04.珍しい組み合わせ
のんびりと休憩をしているミサキとウカ。ふと外を見ると、先程よりも濃い雲が空を覆っている。
「一雨来そうだな」
「はい、窓閉めちゃいますね」
換気のために開けていた窓を手早く閉めていく。ウカが言った通り、ポツリポツリと降ってきたかと思えばザーッと叩きつけるような雨に変わった。
遠くの方でゴロゴロと鳴っている。音が聞こえるだけで落ちてきそうには無いが、怖いものは怖いので素早くウカの元に逃げ込む。ウカはミサキを優しく抱きしめると、音が聞こえないように耳を塞いでくれた。
「この屋敷に居れば問題は無い」
「分かってるんですけどぉ…」
うるうるとした目でウカを見上げるミサキを見て、
仕方ないというように頭を撫でた。
話し声で、意識が引っ張られる。いつの間にか眠っていたらしい。未だにウカの腕の中にいるミサキは少し身じろぐと、宥めるように背をポンポンと叩かれた。眠くてトロンとしている目を開けると、ウカと式神が話しているのが見える。覚醒しきっていない頭では何を話しているかまでは理解出来なかった。が、『雨』や『夏』、『女神』という単語だけは聞き取れた。
「なんのおはなし?」
「起きたのか?」
「うむぅ…」
舌っ足らずな言葉に寝惚けているとわかる返事。思わず笑うと、ミサキはパッと目を開いてウカを見た。そして先程までの言動を思い出したのか、みるみる顔が赤く染っていく。羞恥心から逃げ出したいのか、ウカの腕の中でワタワタと動き出す。だが、すっぽりと抱えられている為逃げ出せる訳も無く、やがて諦めるように動きを止め、顔を手で覆ってしまった。
「わ、忘れてください!」
「断る」
「いや!恥ずかしいから忘れて!」
「愛いではないか」
「ウカ様のいじわるぅ…」
うぅ〜…と唸るように抗議するが逃げ出すことも、離すことも無かった。
「申し訳ありません。お話を再開してもよろしいでしょうか?」
ウカとミサキのやり取りを微笑ましいものを見る目で見ていた式神だが、この2人の戯れに終わりが無いことを知っている為、遠慮なく声をかける。
「良いが、許可はせんぞ」
「後々面倒事になりますよ」
「許可をしても面倒、しなくても面倒とは…」
「あの、なんのお話ですか?」
不機嫌を隠しもしないウカに、ろくな事では無いなと思いながらも問いかけると、苦虫を噛み潰したような顔で教えてくれた。なんでも、夏の女神様とアメノカミ様がこちらに向かっているいらしい。珍しい組み合わせに首を傾げる。
夏の女神様である筒姫様は基本的に1人を好んでいる。そしてとても自由な御方である。現世で楽しくお買い物をした帰りにこの屋敷に寄ったり、暑すぎるという理由で外の国の涼しい地方に行ったりと、本当に頭を抱えたくなるほど、自由なのである。
ここ数年は、人の子達に習いスマホやパソコンなどでネットを使いこなしているそうだ。去年見せてもらった時には、【この夏おすすめスポット!】や【女神が教えるおすすめ神社】などを紹介していた。ウカと2人して遠い目になったのは、いい思い出である。
「今年は、何をやらかしてくれるのでしょうか…」
「会いたくないのだが…」
春の女神である佐保姫様にも、振り回されたばっかりだと言うのに、それ以上がこれから会いに来ると考えると頭が痛くなりそうだった。
「それにしても、アメノカミ様まで一緒なんて、珍しいですね」
アメノカミは名前の通り、雨の神様である。黒雲を呼び、桶と柄杓を使って下界に雨を降らせる方で、神と呼ばれているが、妖怪と認識している者も多いのだった。見た目からしても妖怪チックなので、仕方ないと言えば仕方ない。
この方は筒姫様とは正反対の性格で、基本的には仕事の時以外は自らの神域を出たりしないのだ。それなのに、一緒に来るとは筒姫様に強引に連れ出されたか、あるいは何か厄介事があるか…
「うーん、今年の夏も大変そうですね」
「勘弁して欲しいものだ」




