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20.不機嫌

「そろそろ良いか?」


 ミサキが黎と仲睦まじく話してるのを見て、痺れを切らしたウカが不機嫌そうに声をかける。

 黎は今、自分が置かれている状況を思い出し、両手で顔を隠すが耳まで赤くなっているため隠せていない。そんな可愛い姿を見て、ミサキはクスクス笑うがそれを見てウカの機嫌が余計に悪くなる。


「ミサキ」


「!ウカ様、ごめんなさい。そろそろ行きましょうか」


「え、何処行くの?」


 素直に謝り、天狗たちにも声をかけて歩き出そうとした時、黎は不思議そうな声で問いかける。


「うーん、探し物をしてるんです」


「空から落としたの?」


「それは、ちょっと違うんですけど」


「…探す宛はあるの?」


「一応あります」


 だから大丈夫です。と笑顔で答えるミサキに余計になる。


「でも、今からの時間子供1人は危ないよ」


「ウカ様たちが居るから大丈夫」


「俺しか見えてないのに?」


「あー、確かに」


 腕を組んでウンウン唸りながら悩むミサキだが、前回現世に来た時もこの時間帯に歩いていたことを思い出した。チラチラと見られてはいたが、堂々と歩いて居たからか、声をかけられることはなかった。危ないと言われても、ウカたちが居るし、怪我をするようなことも無いだろうと自己完結して、やっぱり大丈夫です。と黎に伝えた。

 何がやっぱりなのかさっぱり分からない黎だが、これ以上引き止めるのは無理そうだと、ミサキの後ろを見て判断した。

 紅燕は無表情のまま黎を見ているが、ウカは見るからに不機嫌オーラを発しているし、紅と朱も笑っているように見えて目が笑っていない。


「(セコム怖…)わかった。じゃあ、気をつけてね」


「ありがとうございます、黎くん!黎くんも気をつけて帰るんですよ?」


 どう考えても年下の子にそんなことを言われるのは照れくさかったが、素直に頷いた。

 それを見て、またいい子という風に頭を撫でようとしたミサキだが、ハッとしたように両手をホールドアップしたまま後退りをした。


「そ、それじゃあさようなら、黎くん」


「あ、うん、さようなら」


 ウカの手を取り、逆の手を振りながら走り去っていくミサキ。その姿が見えなくなるまで見つめていた。

 とても不思議な体験だった。まだ高揚しているようで、足元がふわふわしていた。

 誰かに話したいがきっと信じてくれないな。と一人苦笑しながら、黎も帰路に着いた。



「ウカ様、ご機嫌直してください」


「我はご機嫌だが?」


「そんなお顔で言われても説得力皆無です」


 ウカは元々あまり表情を動かさないので分かりづらい。本当に分かりづらいので、天狗たちはどこが普段と違うのだろう?と首を傾げるばかり。だが、付き合いの長いミサキはウカのほんの少しの変化も見逃さない。この顔は完全に拗ねた子供の顔である!!と胸を張って答えられるくらいだ。


「とても不思議でしたね。あたしたちが視える方が居るなんて」


「危ない気もしますが…」


「そうですね、でもどうしようもないので何とも言えない…」


「有用性はあるであろう」


「うむ、それは否めない」


 紅、朱、ミサキは黎のことを少し心配そうに話していた。後ろにいたウカがボソリと呟いた言葉に紅燕は肯定した。その言葉を聞いて、びっくりしたかのように勢いよく後ろを向く。


「ウカ様、だからお名前を聞いたんですか!?」


「さてな」


「ウカ様、誤魔化さないでください!ダメですからね!もう絶対あんなことしちゃダメです!」


 確かに上手く使えば便利だろうが、毒にも薬にもなる存在なことはミサキにもわかった。だが、それとこれとは話が違うため、ウカにキャンキャンと文句を言う。残念ながら、ウカはミサキの文句を右から左に聞き流しているため、響いていない。

 もう!とプリプリ怒りながら前を向き歩くミサキを見て、またボソリと呟いた。


「そんなにあの人間が気に入ったのか」


「ウカ様が1番ですよ?」


 目をぱちくりさせながら呟きに被せるように返答する。心の底からなぜそんなことを聞くのだろう?という疑問が湧き出てきたが、ミサキの言葉で機嫌を直したウカを見て飲み込んだ。本当にちょろい神様だなという思いも一緒に飲み込んだ。

 ミサキにとって、どんな出会いをしてもウカが1番であることは変わりない。多少はあの人間について気になるところではあるが、今は気にしている暇もないため、先を急ぐ。


 (あれ?でもなんで黎くんのところに落ちたんだろ?)


 縁の先を望んだのに、その先が黎だったことに首を傾げながらも、まあいいかと気持ちを切り替え自分に繋がれている縁を辿り、歩いていた。

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