09.妥協と諦め
そもそも、そんな縁を繋ぐことが出来るのだろうか?
妖怪又は神と人間の縁。伝承や古いお話にはそのような縁もあるが、現代では全くと言っていいほど見ない。
信仰などが失われたりしている所為もあるのだろう。見えるものも少なくなって来ているし…
「ウカ様、縁は繋げるのですか?」
「繋ごうと思えば、いくらでも繋げる
それが良縁か悪縁かは、我には関係ないことだからな」
「おぉ!ウカ様、すごいです!」
手放しで褒められたら悪い気はしない。素直で可愛いミサキの言葉にウカは癒されていた。(顔には出ていないが)
「じゃあ、わざわざ攫った人と縁を繋ぐんじゃなくて、攫われた子と縁を繋いだらどうですか?」
攫った人と縁を繋いで辿り着いても、私たちには手が出せない。こともないのだが、出さない方が良い。
その為、攫われた子と縁を繋ぐことが出来、尚且つその子たちが生きているのであれば、こっそりお家に戻してあげる事など造作もない事だとミサキは考えた。それに、殺すより救うほうが良い。
「ミサキ、お前」
「ウカ様、時には妥協が大事です
だって多分、いえきっと、ウカ様が頷かないと紅燕様はお帰りにならないと思います」
ミサキの言葉に紅と朱が大きく頷いている。
脳筋であり頑固なようだ。なんとも迷惑な…
「生きてる保証は無いのだぞ?」
「良いんじゃありませんか?私たちは慈善団体ではありませんので」
さらりと言うミサキに、それもそうかと納得するウカ。いつも言っている。良縁か悪縁か、それは繋いでみないと分からないし、人によっては感じ方も違う。捉え方も違う。
慈善団体では無い、ただの神とその眷属に過ぎないのだから。期待されても困るというものだ。
「それで良いか?犯人が分かるとも限らぬ、だが子供たちには会えるだろう
それと、天狗のイメージは覆らん、諦めろ」
ウカの言葉に、不服そうな紅燕だが紅と朱に宥められ何とか納得して貰えた。
「では、姫君のお力添えを賜りとう存じます」
「は?」
予想外の言葉にウカが素早く反応する。低く短い一言。だが、何よりも鋭さがあった。一瞬で場を支配したウカ。圧を受けていないミサキでも、震えてしまうほどだった。
それを真正面から受けた紅燕の顔色はとても悪い。紅と朱も手を取り震えている。
「ミサキを使おうと言うのか、貴様」
「…はい、何卒お願い申し上げます」
それでも引かない紅燕は、あっぱれという他ないだろう。いや、本当にすごいな?この怖いウカ様を真正面からしかも目を見て話すなんて、普通に無理な話だ。
「う、ウカ様、私は構いませんから」
「許可できん」
「ですが、何かあってもウカ様なら私を見つけられるでしょ?
私はウカ様のこと、信じてますから!」
ミサキの言葉にグッと黙り込むウカ。
こんなことを言われては、却下するのは難しい。いや、普通に却下してしまえば良い話なのだが、この神はミサキに激甘なのだ。こんな、心から信頼してます!の言葉を貰ってしまったからには応えたい。否、応えなくてはならない。
「…わかった。我の傍を離れるでないぞ」
「はーい!
ありがとうございます!ウカ様!
大好きです!」
くるりと後ろを向き、ウカの首に抱きつく。内心、ウカ様私に甘すぎですよと思うが、本人に言うと速攻で否定される為伝えない。
本当にちょろい。ちょろ神である。
「ミサキに感謝しろ」
「はっ、ありがとうございます」
「いいえ、でも私何も出来ないですからね?」
「ご謙遜を」
笑いながら言われてしまった。
いや本当に何も出来ませんから!とこのあと何度も説明したが納得はして貰えなかった。
その日はそのまま帰ってもらい、後日改めて来るそうだ。
紅と朱も紅燕の見張りとして、また来ると言っていたので、次は沢山話そうと密かに決意したミサキだった。




