初日2
午前中の授業が終わり、生徒が一斉に席を立ち、皆楽しげに廊下へ出ていく。
ざわざわとした教室の中、蓮の近くの席のクラスメイトが数人、気を遣って声をかけてきた。
「瀬戸口くん、一緒に食堂行かないか?」
「家族から着信入ってて……もしかしたら長くなりそうだから今日は大丈夫。
ありがとう」
蓮は申し訳なさそうに苦笑し、スマホを振ってみせる。お互い手を振り合い、クラスメイトたちは賑やかに廊下へと出ていった。生徒たちが去り、静まりかえった教室。そこには蓮と宵だけが残っていた。
自分の席から蓮は宵の背中を見ている。宵は体を強張らせたまま動かない。
「宵」
蓮がその静寂を破り、その背中に声をかける。
宵はびくっと反応し、ゆっくりと、恐る恐る振り返った。
「蓮……?」
宵は前髪も長い。顔にかかった前髪の間、その隙間から大きく目を見開いている。
信じられないと言うように左右に首を振り、たちまちその瞳からは涙が溢れた。
「蓮、やっぱり蓮だよね!?」
宵は勢いよく立ち上がった。
身長が190センチ近くあるため、誰もが威圧感を覚えるほどの長身。でもすらりと細身の宵は、内股で、まるで大好きな人に縋る乙女のように駆け出す。
そして、狂おしいほどの力で蓮を強く抱きしめた。
「どうして……どうしてここに……!?」
「宵を支えたくて、助けたくて来たんだ」
蓮は少しも動じず、包み込むように優しく答える。
そして自分より遥かに大きな宵の背中に腕を回し、あやすようにぽんぽんと撫でてやった。宵の大きな体が、子供のように小さく震える。しゃくり上げ激しく嗚咽しながら、宵は蓮の肩の上に顔を埋め、とめどなく涙を流し続けていた。




