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21.廃病院

「この先だと思うんですけど…」


 縁を辿って着いた先は、山の中の廃病院。またしてもお化けが出てきそうな雰囲気のところでミサキと朱は1歩後ずさりしてしまう。


「あの古民家と同じくらいの古さでしょうか?」


「うむ、所々荒らされておるな」


「人間たちが肝試しにも来たのでしょう」


「え、てことは…」


「お、おばけ出ます!?」


 きゃー!と叫びながら身を寄せあう2人を見て、失敗したという顔をする紅。慌てて2人を宥めるが、既に目には沢山の涙が溜まっていた。


「大丈夫ですよ。お化けは出ませんし、人間の肝試しなんてお遊びのようなものですから」


 それはフォローになっていないんじゃないか?とウカは離れたところで聞いて思っていたが口には出さなかった。

 だが、と廃病院を見て考える。確かに多くの人間が訪れているようで沢山の縁が見える。何本か太い縁があり、絶対に逃がさないという念も見えるが、スルーでいいだろうと知らないフリをした。人間共の自業自得である。

 窓や隙間からこちらを伺うものたち、基お化けが居るがこれも口に出さない方が良いだろうなと、怯える2人を一生懸命宥めている紅を見て思った。


「おい天狗、簡易的で良い。結界を張れ」


「承知仕った」


 小さな声で紅燕に指示を出す。天狗が使える結界は様々あるが、今回は目隠しの結界。文字通り目隠し。見なくていいものを見えなくするだけの簡単な結界。あちらからはこちらが見えなくなるように。こちらは、ウカと紅燕は特に問題ないが、子供達がお化けを見なくて済むように。ウカの優しい気遣いである。


「そろそろ良いか?」


 紅燕が無事に結界を張ったのを確認してから、3人に声をかける。

 泣きそうな顔をしている2人と困った顔をしている1人。はぁと小さく溜息をつき、ミサキを抱き上げる。紅燕もウカを真似て朱を抱き上げようとするが、全力拒否されているのを横目で見ながらミサキへと向き直る。


「怖いか?」


「お化けはいつだって怖いです」


「なら帰るか?」


「帰りません!」


 被せるようにして言うミサキを見て、小さく笑う。


「なら行くぞ、捕まっていろ」


 小さな体で精一杯ウカに抱きつくミサキ。そんなミサキの背をポンと叩いてから歩き出す。

 朱は紅に手を引かれ、その後ろでは周囲を警戒しながら歩く紅燕。

 廃病院の中に入ると、気温が下がったかのように感じる。とても静かで、風の音ひとつ聞こえない。足音も聞こえない。ウカたちは意図的に足音を消していた。

 ミサキはウカの腕の中で、だから抱き上げられたのか、と1人納得していた。なぜ足音を消しているのかは分からないが、ミサキには出来ないことなので、もし下ろされていたら1人ペタペタと足音を出していたことだろう。それはそれでとても恥ずかしい!とウカの肩に顔を埋めた。

 想像して恥ずかしくなったから顔を埋めたのだが、ウカはミサキが怖がっていると思い優しく頭を撫でながら辺りを見渡す。

 一般的な病院の造りだろう、1階が受付と診察室。2階から上は病室があるのだろうと当たりをつけて歩き出す。

 一つ一つ見て回ってもいいが、手間でしか無いため、ミサキに聞きながら縁を辿る。


「そこの、診察室?検査室?の所に伸びてます」


 扉が閉まっていた為、片手で開けるとすんなり開いた。中には検診台があるだけで、とても綺麗だった。まるでそこだけ時間が止まっているかのように、椅子にも壁にも、床にすら埃一つ落ちていない。


「綺麗すぎではありませんか?」


「廊下との差がありすぎるかと思います」


 紅と朱も中を覗き込んで不思議そうに声をあげる。


「次に行くぞ」


「次はここの廊下を真っ直ぐ行って、突き当たりを左に曲がったところです」


 ミサキが言うように進むと、辿り着いた場所は手術室。


「手術室?」


 病院であるため、手術室があるのはおかしくないが、嫌な予感がしてウカは立ち止まる。後ろにいた天狗たちはいきなり止まったウカを不思議そうに見る。ミサキも心配そうに声を掛ける。


「ウカ様、大丈夫ですか?」


「問題は無い」


 他の部屋の扉は空いているのに、またここは閉まっている。ゆっくり取っ手に手をかけ扉を開けると、そこは真っ赤に染まっていた。


「ヒッ…」


 驚いたミサキと紅、朱は小さく悲鳴をあげた。

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