18.百基五物語2
森の話も終わり、次は澤田の番。森の話が思ったよりも怖く無かったため、どうしようか悩んでいるようだった。
「決まったか?」
「いや、何話そうか困ってる」
「僕みたいな話でもいいんだよぉ?」
「森の話はまた別次元の怖さだから…」
「何か食べる時は、注意書き読まなきゃって気持ちになった」
自分たちも無関係じゃない話程、怖いものは無い。それに、歯が欠けるのは嫌だった。
「よし!決まった!」
数分悩んでいた澤田が顔を上げた。どうやら、話す内容が決まったらしい。
百基五物語
2人目、澤田 千秋
俺の話もそんなに怖くないかもなんだけど、それでもいいか?
いいのか、ありがとう。いや、話が聞ければなんでもいいって、本末転倒だろ…
じゃあ、話すけど……俺が小4?か小5くらいの時の話なんだけど。俺ってこんな見た目じゃん?別に睨んでるつもりはねぇけど、睨んでるって言われるし怖がられるしでろくなこと無かったんだよ。
…うわ、やめろ!わかってるよ!お前らと出会ってよかったよ!
って、そうじゃなくて、別にセンチメンタルになってるとかじゃねーから!違うから!ただ、その小学生の頃、近所のお姉さん?かな?多分年齢的にはお姉さん。その人がよく話しかけてくれたんだよ。
「おはよう」とか、「おかえり」とか?なんかそんな感じ。初めはなんて返せばいいかわかんなかったから会釈だけしてて、でもだんだんと普通に返すようになって…恥ずかしい話だけど、嬉しかったんだよ。話しかけてくれる人なんて居なかったから……やめろよ!ジリジリ寄ってくんな!話が進まないんだよ!
はぁ…お前ら話聞く気あるか?…あんのか、ならいいけど…
あー、なんだっけ?そのお姉さん、色々端折るけど捕まったんだよ。捕まった理由は、誘拐と監禁。うわ怖っとか思って、確かに何度か家でお茶していく?とか、学校どうなの?とか聞かれてたけど、まさかそんな事してるとは思わないじゃん?母さんにこの人に話しかけられたことあるって言ったら、母さんも父さんも大慌てっていうか、色々聞いてきて。
「何話したんだ?」とか「いつの話だ?」って。なんでそんなに慌ててんの?とか思ってたけど、今にして思えば慌てるよな。色々話して、母さんと父さんは警察に行ったりして話聞いてきたりしてたんだよ。
それであとから教えてもらったんだけど、そのお姉さんが誘拐と監禁してたのって、俺みたいな見た目の不良だったんだと。
「私があの子たちを立派に更生させて見せる!」
とかなんとか、言って捕まったって。警察に捕まるのが遅かったら、多分俺がお姉さんに捕まってたんだろうなぁって話。
怖いだろ?
「…こっわ!!」
「え、は?無事でよかったな!?」
「本当に無事でよかったぁ!」
「人怖じゃん!なにそれ怖い!」
「いや、俺もその話聞いて人間不信になるところだったよな…」
そう言って遠い目をする澤田。
「俺たちがいるから!」
「澤田が良い奴ってみんな知ってるから!」
「変な人について行っちゃダメだよぉ?」
「俺は子供か!」
そう言って、抱きしめたり頭を撫で回したりしてやった。照れているのか、やめろと言いながらも楽しそうな姿に水を差しちゃいけないと思いつつも、気になることがあったので、澤田に尋ねる。
「澤田、その話ってニュースになったよな?」
「全国ニュースになったんじゃねっけ?」
「今でも捕まってるのか?」
「え、どうなんだろ?なんで?」
「いや、そのニュース俺も覚えてるというか、なんか逮捕された時すごい笑ってて不気味だったから記憶に残ってるんだけど、顔写真載ってたじゃん?この前学校付近で似たような人見た気がしたんだよね」
「もしかして、姑山くんがじっと見てた人?」
「なんか、水色のワンピース着てた人でしょぉ?」
「そういえば、じっとこっちを見てた気がしたが、もしかして澤田を見ていた…のか?」
「……まじ?」
その瞬間全員の背筋が凍りつき、夜にも関わらず大きな悲鳴をあげたのだった。




