02.やっくんとミサキ
屋敷付喪、名は屋蜘蛛。ミサキや、木の子などの幼い子たちには、やっくんと呼ばれ親しまれていた。
ミサキと屋蜘蛛が出会ったのは、ミサキがこの屋敷に来た時。警戒心MAXだったミサキだが、屋蜘蛛の優しい性格のおかげで、だんだんと警戒も解かれていき、今では兄妹のように仲良くなっていた。
そんな2人の様子に、少なからず嫉妬するのはウカである。今のように溺愛、過保護では無かった昔ならまだしも、現在は距離の近い2人を見ると眉間に皺を寄せて険しい顔をしたりする。その度に、式神に宥められるのはもはやお約束。何も知らないフリをするミサキと、苦笑いを浮かべる屋蜘蛛までがセットである。
「それで掃除は終わり?」
少し拗ねてしまった妹を宥めるように下から顔を覗き込む。
綺麗な紫色の瞳は、恥ずかしさからくる涙で潤んでしまっているが、溢れさせまいと懸命に耐えている。そんないじらしい姿に、思わず顔が緩んでしまうのは不可抗力であった。
こくりと頷いたミサキを見てまた声をかける。
「なら手伝う。笑ちゃったお詫び」
そう言って、バケツの中にある雑巾を手に取る。その姿を見て、ミサキが慌てたように駆け寄ってきた。
「わー!そんなつもりじゃ!
大丈夫、大丈夫ですから!」
屋蜘蛛の手の中にある雑巾をミサキは必死に取ろうとしているが、戯れるように軽く交わされ、なかなか奪い取ることは出来ない。
「いいよ、大丈夫
それに、2人でやった方が早く終わるでしょ」
そう言った屋蜘蛛は、慣れた手つきで雑巾がけを始める。それを見たミサキも、続くように雑巾がけを始めた。
2人で協力したおかげで、予定よりも早く終わらせることができた。
ミサキは、バンザーイと手を挙げて嬉しそうに喜んでいた。
「終わりましたー!!
やっくん、手伝ってくれてありがとうございます!」
「どういたしまして
でも、ミサキが頑張ったおかげだから
お疲れ様。そして、いつも綺麗にしてくれてありがとう」
優しい屋蜘蛛の表情をみて、ミサキは嬉しそうに笑った。屋敷付喪である、屋蜘蛛はこの屋敷と一心同体。屋敷を愛し、丁寧に手入れをしてくれなければ、すぐに消えてしまう存在だった。
その事実を知った当初のミサキは、自分なりに精一杯掃除を行った。それはもう毎日。
隅から隅まで、朝から晩まで掃除をしては屋蜘蛛の状態を観察していた。
ミサキにとって、優しいお兄ちゃん。そんな存在が消えてしまうことへの恐怖からの行動であった。
さすがに度が過ぎていたため、屋蜘蛛とウカ、2人からの説得により、大掃除は4月と8月それから12月に行われるようになったのだが、それでも毎日の日課の掃除は、欠かされたことはない。そんな頑張り屋な妹の頭を屋蜘蛛は優しく撫でた。




