18.視える人間
微ホラー注意
俺は、昔から不思議なものが視えていた。幽霊とかもそうだけど、それよりももっとおかしなもの。
物心ついた時には、親は居なかった。だから、そういう子たちが集まる施設で暮らしていた。下は0歳から上は18歳までの子供たち。施設の先生たちは優しくて、美味しいご飯も暖かい布団もあって特に不自由はしなかった。
だけど、よく分からないものが視える俺は、何かと問題児扱いされてきた。物が壊れたり、なにか無くなったり……そういうのが俺の周りで、俺の周りの人ならざるモノたちが起こすから、俺がやったと思われる。初めは、違うって言ってたけど今はそれすらもめんどくさい。黙って謝ればそれで終わり。それに、こんなものが視えるなんて言っても、きっと誰も信じてくれないから。
その日も、そいつらはいた。施設の子供たちに混ざって走り回ってたり、朝ごはんを勝手に食べてたり、肩が重いって言ってる職員さんの背中にしがみついていたり…本当に色々、沢山いる。こんなに目立つのになんで分からないのだろう?とか考えるけど、視えるか視えないかの違いなんだろうなって何となく思った。
「黎、聞いてるか?」
「え?あ、ごめん聞いてなかった」
「またかよ、大丈夫か?」
施設にはあまり居たくないから、休みの日は朝ごはんを食べたらすぐに出かける。図書館にでも行こうかなとか思ってたけど、同級生たちが遊んでたからそれに混ぜてもらった。
だけど、その同級生の1人の顔によく分からない黒いのがベッタリと付いている。それに気を取られて話を聞いてなかった。よくある事だから、そいつらも笑って許してくれるけど、俺的にはそれどころじゃない。
その日は、それが気になって全然遊びに集中出来なかった。しかも、施設に帰る途中に幼い子供とぶつかりそうになってしまったし……
真っ白な髪の毛にピンクのワンピースを着た、まだ幼稚園児くらいの女の子。1人だったから心配して声をかけようとしたけど、その子の後ろに絶対に人間じゃないモノたちがいるのを見て、声をかけられなかった。
後日、黒いのが付いてた同級生はあの日遊びに出ていなかったことを知った。俺以外にも見えてて、絶対遊んだ!って口々に言うけど、そいつが言うには、その日は家族と、県外にいる祖父母の家に行ってたから、絶対有り得ないって話。俺たち誰と遊んでたんだ?ってみんなで震えたけど、怖いから忘れることにした。
多分、黒いのが付いてたんじゃなくて、本人じゃないから顔がわからなかっただけなんじゃ無いか、と考える冷静な自分がいた。
「じゃあ、またな」
「気ぃつけて帰れよ!」
「お前らもな!」
なんて声をかけながら、一緒に帰ってた同級生たちと別れる。今日は先生たちの用事で午前授業だった。帰りたくないなとか思いながらとぼとぼ歩いてると、突然女の子の悲鳴が聞こえた。慌てて辺りを見渡しても、何も無い。気のせいかと思って、また歩こうとしたら自分に影が差し込んできた。太陽は頭上だし、影になるような物もないから変だなって思いながら上を見ると、女の子が降ってきてた。
びっくりはした。したけど、それ以上に綺麗でまるで天使かと思ったことは、一生内緒にしたい。だってセコムがあんなに怖いなんて思って無かったから!
不思議な風のおかげで、怪我なく女の子をキャッチしたけど、多分動揺してた。それもすっごく。
「親方、空から女の子が……?本当にあるんだ」
だって絶対言わなきゃって思ったし!あるわけないのもちゃんとわかってるし、親方って誰だよ!とか思ったけど……だって、こんな、こんな経験初めてで、今までただ視えるだけ、触れるわけもないし会話できるわけもない。視えない方がきっといいのもわかってる。関わらない方がずっと幸せなのもわかってる。
でも、この日俺の運命は大きく変わったんだと思う。
神の使いである、この白い狐の少女のおかげで……




