プチ歓迎会2
愛嬌でなんとか乗り切ろうとする転校生。さすがにこれ以上追及する気にはならない。
「俺らも無理に聞こうとはしてねえよ、な?」
飛鳥は笑いながら樹の背中をぱん!と叩く。
樹はその反動に体を揺らしながら、気まずそうにこくこくと頷いた。
「じゃあさ、できればこれは答えて欲しいんだけど」
飛鳥が続ける。座っていた腰を上げ、いまだ体が強張っている宵に近付いた。
飛鳥の指が宵の髪に触れ、彼の左耳を露出させる。
「この中のやつさ、どこで開けた?」
宵の耳の中。真ん中に、ハート型の金属が鈍く光っている。
「あ、これ、ダイス…?」
「ダイスっていうのかここ!」
「うん、これは原宿で開けたよ」
「やっぱ原宿か。人多そうでだるいんだよな〜」
答えを聞いて、飛鳥の口は嫌そうに曲がる。
「そうだね……あともしかしたら耳の形によっては開けられないかも」
「そうなのか!?」
「ここの、出っ張りが短いと駄目だった気が」
「まじか。せっかく行っても開けられなかったら嫌だな」
「でも、飛鳥の耳は……」
宵はおそるおそる飛鳥の髪を上げ、飛鳥の耳を見る。
「ダイスが出来るかはわからない……けど飛鳥の耳の形だったらインダスが似合うかもだから、駄目だったらそっちはどう?」
「インダス?」
「こっちとこっち、2つ一気に開けて、長い棒で繋げるの。これこれ」
宵はスマホで検索し、出た画像を飛鳥に見せる。
「えー!こええ!」
画面を見た飛鳥は驚いて震える。蓮と樹も見る。2人とも飛鳥と同じような顔をした。
「怖いかもだけど可愛いよ、宵は耳の巻きが浅いから出来ないんだよねえ」
宵はうっとりするようにスマホの画面を見つめた。
「うーん、考えとくわ」
自分の耳を触りながら、飛鳥はまんざらでもない顔に変わった。
「宵、服とかファッションきっと好きだろ?ピアスとかアクセとか結構俺も好みでさ。
ずっと話してみたかったんだよ」
思わぬ告白を聞いて、宵の顔がぱあっと輝いた。
それから2人はお互い身につけている物を褒め合い、知識を語り合う。
宵が化粧道具を持っていることを聞き、飛鳥が身を乗り出した。
そうこうしているうちにその話題になり、見せてもらうことになり。2人は宵の部屋へと旅立った。
残される蓮と樹。
「……」
「……」
室内が静まる。
「えっと、樹はピアス空いてる?」
「いや……」
「奇遇だね、僕もだよ……」
会話は続かなかった。蓮は何か話題に出そうとし、思いつかない。
飛鳥に反して着飾っていない樹。彼が何が好きなのか検討つかない。
あまりの沈黙の長さに、さすがにまずいと思い出した。
「あのさ」
先に口を開いたのは樹だった。
「宵がクラスで1人だって、わかってたんだ」
ぽつりと続ける。
「声をかけるかずっと悩んではいたんだけど、1人でいたいタイプなのかな、とか色々考えてたら結局1学期が過ぎちまった。もっと早く声を掛けていれば、お前もわざわざこんな遠くの学校に転入せずに済んだんだよな……すまなかった」
樹は目を伏せ、俯いた。




