19.百基五物語3
「いや、うるさ!」
「それどころじゃないって!え、どうするの?」
「どうするもないだろ」
「でもでもぉ!このままじゃ危ないよぉ?」
知りたくない事実に気づいてしまった黎たちは、夜にも関わらず昼のような大騒ぎ。当事者の澤田は青い顔をしたまま俯いてしまった。
「澤田、大丈夫か?」
「あ、いや、大丈夫では無いな…」
「だよな」
「でも、どうする?警察に言う?」
「いや、姑山の見間違いっていう線も捨てきれない」
「じゃあ、このままぁ?怖くない?」
「本田の言うとおり、俺の見間違いも有り得る。だから一応澤田のご両親に言っておいて、休み明けに先生にも言っておこう」
「それがいいな。何かあったら即通報でもいいし、後で澤田の言ってた事件調べてみるか。顔写真あったんだろ?それ全員頭に叩き込んでおくってことで」
子供である黎たちに出来ることは大人を頼ることのみ。それでも自衛は大切な為、犯人の顔を全員が覚えておく必要がある。
そして、なるべく1人で行動しないように全員で澤田に言い含めた。
「なんか、悪いな」
「はぁ?なんにも悪くないけど?」
「そうだよぉ?心配するのは当たり前じゃん!」
「そこはありがとうが嬉しいな」
「みんな心配なだけだから、謝らなくていいよ」
「そうだな…ありがとうなお前ら」
先程よりも顔色が良くなった澤田は、照れくさそうにお礼を言った。
百基五物語
3人目、本田 義人
よし、それじゃあ気を取り直して怖い話行くか。……は?止めないが?怖い話は怖い話で相殺できるだろ。大丈夫だって、人怖じゃないから。
いやいや、、まだ2人しか話してないし本格的な怖い話も欲しいだろ?あーあー!聞こえない!黙って聞け!
と言っても、俺の話せる怖い話もそこまでないんだよな……大体、聞いたりそういうサイトを見たりで取り入れた話だし、お前らを満足させる怖い話か……
あ、そういえば学校であった話なんだが、知ってるか?
ほら、この前全校集会で黙祷あったじゃん?1個下のやつが死んだって話。それそれ、なんかその後からそのクラスで変なこと起こってるんだと。
肩を叩かれたと思って振り返ったら誰もいなかった。とか、名前を呼ばれて返事したら誰も呼んでなかったとか。しかもその声が、その死んだやつの声にそっくりで異様に必死な声だったって噂なんだよ。
しかもこの前なんて、机に飾ってあった花瓶が倒れたらしい。風も吹いてないし、授業中だったからその机にぶつかるはずもないしで倒れる訳がないんだよ。そのクラスの奴らはもう怖がって、授業どころでは無かったらしい。
「その話、俺もバスケ部の後輩に聞いた。ガチでいきなり花瓶が倒れたって」
「僕も聞いたよぉ。他のクラスの子だったんだけど、凄い悲鳴が飛び交ってたって言ってたぁ…」
「じゃあ、ガチの話なのかよ…」
本当にあった話を淡々と話す本田が怖いが、身近でそんなことが起こっていた事実に全員恐怖していた。
関わりは薄いが、同じ学校の子の話は心にくる。
「てか、本田。なんでそんな詳しく知ってるの?」
「俺の情報網舐めるなよ」
「カッコつけてるけど、カッコ良くは無いぞ」
「え、酷…」
そんな軽口を叩きながら教えてくれたのは、至る所で噂になってて、その都度聞いて回ったらしい。本田らしい情報収集の仕方に苦笑いを浮かべた。
(こんなに噂が回っているのに、1度もその姿を"視た"ことはないな…)
こんなにも派手に動いているなら、見かけたことくらいあるはずなのに、それらしき人は見た事ないことに首を傾げた。
(そういえば、死んだ子目線になるけど似たような話を聞いた?見た?気がするような…)
本田たちのわちゃわちゃをBGMにしながら、記憶を辿って思い出そうとする。
(確か、前の話は……『本当にあったかもしれない話』に掲載されていたっけ?)
本田に教えられたアカウントで見た話。そこには、黎の事に関してらしき話もあった。
あのアカウントは無視してはいけないかもしれない…と本田たちを見ながら思うのだった。




