初日1
夏の終わり。
夏休みが明けた教室は、まだ浮かれているような、けだるいような。
新学期への期待感か、落ち着かない空気が漂っていた。
生徒たちは皆着席している。朝のホームルームの途中で担任が席を外したからだ。すぐに戻ることを知っている彼らは、席を立つことなく軽い雑談を交わす。内容は、ほぼ皆同じだった。
その話題の的となる人物を連れて、担任は姿を現した。
2人とも並んで数十人の視線へと向く。
「今日から新しく入る瀬戸口さんだ。皆仲良くしてね」
その転入生を見て、クラスの空気が少しざわついた。
瀬戸口と呼ばれた生徒は、男ばかりの教室において異質な、清廉な空気を纏っていた。短い栗色の髪にオリーブ色の瞳。窓から差す陽の光が、まるで透けているように見える。
すっきりと通った鼻筋、涼しげな目元。一目で整っているという印象を彼らに与えた。粗さがないきめ細やかな肌。首元までしっかりとボタンを留めた制服のシャツ。転校初日というものあるのか、きちんと整えられた服装は更にその容姿を際立たせていた。
「軽く挨拶お願いしていい?」
担任に声をかけられ、瀬戸口は頷いた。
「瀬戸口 蓮です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる蓮。生徒たちはよろしく、などと各々返してまばらな拍手を蓮に送った。その中で、自席から蓮を見上げて硬直している男がいた。黒髪で肩を越すくらいの長い髪。その顔色は、蒼白。
「瀬戸口さん。真ん中の1番後ろの席が空いてるからそこに座ってね」
「はい」
容姿と違和感ない、透明感があるが低めの声。蓮は席に向かって歩き出した。
その途中、自分を見上げている視線の持ち主に近づく。
「!」
彼に軽く微笑んだ。悪戯をしてみせた少年のように。
長髪の男は信じられないというような顔でびくっと肩を震わせる。その様子を見て周りの生徒は不思議そうな表情を浮かべた。蓮は気にする様子なく着席する。
授業が始まっても、黒髪の男、御伽 宵はその内容がまるで頭に入らなかった。
「う、嘘、嘘だあ……」
うなだれ、頭を抱える姿勢を取ってしまう。その様子を後ろから眺める蓮。
その表情は、これから何かを楽しむような、期待しているようだった。




