15.お泊まり会
海での出来事から数日後…
黎たち4人は、澤田の家に遊びに来ていた。
広い庭がある一軒家。家の中は白で統一されており、清潔感が漂っている。
「よく来たな!」
嬉しそうに出迎えてくれた澤田を見て、本田と森はもみくちゃにし始めた。
「澤田、お前聞いてないぞ!?」
「澤田くんってお坊ちゃんだったのぉ?」
「いや、別に違うけど!?」
澤田をもみくちゃにしているはずが、体格の良い2人に挟まれて本田が潰されていた。その様子を少し離れたところで清水と2人見守っている。
「あらあら、元気ねぇ?」
奥から女性の声聞こえた。全員ピタリと動きを止め声の方を向くと、白いTシャツの上にジージャンを着て、短パンを履いた金髪の女性がゆっくりと黎たちの方へ歩いてきた。
声はゆったりとしているのに対し、バチバチのピアスに濃いめの化粧をしていて、一瞬脳がバグってしまいそうになっていた。
「姉ちゃん、これから出かけんの?」
「ちょっと呼び出されちゃったの、行ってくるね。君たちは仲良く遊ぶんだよ〜」
パチリとウインクを決めて出かけていくのを見送ると、今度は全員で澤田に詰め寄った。
「何あの人!」
「姉ちゃん??お姉様??」
「声と顔が合ってない!!バグる!」
「すっっごい人だったよぉ?」
「お前ら落ち着け!!」
ひとしきり騒いで満足した4人は、澤田に促されるように家の中へと入っていった。澤田の部屋は2階にあるらしく、階段を上っていく。
広々とした部屋は、男5人が居ても窮屈にはなら無かった。
「なんか、澤田らしい部屋だな」
「どんな部屋だよ…」
「いや、凄くわかる」
「うんうん、澤田くんって感じするよねぇ」
「澤田、これ読んでいい?」
「良いぞ、好きに読め。…おいこら、黎を見習え!聞く前に物色すんな!」
黎は、気になる本を見つけて手に取る。澤田に許可を貰うと読み始めた。本田はベッドの下を覗き込んだり手を伸ばしたり、森は本棚から漫画を取り出して読み始め、清水は飾ってある賞状などを興味深そうに見ていた。自由すぎる4人に呆れるが、嫌な気持ちにはならない。きっと信頼しているからだろうと思うと、なんだか照れくさくなったのだった。
「今日の夕飯、カレーだけど食えるよな?」
「大盛りで」
「ルー多めで」
「僕も大盛りで〜」
「食べれるよ、ありがとう」
「黎、お前だけだ……」
抱きついてきた澤田を労わるように背を撫でると、抱きしめる力が強くなった。その様子を見た3人は慌てて弁明するが、澤田はジト目で「凄く辛くしてやる」と脅していた。
「そういや、夜って何やんの?」
「ゲームでもするか?」
「マリカが良いなぁ」
「姑山、マリカやったことあるか?」
「澤田に何回かやらせて貰った」
「なら、マリカにするか」
夜の予定が決まりそうになった所で、本田がすごく綺麗な挙手をした。しかも、満面の笑みで。
あ、これはダメなやつ…と全員が思った。この満面の笑みの本田が思いつくのは突拍子もないことばかり。だから、全員本田から目を逸らした。
「そ、そうだ、お菓子!渡してなかった」
「ほ、本当だ〜!忘れてた」
「これ、手土産。と言っても、俺は少しお金出しただけだけど」
「いや、凄い嬉しいよ。ありがとうな」
施設では必要なものがある場合は、買ってもらえる。が、それだけだ。自分で自由に使えるお金はなかった。それをウカやミサキに漏らしたら、お小遣いをくれるようになった。
初めは貰えないと言ったのだが、ミサキが趣味で作っているミサンガやブレスレットを販売して得た収入らしく、私は特に使いませんのでと、にこやかに渡された。圧が強かったのだ。流石に何もせずに貰うのもと思ったので、屋敷へ行った時はミサキや式神たちの手伝いをして、その報酬として貰っている。
皿洗い10円、洗濯たたみ10円、ご飯の手伝い50円、ウカの相手100円…等々。完全に子供のお手伝いだが、気にしない。
神様の相手をして貰っていいものかと思ったが、ウカからもこの頃渡されるようになったので、開き直っている。
だが、本当に必要な時だけ使うことにしているので、その機会はあまり訪れていない。4人には、この頃知り合った人のところでバイトみたいなことをしていると伝えてある。いきなり黎が、お金を持ち出したら不審がられるので。(実際、そのバイトについても不審がっているのだが、黎はそれに気づいていない。)
和やかな会話をしている視界の端で、挙手をしたまま微動だにしない本田。何も言わずにただ黎たちを見つめるだけ。圧に負けて、溜息をつきながら本田を見て、発言を促すとニッコリと笑って言った。
「百物語をしよう!」
その言葉を聞いた3人は、家が揺れるくらい大きな声で……
「「「却下!!」」」
と叫んだのだった。




