12.海
微ホラー?注意
「海だー!!」
夏休みに入ったすぐの週、黎はミサキに誘われて姑獲鳥と共に海に来ていた。
真っ白なワンピースに水色の羽織を着たミサキは、色々な人の視線を集めていた。頭にはリボンの付いた麦わら帽子を被り、白い髪が夏の暑い日差しに反射してキラキラ輝いている。
「あまり遠くに行くでない」
「はーい!」
珍しく実体を持っているウカがミサキに注意するが、キャラキャラと笑いながらあまり聞いていないようだ。
ウカの姿はいつもとは違っていて、長い髪は後ろでしっかり縛られている。顔立ちも似ているようで似ていない。頭がバグりそうだが、雰囲気はいつも通りの為、特に気にはならなそうだった。
「あれは聞いていないな」
「楽しそうですね」
「お前も行ってこい、我はここに居る」
「分かりました」
黎もミサキの元へ駆け出す。少しだけ後ろを見ると、姑獲鳥はウカと共に待つようだ。こちらにゆっくりと手を振っていた。
「黎くん!気持ちいですよ!」
「あんまり深いところ行かないでね」
「はーい!」
2人で浅瀬で遊んでいると、遠くの方でバシャンと水に落ちる音がした。そちらに目をやるが、何もいない。しかも、気づいているのは黎とミサキだけのようで、他の人たちは気にせす遊んでいる。2人、目を合わせて首を傾げる。
「何の音だったんだろ?」
「何かが落ちる音、でしたよね?」
「でも、どこから落ちるの?崖とか岩礁はこの辺りには無いよ」
「そうですよね…分からないので、一旦ウカ様のところに戻りましょう」
「わかった」
2人で考えていても埒が明かないので、ウカや姑獲鳥も聞こえたかどうかを知るために、1度海から上がることにした。
ウカたちの元へ行くと、何やら深刻そうな顔をしていた。姑獲鳥の顔も珍しく険しい。
「ウカ様!何かありましたか?」
「帰ったか。いや、変な気配があったのだが、消えたな」
「変な気配、ですか?」
「イヤナ、ケハイダッタ」
「さっき、海で遊んでいたら何かが海に落ちる音はしました」
「周りとか見たんですけど、何かわからなくて…ウカ様たちには聞こえましたか?」
「聞いてない」
「ワタシモ、キイテナイ、ヨ」
空耳だった可能性が出てきてしまい、2人してなんとも言えない顔になった。ウカたちも聞こえていたのであれば、黎は別として人間には聞こえない周波数の音だった。で説明が着くのだが、聞こえてないとなると、黎とミサキの気の所為説が濃厚になってしまう。
「ウカ様、気配の方は危ないものですか?」
「いや、そこは平気だろう」
「うーん、ならいっか!」
「何もよくないと思うけど、仕方ないよね」
音の出処も、気配の行方も分かりようがないのであれば出来ることはない。
「ウカ様も海に入りましょ!」
「我は行かん」
「え〜…行こうよ〜」
「それよりも、水分を摂れ。人の子、お前もだ」
「はーい」
「ありがとうございます」
その後も、こまめに水分を与えてくれたり、塩飴をくれたりと、意外と世話焼きな一面を見ることが出来て、楽しい一時を過ごしていた。
ミサキと黎が遊んでいたところから数m先で、人が海に引き摺り込まれていたことも知らずに……




