2日目2
今日の始まりはホームルーム。
2学期初日に蓮が転校して来たこともあり、そのイベントは1日遅れて行われた。
席替えだ。
1番後ろの席に座れたことを喜んでいた蓮は、一気にテンションが下がる。
担任が用意したくじ引きの箱を、皆が順番に引いていく。
番号を確認した生徒達は席を各々移動させ始めた。
ガタガタと、騒がしい騒音とはしゃぐ声が巻き起こる。
「あれ?」
担任が気付き、小さく笑った。蓮は全く移動をしていなかった。
今と同じ席の番号を引き当てている。蓮は心の中でガッツポーズをした。
「お、隣か」
ニヤニヤしている蓮の隣に、知っている声。樹だった。
蓮はついまた嬉しくなって、締まりのない顔つきになる。
「てか、場所そのまま?」
「うん!」
「お互い運がいいな。欲を言えば窓際が良かったけど」
「あはは!確かにね」
ゆるゆると2人が会話を交わす。すると前の方から騒がしい声がした。
「おー!宵が隣か!よろしくな!」
飛鳥が真ん中の1番前の左の席から、大声で、というかほぼ叫んでいた。
昨夜のイベントを知らない周りの生徒はもちろん、担任も驚きの表情をする。
「よ、よろしくね、飛鳥ぁ……」
その圧に完全に押されている様子の宵。弱々しく返事をする。が、彼の表情は嬉しそうに和らいでいた。まだ心配そうに見守るクラスメイト達。様子を見ていたいのは担任も同じ気持ちだったが、全員席移動を完了していることに気付く。
「みんな移動したかー?じゃあ次は2学期のクラス委員を決めるぞ」
次に嫌な顔をしたのは樹だった。
席替えの知らせを受けたのとは反対に、クラス全員が静まりかえる。
「ねえ樹、1学期のクラス委員って誰だったの?」
蓮は小声で尋ねた。樹は苦虫を噛み潰したような顔。
「……俺だよ」
「え、そうなの?すごいね」
「すごくはねえよ」
樹はため息をつく。
「1学期は投票で決めたんだけど。俺、入学式の新入生代表でスピーチすることになったからやったんだよ。その印象で選ばれただけ」
いやすごいけど?と蓮は思ったが黙っておくことにした。
樹は不服そうに続ける。
「俺は推薦入学だったから、入試で成績1番だったからスピーチに選ばれたわけじゃない。入学1日目なんて皆は俺がどんな性格かわかってるわけでもない。全部たまたまだよ……」
樹と話していると、彼はいつも気弱に話していることに蓮は気付いた。
宵の件でお礼を言ったとき、逆に詫びられたとき、それに今。
なぜこんなに自信が無さそうなのか、少し気になってしまう。
「誰か、やりたい人はいるか?」
担任は皆に問いかけながら、樹の様子を確認した。
こちらを向いていないため表情を見ることが出来ない。
同じ投票になると、結果が既にほぼ決まっているため心苦しい思いになる。
困り顔の担任のすぐ目の前で、後ろをきょろきょろ見回している男がいた。
「希望者誰もいないの?じゃあ俺やっていい?」
飛鳥が手を上げていた。その声を聞いて、樹がやっと前を見る。
「お、やってくれる?」
「やりたい!2学期は文化祭と体育祭あるじゃん、楽しそうだし」
担任はほっと安堵する。校則がないとはいえ服装は乱れているものの、成績も悪くなく性格も積極的な飛鳥にも信頼は置いていた。
「そうしたらお願いしようかな。頑張ってね」
「はーい」
幼稚園児がお返事をしたかのような反応。生徒達もほっとして、皆で拍手を送る。
なぜか飛鳥も拍手をして、喜びを分かち合っていた。




