11.縁結び
「さて、始めるとするか」
見るからに上機嫌になったウカは、佇まいを直し紅燕たちに向き直った。
「宇迦之御魂神様、先ずは何をするのでしょう?」
「縁を繋ぐとは、どのようにすればよろしいのでしょうか?」
朱と紅が疑問を投げかける。
縁結び、それは神によってやり方は様々。道具を用いる神や、もはや力任せでは?というやり方で行う神もいる。有名な恋の神様である恋命様は弓矢を使ったりする。さて、ウカ様はどうするのかと言うと簡単だ。赤い糸を使う。
運命の赤い糸という言葉を、1度は耳にしたことがあると思うがそれである。普段は見えない赤い糸を可視化させて結ぶ。ただそれだけで縁結びの出来上がり。
1人につき、必ず1本はある赤い糸。人間にも妖怪にも神様にも。それを繋ぐため、ピンポイントで縁が結ばれるのである。
それを噛み砕いて、ミサキのありったけの語彙を用いて紅と朱に説明すると、2人は不思議そうに、だがとても興味深そうに目をキラキラさせて期待していた。
「ウカ様、誰の糸を使います?」
縁を繋ぐには双方の糸が必要なため、ミサキたちの中から1人選ばなくてはならない。
「でしたら、私が」
「却下だ」
紅燕が名乗り出たが、すげなく断られる。
シュンと落ち込む紅燕の背を撫でる紅と朱だが、目は期待したようにウカに向けられている。
だが、一切見ることはなく真っ直ぐにミサキを見つめる。
「ミサキ、お前に結ぶ
良いな」
「はい!ウカ様」
決定事項のように告げるが、何の問題も無い。初めからウカがミサキを使うことなど分かっていたからだ。
ウカがミサキの左手を掬うように取ると、2人を囲うように光の輪が現れる。
淡く優しい色の光。ウカの言ノ葉に呼応するように、赤、黄、白、黒、青とグラデーションのように変わっていき、また赤に戻る。見蕩れるように光を見ていると、左手の人差し指に赤い糸が巻きついているのが見える。これがミサキの赤い糸。
そしてどこから現れたのか分からない宙を漂う赤い糸。その2つを丁寧にウカが結んでいく。
結ばれた感覚があった。縁が繋がれた感覚があった。初めての経験。だが、この感覚を知っていた。
結び終わると、光の輪は解けるように消えていく。
左手を見ると、人差し指に結ばれている赤い糸。
「え、終わったの?」
「何が起きたのでしょうか?」
先程のことも、この繋がれた赤い糸もミサキと繋いだウカにしか見えないようで、天狗の親子は首を傾げていた。
「えっと、多分繋がりました!」
左手を掲げて見せるが本当に見えていないようで、じっと穴が開くかと思う程見つめている。
「本来なら見えん糸だ、一時的にミサキは見えてるがお前らは無理だろう」
その言葉にガックリと肩を落とす3人に乾いた笑いが出た。
「皆さん、落ち込んでないで行きますよ」
ウカと手を繋ぎ、出発しようと声をかけると慌てて立ち上がる。
この縁がどんなものかは分からない、だが少しワクワクしている。
「さて、調査開始です!」




