【ブレイバーズシティ】に帰還する。町や村を自由に行き来する魔法は魔法使い系、僧侶系の職業ならLv.30程度で普遍に覚える。【ブレイバーズシティ】より先には現在のところ小さな村が点在するばかりなので、ほとんどのプレイヤーは【ブレイバーズシティ】を拠点にしていた。
雅雄はメガミが【ブレイバーズシティ】で借りている部屋に案内される。ぬいぐるみやら何やらが飾られた、非常に女の子っぽい部屋だった。
「我が主が自分の部屋に他人を招待するのは雅雄殿が初めてですぞ! 光栄に思いなさい!」
テーブルの上でピヨちゃんがピョンピョンと飛び跳ねる。「余計なこと言わなくていいから」とメガミはピヨちゃんをデコピンではね飛ばす。
メガミは鎧をはずしてガーリーな私服に着替えていた。メガミは紅茶を入れて雅雄に出し、質問する。
「雅雄君、私たちのこと覗き見して何がしたかったの?」
言い逃れる意味もないので、雅雄は強くなるために〈ツィルニトラ〉を横から掠め取ろうとしていたことを白状する。
ちなみに紅茶はおいしかった。この世界でも普通に飲み食いはできる。ただしアバターは現実の体と違って頑強ならしく、ほとんどお腹は減らないし、なかなかトイレに行きたくもならない。少なくとも、八時間程度なら何も食べる必要はない。そして一日経過して再ログインすると、生理現象的な部分はリセットされている。
あまり飲食すると冒険中に尿意、便意を催して困りそうなので雅雄はいつも控えていた。余計なことに使えるお金もないし。……ダンジョンで野糞中に襲われて死んだら、末代までの恥だ。
「なるほどね~。Lv.1で普通にやると、それくらいしか確かに手はないよね」
非難するでもなくメガミはうんうんとうなずいた。雅雄はどう反応していいかわからず、うなだれる。メガミは言った。
「じゃあ明日、私と一緒に修行してみる? 私、明日だけなら空いてるし」
何を言われているのかわからず、一瞬雅雄は固まる。雅雄は目をパチクリさせながら訊いた。
「……いいの?」
メガミの申し出はありがたい。渡りに船だ。メガミと一緒にハイレベルモンスターを倒せば、雅雄でもレベルアップできるかもしれない。本当にメガミは天使のような人だ。
「もちろん! じゃあ、明日夜の九時に神殿の前でね!」
メガミと約束した雅雄はログアウトした。




