21.百基五物語5
「生きてる?」
「むり…」
「今すぐ記憶消したい……」
「意外と元気そうでよかった」
「どこどう見たら、そんな反応になるのぉ?!」
やだこわいぃ!と、抱きついてくる森を何とか支えるが、体格差があるため、潰れるのも時間の問題だろう。
「でもあの日、俺らも怖かったけど、清水が一番怖い目にあってたんだな」
「そうみたいだね」
「うぅ、もう終わろうよぉ…」
「本田は終わる気無さそうだぞ」
どんな声だったのか?声から身長割り出せないか?清水の祖父母の家ってどんなところだ?等と詰め寄っている本田。清水は時折こちらを見ては、助けて欲しそうにしている。
あそこに割り込む勇気はないため、全力で見ないフリをしているのだが……
「でも、清水のご両親とか親戚たちは何か知ってるんだと思うよ」
「なんで言い切れるのぉ?」
「だって、用意周到過ぎだから」
盛り塩はまだしも、御札を手作りするわけにはいかない。それでも家にあったということは、わざわざ買ってきたのだろう。
それに、「無事でよかった」という言葉や、有無を言わさずに連れ出した所を見るに…
「多分、清水に何か憑いてたんだろうね」
そうじゃないと、説明つかないし。という黎の軽い言葉に全員引いた。引っ付いていた森もゆっくりと黎から距離をとった。黎的には、離れてくれて助かったところだった。もう少しで潰れていたので。
「……え、俺って取り憑かれてる?お祓い行った方がいい?」
百基五物語
5人目、姑山 黎
え?お祓い?うーん、今のところは大丈夫だと思うけど、してみてもいいかも?
大丈夫だよ、今日は変なの憑いてないし……いや、うるさ。いつも?…知らなくてもいいことってあるからね。
ほら、早く終わらせるために話すから静かにして。
短めに話すね。もう、日付変わりそうだし。
妖怪って、みんな信じる?……そう、河童とか座敷わらしとか。ウォッチはしないかな…見たことないけど、知ってるよ?友達にも、ならないかな。
妖怪についての話って意外と多いよね。この頃気になることがあるから、よく調べるんだけど、地域によってとか、世代によっても認識ってバラバラで面白いなって。
それで、調べてて怖いなって思った話するね。
今でこそ、色んなアニメとか漫画で親しみやすくなってるわけだけど、実際はそんなことないんだなぁって、この頃知ったんだよ。
なんで知ったかは、ちょっと聞かないで…色々あったんだよ。
てか、みんなだから話してるわけで、他の人に言ったら頭おかしいで終わるから…じゃなくて、そういうのいいから!
そ、それでね。勘違いしちゃダメなんだなって。恐れるために、侮らないために伝説とか伝承がある訳で、全てを知った気になって過信しちゃダメなんだなって。アニメでは、漫画では優しくて友好的でも、現実は違くて、人間の俺たちの考えなんて全然伝わらなかったり、相容れなかったりする。
人間も同じだけど、度合いが違うから、怖いなって。
だって、どんなに好きでも生きたまま海に引きづり込まれるのは嫌でしょ?
「全然いいよって言う特殊な人は、中々いないし、溺死って綺麗じゃないし、苦しいし?」
「そこなのか?」
「なんか違う気がするけどぉ…」
「こわ…怖い話?なんか、授業みたいだったな」
「でも、姑山くんらしいお話かも」
清水の話が思ったよりも怖かったため、そこまで怖くない話をするつもりだった黎だが、行き当たりばったりで話したため当事者にしか分からない怖い話になってしまった。
それでも、満足はしてくれたらしい。ダメ出しされたら、ガチで怖かった話でも話そうとしたが、下手したら清水よりも怖くなってしまうため、助かった。
「よし、これで全員話したな」
「いい時間だから、もうみんな寝るよ」
「ね、寝れないかもぉ…」
「暑いけど、くっついて寝ようぜ」
「え、嫌なんだけど」
結局、本田と黎が端に寝ることになった。窓側とドア側が1番怖いからという理由で。特に反対する理由もないので、大人しく横になっておく。
目を瞑り、数分くらいしてウトウトと良い眠気が来て、そろそろ意識がなくなりそうな時。階段をタッタッと上る音が聞こえた。無邪気な子供が上っているような足音。
眠過ぎて、確認する気にもなれずそのまま寝ようとしたが、扉をトントンと叩く音で目を開けた。
きのせいだと思い、数秒そのまま扉を見つめたがまたトントンと叩かれた。そっと、反対側を向くと、全員目を開いて黎を見ていたので、そっちに驚き悲鳴をあげそうになったが、何とか耐える。
隣にいた澤田に、開けるか聞くが全力で首を振られた。
その間にも扉はノックされ続けている。一定の感覚て、トントン…トントン…と。
やがて諦めたのか、階段を下りる音が聞こえた。
「居なく、なった?」
「多分?開けてみる?」
「絶対やめてぇ!」
「森、うるさい、静かにしろ」
「誰だったんだろ」
「分かんないけど、俺は眠いから寝るね」
そう声をかけてまた横になる。この状況で寝るの?嘘だろという声が聞こえたが無視だ。
やがてゴソゴソと、布団に入る音が聞こえやがて寝息が聞こえてきた。全員眠気には勝てなかったようだ。
全員寝たことを確認したあと、黎も眠りにつく。
完全に意識が落ちる直前に、子供の笑い声が聞こえたような気がした。




