03.模様替え
「それで?今回はどんな模様替えにする?」
頭を撫でられて、ご機嫌になっていたミサキは、屋蜘蛛の問い掛けでハッと我に返った。
お兄ちゃんの頭なでなではミサキには効果抜群。危うく、今日の目的を忘れるところだった。
屋敷付喪の屋蜘蛛は、この屋敷を自由自在に模様替えすることができる。厠だった所が湯殿になったり、ミサキの自室だった所が衣装部屋になっていたりと、建築の匠も驚きの自由っぷりだった。
「えっと、春になったので私の部屋を元の場所にお願いします。他のところは、いい感じで?」
「それじゃあ、主様の部屋とミサキの部屋を近くに置いてみる?前から言われてたし」
「そうなの?それじゃあ、それでお願いします」
「うん、任せて」
屋蜘蛛が目を閉じる。ただそれだけの動作でも、ミサキはワクワクしていた。
神の御業としか思えない屋蜘蛛の能力を見るのが大好きだった。
フッと重力が無くなったような感覚に陥る。足はしっかりと床に着いているのに、まるで浮いているような不思議な感覚。だが、その感覚は数秒もしないうちに消えていた。
「はい、終わり」
目を開けた屋蜘蛛は、ミサキを見てニッコリと笑った。
「やっぱり、いつ見てもよく分からないですね
でも、凄いことは分かりますよ!」
「どっちなの?」
クスクスと笑いながら、ミサキの言葉にツッコミを入れる。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るね」
「もうですか?一緒にご飯食べないの?」
「うーん、そうしたいのは山々だけど、お迎え来てるし」
「お迎え?」
屋蜘蛛の視線を辿って後ろを振り返ると、そこには柱に体をあずけるように立っているウカの姿があった。不機嫌オーラ満開の顔で。
屋蜘蛛とミサキは、目を合わせてクスクス笑った。後ろの方で不機嫌が増したような気がするのは、気にしないでおこう。
「大変そうだね」
「可愛らしいので、問題ないです!」
「それはそれで、どうなんだろう?」
自身の主の心の狭さに苦笑いを浮かべながら、ミサキにじゃあねと手を振る。屋蜘蛛は、光が解けるように居なくなった。
その光景を見届けたミサキは、ゆっくりとウカの方を振り返り、歩を進める。
この後、ウカのご機嫌をどうやって取ろうかと考えながら笑顔で名前を呼んだ。
「ウカ様!ご飯なに食べたいですか?」




