表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けのイソファガス  作者: 夏目有也


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

うれる

 友里は売れた。世間は「いっぱい食べるのに痩せてる女優」を面白がった。

 女性誌では「食べても太らない運動メソッド」という特集が組まれた。装置の接合部が痛むため、友里は運動をほとんどしないが、社長がでっち上げた運動メソッドが雑誌で紹介されていた。

 その雑誌の読者たちは、その出鱈目な運動をしながら、ハンバーガーを頬張り、大半は太った。


 ハンバーガー。フライドチキン。ポテト。ジャンクフードのコマーシャルが次々に決まった。女優としてドラマや映画に出るというより、テレビタレントとして人気が出た。

「本当に腹が減ってる女は、食い方に色気が出るんだよ」とスポンサーは言った。

 そのうち、水着の仕事が増えた。

 肩。腹。脚。痩せた身体を見せる仕事ばかりになった。

「健康的なセクシーさ」とスポンサーは言った。だが、友里はどんどん顔色が悪くなっていく。それでも食べ続けていた。食べても食べても腹が減る。


 ある夜、休憩室に男が来た。友里が高校の頃から付き合っている恋人だった。事務所が隠している存在だ。

 友里は気づかず、冷めた唐揚げを食べていた。


 ぐちゅ……どゅる……


 黒い鞄が椅子の横で脈打つ。男はしばらく黙って友里を見ていた。


「……それ、旨いか?」

  

 友里の手が止まった。ゆっくり顔を上げる。笑おうとして、失敗する。


「もうわかんない」

 初めて聞く声だった。男は痩せた顔を見つめた。頬の丸みは消えていた。昔の面影はもうない。

 男は小さく言った。

「前のほうが、可愛かった」

 友里は何も言わなかった。喉だけが、小さく動く。飲み込んだものは、身体のどこにも残らない。

 

 ぐぽ……どゅりゅ……


 黒い鞄だけが、生き物みたいに震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ