06.天狗の親子
「お父様、怖がっています」
「デカくて、怖い目つきの男に睨まれたら、怖いと思います」
鋭い目で見られ、驚き式神の後ろに隠れてしまったミサキを見て、双子が男を諌める。
「ごめんね、大丈夫だよ」
「図体デカイだけで、子供には優しい人だから安心して」
可愛い顔からびっくりする程の辛辣な言葉。その言葉を聞いて、男はシュンっと肩を落としていた。
そこまで言わなくても…と思ったが、怖かったのは事実なので何も言わないことにした。
「あたしは、紅」
「わたしは、朱
そしてこのデカイのが、父の紅燕です
本日は、お願いがあり、参りました」
何も言わないミサキを見て、優しく微笑み名前を名乗った双子の少女。
紅と名乗った少女は、真ん中よりもやや左寄りで分けられた前髪と、ふわりと広がった肩のラインで切り揃えられた赤い髪が、とても美しい少女だった。濃く赤い瞳は父親譲りなのだろう。見つめられたら、また悲鳴が漏れてしまいそうだ。
朱と名乗った少女は、真ん中分けの前髪で、紅よりも短く切り揃えられているストレートな赤い髪。薄い赤の瞳は、見る角度によってはピンクにも見える。
2人はお揃いの黒い着物を着ている。赤い帯には金の糸で刺繍されていて、とてもよく似合っていた。
そして、丁寧な物言いの紅と辛辣な朱に紹介された男。2人に父親の紅燕。
彼は、双子たちの髪色よりも濃く長い赤い髪を後ろで縛っている。メガネを掛けており、その奥に見える切れ長の目に赤い瞳。キラリと輝く意志の強い目を見て、ミサキは慌てて首を引っ込める。
「お願いというのは、主様にでしょうか?」
式神が1歩前に出て、問いかける。
それに合わせて、紅燕も前に出る。
「いかにも、縁結びの神でもある宇迦之御魂神様にお願いがあり参った次第である
前触れもなく来てしまい、本当に申し訳ない」
頭を下げる紅燕に続き、紅と朱も深々と頭を下げる。
その様子に、ミサキはあわあわとするだけだったが、式神たちは至って冷静であった。
ミサキの後ろにいる式神の1人が、屋敷の中にいる式神と連絡を取り、主であるウカに許可を貰っている最中だったからだ。
何も言わない式神たち、何も言われないから頭を上げられない紅燕たち。流石に声をかけなければと思い、ミサキが顔を出した瞬間、門が開いた。
「主様がお会いになるそうです。どうぞ中へ」
「お嬢様も、中へ」
「主様がお待ちですよ」
式神たちに背中を押され、中へと足を踏み入れる。突然の事で驚き、戸惑いながら後ろをチラリと向くと、3人も困惑していた。
だが、式神たちがどうにかするだろうと思い、前を向き木の子たちと一緒に屋敷へ入っていった。最優先事項はウカ様なので!
屋敷に入り、自分の部屋へと急ぐ。たけのこが大量に入った籠は式神たちが厨に持って行ってくれると言うので、お言葉に甘えることにした。
着ていたものを脱ぎ、真っ白な着物に着替える。赤と黒の帯を巻いて桜柄のピンクの帯締めを巻けば出来上がり。頭に巻いていた布を取って、髪を軽く直す。姿見の前でくるりと回り、問題ないことを確認すると、ウカの元へと走った。




