01.散策
少し涼しくなってきた9月。
ミサキは、木の子たちと山を散策していた。
今日のミサキの服は、裾に葉っぱが描かれた赤茶色の浴衣だ。帯は黒。グレーの兵児帯を合わせている。兵児帯は花結びにしていて、とても可愛らしい。
赤い鼻緒の下駄も、ミサキによく似合っていた。
時折出会うちいさな妖怪たちに、手を振る。すると、好奇心旺盛な妖怪たちは、ミサキの後を追うようについてくる。
その様子は、百鬼夜行に似ていた。
「アソブ」
「ナニスル?」
「アレ、ナニ?」
好奇心旺盛なのは木の子たちも同じで、家同然な山でも、「あれはなんだ?」「これはなんだ?」と、ミサキに聞いてくる。
それを真似するかのように、ちいさな妖怪たちもミサキを左右から引っ張っては、キャラキャラと笑っている。
「あわわ、落ち着いてください! そんなに引っ張ったら痛いですから!」
そんなミサキの声は届いていないようだった。
幸い、ミサキの方が力は強いため、手を振り払おうと思えば、振り払える。だが、ただ遊んでいるだけの子供たちにそんなことは出来ない。そのため、大人しく遊ばせている。
「おぉ〜いぃ……だいじょぉぶかぁ〜?」
山の中腹あたりにある開けた場所に出ると、遠くからしゃがれた声が聞こえた。
「コエ?」
「ダレ?」
「ナニ?」
辺りを見渡すが、誰もいない。
木の子たちも、警戒するように周りを見ながら身を寄せあっている。ちいさな妖怪たちは、そもそも警戒心が薄いのか『なんのことか分かりません』という顔をしていた。
「おぉ〜いぃ……ここだぁ〜」
近づいてきているようだが、姿が見えない。ミサキが「どこにいるのでしょう?」と問いかけても「ここだぁ〜」と言うばかりで、正確な位置が掴めなかった。
ミサキは困った顔で、キョロキョロと辺りを見回している。
「ここだぁ〜」
「あの、本当にどこにいらっしゃいますか?」
「ここだぁ〜」
「ここと言われましても……」
「うしろだぁ〜」
耳元から声がして、ミサキが慌てて振り向くと、そこにいたのは、ミサキよりも遥かに大きな妖怪だった。ギラギラと輝く金色の目は一つだけ。木の子やちいさな妖怪たちなら、一口で食べられてしまいそうなほど大きな口を持っている。そいつは、一本足で立ち、器用にミサキの顔を覗き込んでいた。
「ナンダ!」
「キサマ!」
「ナンダ!」
そいつを見て驚いた木の子たちは、珍しく大きな声を出しながら、ミサキにくっつく。小さいとはいえ、2〜4歳ほどの子たちが一斉にミサキにくっつくのには無理があった。
「あ、わぁ!」
ミサキは耐えきれなくなり尻もちをつく。だが、木の子たちはお構いなしにミサキにひっつき、威嚇をしていた。
ちいさな妖怪たちも、木の子たちを真似たのか、ミサキの顔や頭にくっついて遊んでいる。
「だいじょぉぶかぁ〜?」
と聞かれたが、顔にちいさな妖怪たちがくっついているため、ミサキは答えることができなかった。




