08.巫女
この世界には、人間の他にも色々なものがいる。
神や妖、幽霊……他にも、意味不明な生き物たち。
幼い頃から、そんなものたちと一緒に過ごしていた。
7歳の頃には、神隠しにあったりもした。今でも気がついたら違う場所にいたり、助けを求められて連れ去られたりもするが、概ね無事なので気にしていない。
たまに神同士の喧嘩を止めに行かなければならないのは、人間の私がすることではないと今でも思っている。
「あの人間、危ないな」
お出かけの帰り道、逢魔が時の時間に出会った少年を見て、彼が言ったことを思い出した。
傍から見れば、ただの学生の男の子。だが、見る人が見れば、とても不安定な存在だった。
特殊な職業の彼は一目見てわかったらしい。私も、「この子視えているな」とは思ったが、あえて口には出さなかった。
視えることの大変さなど、本人にしか分からないのだから、他人がとやかく言ったところでどうにもならない。だが、視え過ぎるのは如何なものかと思った。
周りのお友達は優しい子たちのようで、少年のことをとても心配しているようだった。それは、少年にとってはどれだけ救いになることだろう。どんな時でも離れていかない友人は大事だと知っていた。
それよりも、後ろにいた妖怪の方が気になった。
襲うわけでもなく、ただ心配そうにオロオロしている様子に、彼も戸惑いを隠せないようだった。私自身も珍しい方だなと思ったが、特に口出しはせずそのままにしていた。少年が視えているならば、わかっていて放置しているということなので。
それから数日後、我が神社で祀っている神様の小さな眷属であるミサキ様から一件の相談を受けた。
ミサキ様にはとてもお世話になっており、私が小さな頃からの付き合いであった。ミサキ様が作るミサンガやお守りを神社で頒布しているが、とても効果があり、注文が殺到するほどであった。
そんな方からの相談は、この頃仲良くしている人間の少年についてのお話だった。聞けば聞くほどミサキ様も宇迦之御魂神様も、とてもその人間の少年のことを大切にしているのが伝わってくる。しかも、この前出会った少年に似ているような気がした。
ミサキ様には、「何かあった時は、力になってあげてください」と頭を下げられ、慌ててしまった。「私にできることならなんでも言ってください」と伝えると、とても嬉しそうに笑った顔が数日忘れられなかった。
そして今日、ミサキ様は件の少年と共に神社を訪れていた。その少年は、あの逢魔が時に出会った少年だった。
私も驚いたが、少年の方も驚いたような顔をしていた。世間は狭いと思いながら、小さく手を振ると、ミサキ様が嬉しそうに笑っていた。
何かを少年に話しているようだったが、距離が離れているので分からなかった。私は二人がその場を離れ、東屋に行くのを見送った。
少し呼ばれ、その対応に追われたあとこっそりと東屋を覗いた。二人が楽しげに話しているのが見えて、頬が緩んでしまった。そばに誰もいないことが救いだったと思う。誰かに見られていたら、恥ずかしすぎるから。
少年は、前に会った時よりあちら側へ足を突っ込んでいた。私は、何事もなく穏やかに過ごせることを、願うしかなかった。それが少し不甲斐なく、申し訳なかった。




