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31.花火大会

あれから数日後。


 夏休みも残り少なく、黎はいつもの4人と図書館の自習室で課題に勤しんでいた。


「感想文、ガチだるい」


「わかる」


 本田の言葉に全員が頷いた。

 課題は、1年〜2年の復習ワークとプリント、自主学習ノート1冊、読書感想文、自由研究が出されていた。

 黎は既にワークとプリント、自主学習ノートを終わらせて、読書感想文を書いていたが、これがまた面倒臭い。

 原稿用紙3枚以上は書かなければならないのだ。


「面白かったって感想じゃ駄目なのか?」


「それは流石にダメだろ」


「どこがぁとか書いとけば良くなぁい?」


「原稿用紙1枚にもならないよ、それ」


「せめて1枚は書きなよ」


 全員、課題に飽きてきたのか、集中力が無くなったようで手を止めお喋りを始めてしまった。

 時計を見ると、課題を始めてから二時間ほど経っていた。そろそろ、休憩にした方がいいかもしれない。

 部屋の端で座っている姑獲鳥を見ると、ニコリと微笑んでいた。


「お前ら、もう飽きたんだろ?1回休憩にしようぜ」


「よっしゃ!」


「やったぁ!」


「俺、飲み物買ってくるけど何かいる?」


「あ、俺も行くよ」


 みずー!


 お茶!


 なんか甘いのー!


 という言葉を背に黎と清水は、図書館の1階にあるコンビニへと向かった。



「なんか甘いのってなんだよ…」


「うーん、いつも本田が飲んでるいちごミルクでいいんじゃない?」


「それでいっか」


 お茶を3本と水を1本、いちごミルクを1本手に取る。


「何かお菓子とかも買う?」


「うん、糖分欲しいよね」


 そんな会話をしながら、摘めるように袋に入ったチョコとラムネを手に取って、会計を済ませる。

 自習室内は飲食可能なので、安心して食べられる。



 2人が自習室に戻ると、3人はわちゃわちゃとしていた。

 チラリと姑獲鳥を見ると、肩を竦めて苦笑いをしていることから、いつも通りだなと思った。


「何してるの?」


「ほら、飲み物とお菓子買ってきたから」


「悪い、ありがとな」


「ありがとぉ!お菓子何あるのぉ?」


「いちごミルク!天才かお前ら?」


 黎と清水から飲み物を受け取った3人は、すぐに喉を潤すように飲む。

 本田が飲みたかったのはいちごミルクだったようで、嬉しそうに飲んでいた。水分補給にしては、甘すぎる気もするけど…


「それで、何話してたの?」


「すごい楽しそうだったね」


 ティッシュの上にラムネを出しながら、問いかけると森の目が、キラリと輝いた。


「あのねぇ、これ!行こぉ?」


 そう言って見せたのはスマホの画面。そこには『花火大会』と書かれたポスターの写真があった。

 書かれている日時は明日。16時からお祭りが開催され、20時に花火が上がるようだった。


「花火大会?」


「お前らが出てった後に、森が思い出したように見せてきたんだよ」


「珍しくテンション高めだったな」


「だってぇ、お祭りだよぉ?屋台のご飯食べたいなぁ!」


「花火より屋台目当てか」


「花より団子」


 呆れたような声が出てしまうが、森らしい。


「俺らは良いんだけど、黎と清水は?」


「俺は良いよ。行きたい」


「やったぁ!姑山くんはぁ?」


「…俺は、そうだね」


 少し言葉に詰まった。

 現世の祭りだと分かっている。それでも、この前の出来事が脳裏をよぎった。

 あの時は、ミサキちゃんが居た。けれど、現世の祭りで頼る訳にはいかない。何かあった時は、自分で対処しなきゃ行けないが、不安が募る。

 

「姑山、大丈夫か?」


「嫌なら無理しなくていいんだぞ?」


 心配そうな声にハッとして顔をあげると、先程までの楽しそうな顔はどこに行ったのか不安そうな顔をしていた。

 慌てて首を振って笑顔を作る。


「ううん、大丈夫。俺も行くよ」


「無理してなぁい?」


「本当に大丈夫?」


「大丈夫だよ。ごめん、心配かけて」


 まだ納得してない澤田たちを宥めて、明日の予定を決めていく。


 視界の端にチラチラと映る影や光が鬱陶しい。

 はっきり見えているわけではない。それでも、ちらりと映るだけで気が散って仕方がない。

 だが、楽しい気持ちに水を差したくなくて、黎はため息を飲み込んだ。

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