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05.たけのこ掘り

ウカが女神たちと会う少し前。

 ミサキたちは、朝早くからたけのこ掘りに出かけていた。

 早朝ということもあり、竹林の中は少し肌寒い。ミサキの今日のコーデは、ピンクの小袖に黒の袴。薄緑の小袿(こうちぎ)を着て、袖は邪魔にならないように、白い紐で襷掛けされている。長い髪は、一つに括られており、頭には白い布が巻かれている。これは帽子の代りである。

 手は分厚い軍手で覆われていて、少し窮屈そうに見える。

 少し音を外した歌を歌っているミサキは、とてもご機嫌なことが伺える。


「たっけのこ、たっけのこ、ニョッキニョキ〜♪」


「たけ」


「のこ」


「にょき」


 ミサキの前方を歩く木の子たちは、歌に合わせながら体を横に揺らしたり、手を合わせて頭の上に出しニョキっと飛び跳ねたりしていた。それをミサキの後ろから付いてきている式神たちは、微笑ましそうに見ている。もっとも、顔は面布で見えないのだが。


「お嬢様、たけのこを掘るのでしたらその辺りが良いと思われます」


「足元、お気を付けください」


「はーい!ありがとうございます!」


 式神たちが誘導してくれたところの足元を見ると、たけのこの頭が小さく土中から出ているのが分かる。


「よーし!木の子ちゃんたち、たけのこ沢山掘ろうね!」


「たけのこ」


「にょき」


「これ?」


「どこ?」


 木の子たちは、基本的に自由な為、ミサキの声掛けにも反応せず好きなように動いている。

 少しだけ顔を出しているたけのこをちょんちょんと触ったり、未だにニョキっとしていたり。そんな様子を見て、ミサキはニコニコしていた。


 式神たちから、たけのこ鍬を受け取り掘っていく。毎年しているお陰でとても手際が良い。

 木の子たちも2、3人が一緒になり掘っている。危ないところは、式神たちが手伝ってくれるので問題はない。


「わっ!」


 思ったよりも勢いよく抜けてしまい、ミサキは後ろにひっくり返った。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「お怪我はございませんか?」


「いてて、大丈夫です!

 土がふかふかなので、怪我はしてないです!」


 心配そうに駆け寄る式神たち。そんな心配を振り払うようににっこりと笑ってから、土の付いたお尻をパッと払い立ち上がる。


「それより、見てください!

 たけのこ、すっごく大っきいです!」


 手に持ったたけのこはとても大きく、ミサキの顔が隠れてしまうほどの大きさだった。

 この竹林を含めた森全体は、ウカの『豊穣の力』の恩恵を強く受けている。その為、植物は育ちやすく実りが豊かであった。

 この大きな(大き過ぎる)たけのこも、その力のおかげなのだろう。


 時刻は巳の刻を過ぎた頃、そろそろ帰りましょうという式神の声掛けで、たけのこが入った籠を背負い歩いていた。屋敷に戻る頃には午の刻を過ぎていることだろう。早めに帰り、アク抜きをしなければならないのだが、たけのこ掘りが楽しくてこんな時間になってしまった。


「式神さん、これで何作りましょうか?」


「そうですね、たけのこご飯は欠かせませんね」


「お煮付けも良いかと思います」


「そのまま炭火で焼くのも美味しいと思いますよ」


「わー!どれも美味しそうで困っちゃいます!」


 式神たちの提案はどれも美味しそうで、全て作ってしまおうかと考えていた。

 この掘った量を見ると、数日はたけのこづくしになりそうだ。ウカ様が飽きないように工夫しないと。ミサキは小さく手を握り気合を入れた。


「木の子ちゃんたちも、ご飯食べに来てね」


「ごはん」


「たけのこ」


「にょき」


 ご飯という言葉に反応して目をキラキラ輝かせている木の子たち。約1名ほど、ニョキにハマったのかずっとやっている子が居るが、それは気にしない事にした。


 しばらく歩いていると、屋敷が見えてくる。

 一目散に駆け出した木の子たちを追いかけるように、ミサキと式神たちも走り出した。

 すると、門の前で人影が見え、立ち止まる。


「だれ?」


「きゃく?」


「たおす?」


 立ち止まった木の子たちは、ミサキの方を振り返り物騒なことを言い出した。


「あわわ、ダメですよ!?倒しません!

 ですが、お客様ですかね?来客の予定は無かったはずなのに」


 絶賛、屋敷の中でウカが来客の相手中だが、そんなことミサキは知らない。

 その為、予定にない来客に首を傾げた。


「何か御用でしょうか?」


 式神がミサキたちの前に出て声をかける。

 声をかけた者たちは、赤髪が美しい男の人と女の子2人。

 男の人の身長は高く、ウカ様よりも高いのでは?と考えていた。

 女の子2人双子のようで、似た顔立ちをしている。目の色が若干違うが遠目から見たらそっくりで分からなそうだ。

 ミサキも式神の後ろから3人を覗き込むようにして見上げていた。

 すると、男とバッチリ目が合った。メガネの奥に見える切れ長の赤い目がミサキの紫の瞳を捉えて離さない。


「クゥン…」


 思わず、小さな鳴き声が漏れたのは仕方ない事だった。

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