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07.贈り物(しゅくふく)


 式神たちにウカの居場所を聞くと、客間にいるという。紅燕たちが来たからだろうか?と首を傾げながら、トタトタと客間へ向かった。

 戸の前で止まり、少しだけ前髪を直す。


「ウカ様、ミサキが参りました」


 声をかけると何時もならすぐにウカからの入室の許可が下りるのだが、今日はなかなか許可されない。

 聞こえなかったのだろうか?と思い、もう一度声をかけようとすると、戸がスパーンと開いた。

 肩が跳ね、思わずひぇ…と声にならない声が出たが、戸を開けたのはウカだった。

 何も言わずにミサキを抱きしめるウカに困惑しながらも、よしよしと優しく撫でた。

 ミサキよりも大きいウカに抱きしめられると何も見えなくなるのだが、何とかして部屋の中を見るとそこには美しい女性が2人。ニコニコしながら、ミサキに手を振っている。


「あぁ…お疲れ様です、ウカ様」


 どのくらい相手をしていたのだろうかと、少し遠い目になりながら、ウカに労りの言葉をかける。その言葉に反応したのか、もっと言えと言うように少し抱きしめる力が強くなった。


「そろそろ、(わたくし)たちにも愛しのお嬢様とお話させてくださらない?」


 咲耶姫の言葉に一瞬反応したウカだったが、ミサキを離すことは無かった。

 その為、抱きしめられたまま入室。座る時も抱えられたままで、嬉しい半面少し恥ずかしかった。


「こんにちは!佐保姫様、咲耶姫様

 お2人は本当に美しいですね!」


「ありがとうございます、可愛い子」


「貴方はとても素直で、良い子だこと」


 ミサキの素直な言葉に、佐保姫も咲耶姫もふわりと花が咲くように笑った。


「お2人は、ウカ様に御用でしたか?」


「それもありますが、愛しい子、貴女にも春の挨拶をしに参りました」


「私も、愛し子に逢いに来ましたの」


 2人は立ち上がり、ミサキの傍に腰を下ろす。

 手を取り指先に優しい口付けをする。

 桜色の光が灯り、花びらがまう。花びらがミサキの小指に集まり指輪の形が作られる。


「素敵な春を過ごせるように」


「素敵な出会いがあるように」


「何かあったら、呼んでくださいね」


 そう言った彼女たちの目は慈愛に満ち溢れていた。

2人の女神たちに、思いもよらない贈り物をされたミサキはポカンと口を開けて放心していた。

 ミサキを抱きしめるウカの腕の力が段々と強くなってくる。我に返り、そろそろ口から臓物が飛び出そうなので、腕をペチペチと叩いて抵抗する。上を見上げてウカの顔を見ると、今にも呪い殺しそうな恐ろしい目をしていたので、名前を呼び正気に戻す。


「う、ウカ様!可愛いお顔が大変なことになってます!」


「我の顔は可愛くは無いぞ?」


 ミサキの斜め上の言葉と、ウカの返事を聞いて、佐保姫と咲耶姫はクスクスと笑った。

 そんな2人をウカは睨む。が、全く相手にはされていない。まるで、母と子のやり取りを見ているようだった。


「姫様方、そろそろ帰りましょう」


 戸の方から小さな声が聞こえる。

 ゆっくりと戸が開かれ、そこに居たのは手のひらサイズ程の小さな子供。眉の上でパッツンに切り揃えられた前髪と顔のラインに合わせて切られている後ろ髪。小さな花を頭に散りばめられており、動く度にシャラシャラと花びらが舞っている。

 真っ白な袴を着たこの子は、木霊(こだま)

 樹木に宿る精霊である。


「そうですね、そろそろお暇させて頂きます」


「今度は貴方たちが居らしてね」


 そう言うや否や2人は木霊と共に帰っていった。

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