01.屋敷付喪
お花見をした日から数日後、ミサキは屋敷の中を慌ただしく駆け回っていた。
白とピンクのグラデーションに、小さな花が散りばめられている可愛らしい着物に、緑の帯。長い髪は頭の上の方で2つにお団子で結ばている。
手には和はたき、着物の上から割烹着を着て今から掃除をしますと言った装いである。
今日は大掃除と屋敷の模様替えの日。
ミサキと式神たちは手分けをして至る所を綺麗にしていた。
上の方は身長的に届かない為、式神たちに任せて自分が届く怪我をしない範囲で掃除をしている。
主であるウカの部屋は勿論、自分の部屋、厠、厨、庭、廊下を重点的に綺麗にしていく。ミサキの身長は130cm程のため、和はたきで掃除するところはない。その為、持っているのは気分である!
「あとは廊下をだーっと雑巾がけすれば終わりですね!」
朝早くから始めた掃除。気づけば既に未の刻になっている。途中で昼休憩を挟んだにしても、長時間の掃除で疲れてきているが、あと少しで終わるので声を出して気合を入れた。
廊下の端で雑巾を固く絞りしゃがみこむ。四つん這いになり、両手で雑巾を床に押し当てて一直線に拭き進めようと1歩踏み出したところで、足袋を履いた足が滑り、べシャリと転んだ。
幸い、床に手がついていたので怪我はしなかったものの、恥ずかしさで顔が赤く染っていく。
誰も見ていないよね?と言う風に顔をきょろきょろさせる。誰もいないことを確認すると、ほっと一息ついた。
すると、クスクスと頭上から声が聞こえた。慌てて、上を見ても誰もいない。不思議に思って首を傾げ辺りを見回す。
式神たちは、ここには居ないし、ウカ様もお部屋でお仕事中。木の子ちゃんたちは、今日は来ないし…誰だろう?と考えを巡らせると、1つの答えに辿り着いた。
堪らず大きな声で、声の主を呼ぶ。
「や、やっくんですよね!?笑って居ないで、出てきてください!!
それと、見ないでください!」
ミサキの頭上で淡く黄色い光が現れる。その光がパッと弾けると中からミサキの身長と同じくらいの男の子が現れた。
やっくんと呼ばれた少年は、赤と黒の袴に紫の羽織を羽織っており、褐色肌で黒い短めの髪から2本のアホ毛がぴょこんっと出ている。
左目は髪で隠れているが、出ている右目は金色に輝いていた。
「あははっ!ごめんね、でも見ないでは無理
だってこの屋敷のことならなんでも知ってるから」
「もう!恥ずかしいです……」
やっくんは、ミサキの頭をよしよしと撫でる。
それすらも恥ずかしいミサキは、両手で顔を覆い隠した。
やっくんの正体は、屋敷付喪。
主であるウカの作ったこの屋敷に宿る、付喪神だった。




