2日目3
「というわけで、何かあったら教えてくれよ」
休み時間になると、すぐに飛鳥は樹に近付いた。
樹の机に両手をどんと乗せてそのまましゃがみ、椅子に座っている樹を見上げる。
樹は斜め上を見て、ここ数ヶ月のことを探るように思い返した。
「1学期なんて特にやることなかったぞ。球技大会の種目決めるときは司会やったけど。あとは先生からの連絡伝えるとか、ノート回収しかなかったし。
2学期の方が大変なんじゃないか?」
「じゃあその時は手伝ってくれな!」
「えぇ……」
樹は怪訝そうな顔をする、が拒否の言葉は出てこない。
どうも頼られたら弱いらしい。
「あの、あの」
2人の上から、気弱な声が降ってきた。
「宵も、大変そうなとき手伝う……役に立たないかもしれないけど……」
いつの間にか来ていた宵が2人を見下ろしていた。
今にも沸騰しそうなくらいの顔色だ。
その様子を見ていた蓮も驚く。
昨日見た、自分の席から全く動きもしなかった宵が。
自分から後ろの席まで歩いていきクラスの中心人物に話しかけている。
更に衝撃を受けたのは1学期を共に過ごしていたクラスメイト達だった。
皆が、3人に注目している。
「ほんと!?助かる!その時は頼むぞ宵!」
飛鳥はいっそう明るく宵に返した。
あえて宵、と名前を出す。宵は震えながら、顔を縦に振りまくった。
そしてトドメとばかりに飛鳥の目線が横に向く。
「蓮も助けてくれるよな?」
「え?あ、うん?」
反射で答える蓮。
正直目立ちたくなかったが、つい体が反応してしまった。
「おい蓮!返事適当すぎだろー」
「え、そんなことないよ?」
すぐさまクレームを飛ばす飛鳥と、とぼける蓮。
その2人のやりとりを見たくて、宵はそこでやっとしゃがむ姿勢になった。
3人と目線の高さがぐっと近付く。
身体のこわばりはどんどん楽になっていき、やがて宵ははにかむ。
静かになっていた教室は、ほっとしたように少しずつ物音が増えていった。
蓮は、自分以外に顔をほころばせる宵を、近くでずっと見ていた。




