05.焼き芋を作ろう
毎朝、屋敷前の落ち葉を箒で集めていると、一本だたらがミサキに声をかけてきた。
「おぉ〜、早起きだなぁ〜」
「あ、一本だたらさん、おはようございます!」
「おはよぉ〜」
ここ数日、ウカの屋敷に泊まっている一本だたら。自由気ままに過ごしているが、こうしてミサキが仕事をしていると、時折手伝ってくれるようになった。
「ミサキ、おはよう」
「あ、やっくん! おはようございます!」
「おぉ〜、屋蜘蛛殿も早いなぁ〜」
一本だたらと一緒に庭掃除をしていると、屋蜘蛛が後ろから声をかけてくる。
屋蜘蛛はミサキに挨拶をする。一本だたらには少しだけ頭を下げるだけだが、一本だたらが気を悪くした様子は無い。
「ほんとぉ〜に、仲がいいなぁ〜」
一本だたらにそう言われ、ミサキは照れたように笑い、屋蜘蛛は満更でもなさそうな顔をしていた。
「落ち葉が沢山!」
「この屋敷の周りは木ばかりだからね」
「この量を毎日一人でやってんのかぁ〜?」
こんもりと積もった落ち葉に、ミサキは歓声を上げる。一本だたらの疑問に、ミサキは首を振った。
「式神さんたちが手伝ってくれるので、一人じゃないですよ!」
「そうかぁ〜、それなら良がったよぉ〜」
普段は式神たちと手分けをして行っている掃除。何故なら、庭が大きいからだ。だが、今日は一本だたらが手伝っていたため、式神はそっと手助けする程度に留めていたようだった。
「う〜ん、こんなに沢山の落ち葉、捨てちゃうのもったいないですね……そうだ、おいもを焼きましょう!」
「焼き芋かぁ?」
「今から堀りに行くの?」
「流石にそれは時間がかかりますので、厨から頂いてきます!」
そう言うと、ミサキは箒を片手にトタトタと屋敷の中へ戻って行った。
残された屋蜘蛛と一本だたらは、ミサキが戻ってきた時にすぐに焼き始められるように準備をするのだった。
ミサキは、手を洗ってから厨の中でさつまいもを探し始めた。
「お嬢様、何をお探しですか?」
ガサゴソと探していると、後ろから声をかけられ驚き、飛び跳ねた。危なく頭をぶつけるところだったが、すんでのところで式神がガードをしてくれた。おかげで、ミサキが怪我をすることはなかった。
「わ、あ、式神さん! すみません、驚きました」
「いえ、いきなりお声掛けして申し訳ありません」
「大丈夫です! あの、さつまいもとかじゃがいもありますか?」
ミサキが尋ねると、式神はすぐに目当てのものを取り出してくれた。
「何をお作りになるのですか?」
「落ち葉で焼き芋するんです!」
ミサキは、やろうと思った経緯を説明する。すると、式神は必要な道具まで揃えてくれた。
式神と一緒にさつまいもやじゃがいもに、濡らした新聞紙を巻き付け、その上からアルミホイルを巻いていく。
少し多めに作ってしまい、ミサキ一人では持っていくことができなくなってしまったため、式神に頼んで一緒に庭まで持っていくことにした。その途中で、火ばさみや耐熱用のグローブも持っていく。
庭に着くと、そこには屋蜘蛛と一本だたらの他に、黎と姑獲鳥も一緒にいた。
一体いつ来たのかと疑問に思ったが、気にせず駆け寄り挨拶をする。
「黎くん、姑獲鳥さん、おはようございます!」
「あ、ミサキちゃん、おはよう」
「ミサキ、チャン、オハヨ」
抱えたままだったさつまいもたちは、屋蜘蛛が受け取ってくれ、ミサキは火バサミをカチカチと鳴らしていた。
鼻歌を歌いそうなほどご機嫌なミサキに、黎は小声で問いかける。
「ミサキちゃん、今から何するの?」
「落ち葉で焼き芋作るんですよ」
「落ち葉で?」
集めた落ち葉で焼き芋作りは初めてなようで、不思議そうな声を出す黎に「とっても美味しいんですよ」と、ニコニコしながら返事をする。
火は危ないという理由で火付けは、一本だたらが行っている。少し不満なミサキだが、隣で少しワクワクしている黎を見て、自然と頬が緩んでしまった。
「おぉ〜い、いいぞぉ〜」
「は〜い! 黎くん、焼き芋を作りましょう!」
一本だたらの声に、ミサキは黎の手を引いて、火がついた落ち葉に駆け寄る。
黎は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑いながらミサキのあとを追った。その様子を姑獲鳥が楽しそうに見つめていた。




