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06.避難場所

集めた落ち葉と、屋蜘蛛と一本だたらが拾ってきてくれた枝で作った焚き火。炎の勢いはそこまで強くないが、近づくとすごく暑いのが分かる。


 ミサキと黎は、一本だたらと式神に手伝ってもらいながら、焼き芋作りをしていた。火ばさみを使っていても、手の近くに炎があるのが怖いのか、おっかなびっくりで作業をしていた。

 屋敷から出てきたウカは、姑獲鳥と会話をしながらその様子を眺めていた。


「もうそろそろで、できるぞぉ〜」


 一本だたらの声に、休憩をしていたミサキと黎は駆け寄る。その後ろをウカと姑獲鳥と屋蜘蛛もついて行った。

 たっぷり1時間焼き上げた焼き芋を、落ち葉の中から一本だたらが取り出す。それを式神が受け取り、ミサキと黎の目の前で、アルミホイルを開いてくれた。焼きあがったさつまいもからは、甘い匂いが漂ってくる。

 早く食べたい気持ちが先走り、手で触れようとした瞬間、保護者に手を取られ、熱々の焼き芋に触れることはなかった。


「熱いですので、少しお待ちください」


 式神は焼き芋を引っ込めながら、ミサキと黎に言う。二人は顔を見合わせてから、少し笑い「はーい」と返事をした。

 大きな焼き芋を半分に割り、少しだけ皮を剥く。持つところは、新聞紙とアルミホイルで熱くならないようにしてミサキと黎に渡してくれた。


「食べていいですか?」


「おぉ〜、気をつけてけぇ〜」


 二人で同時に「いただきます」と言い、焼き芋にかぶりつく。熱さでハフハフさせながら食べる二人を大人たちは微笑ましそうに見つめていた。

 じっくり焼き上げたおかげで、びっくりするほど甘い焼き芋に二人は目を見開き、目だけで美味しいと言っていた。


 他の焼き芋は食べやすい大きさに式神がカットしてくれる。焼きたてにかぶりつくという醍醐味をミサキと黎に味わわせてくれたのは、少しばかりの優しさだった。

 

 じゃがいもを取り出し、アルミホイルを開いてじゃがいもに十字に切り込みを入れる。その切り込みにバターを入れ、少し塩をまぶす。開いたアルミホイルを戻し、そのままお皿の上へ置いた。これは、余熱でバターを溶かすためだ。


「すっごい美味しいです!」


「焼き芋って、こんなに甘いんだ」


 はしゃぎながら食べる二人に、ウカは「ゆっくり食べろ」と、少し呆れた声を出す。姑獲鳥はその様子に小さく笑っていた。


「元々甘い芋だったからなぁ〜。じっくり焼いたおかげで、余計に甘みが出たんだよぉ〜」


 一本だたらは火を片付けながら、そう言う。口いっぱいに頬張りながら、ミサキは「なるほど」と頷いた。

 途中、別の式神が飲み物を配ったり、他のつまめるご飯を作ってくれたりして、予期せずお昼はピクニックとなった。

 一緒にご飯を食べる中、一本だたらと黎と姑獲鳥が初めましての挨拶をしていた。初対面だったことをすっかり忘れていたのだ。



「そういえば、朝早くに来るなんて珍しいですね? 何かありましたか?」


 お腹がいっぱいになったミサキは、式神のお手伝いをしながら、ふと疑問に思ったことを黎と姑獲鳥に聞いた。

 休みの度に来るようになった黎たちだが、今日はいつもより早めに到着していた。特に責めるような意図はなく、ただ単純に疑問に思ったので聞いたのだが、黎の表情が少し曇ったのを見て、ミサキは少し慌てた。


「な、何かありましたか? 嫌なことありましたか?」


「……大丈夫だよ」


 困ったような笑顔で黎は「大丈夫」と言うが、全然大丈夫そうには見えなかった。

 ミサキは、黎に聞くのは後回しにし、姑獲鳥の方を見る。見つめられた姑獲鳥は、少し迷った末、教えてくれた。


 なんでも、学校から施設の職員に進路についての連絡が入ったらしい。

 そのせいで、ことあるごとに「どうするのか?」「この学校はどうか?」「早く決めろ」とせっつかれるようになったという。


「だから、早めに避難しに来たのですね」


「迷惑な話だな」


「まだ迷ってるって言っても、早く決めた方がいいとか、代わりに決めてやろうかなんて言ってきて、本当に迷惑。余計なお世話だよ……」


 本当に参っているようで、黎の口から愚痴が止まらない。ブツブツと悪態をつく黎の姿は珍しく、その姿が見られてよかったと思うと同時に、ミサキは微妙な心境になっていた。


「どうにかしてあげたいですが、平日にこちらに泊まるわけにもいきませんからね」


「俺は別にいいけど……絶対何か言われる」


「人の子は大変なんだなぁ〜」


 と、一本だたらは他人事のような感想を言うが、実際他人事なので誰もツッコミはしなかった。


「やっぱり、早めにミサキちゃんが紹介してくれるって人に会った方がいいかな……?」


「黎くん、それは急ぐものじゃありません。ちゃんと、黎くんの意思で会うかどうかを決めましょう」


 そんな投げやりな気持ちで会ったところで仕方がないと思ったミサキは、黎の言葉に首を振る。

 黎もミサキの気持ちが少しだけわかっているようで、ゆっくりと頷いた。


「でも、毎日は大変だと思うので、とっても良い避難場所を教えますね」


 ミサキはにっこりと笑いながら黎を見る。

 黎は不思議そうに首を傾げ、ミサキを見つめ返していた。

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