25.乱闘と視線
「なんだか、騒がしいですわね」
「何かあったんでしょうか?」
「うわ、面倒事はごめんなんだけど〜」
「……お前たちは何故ここに居座る」
10月中旬、神議りが行われている出雲では、ようやく議題の3分の1が終わった。議題の大半は、対応できる神に投げるという乱暴なやり方で……
そして今、ウカ、咲耶姫、少名毘古那神、建御雷神の四人は、何回目か分からない乱闘を、巻き込まれない場所から眺めていた。
だが、咲耶姫が何かを感じ取ったのか、後ろの方を気にしながら小さく呟いた。建御雷神がそれに答え、少名毘古那神は顔を顰めて文句を言った。ウカは、乱闘が起こるたびにやって来る三人に頭を抱えていた。
「宇迦之御魂神。貴方のところが一番安全ですもの」
「そうそ、ウカっちのところなら安心してヤジ飛ばせるし」
「少名毘古那神。ヤジを飛ばすなら、近くまでお連れしますよ。その小ささじゃ聞こえないかもしれませんし。あ、声だけは大きいんでしたね」
「タケっち、喧嘩なら買うよ?」
「喧嘩するならあっちに混ざってこい……」
建御雷神は、少名毘古那神を煽らないと会話ができないのか、毎回この調子だ。それを楽しそうに笑いながら見ている咲耶姫も咲耶姫だ。
「止めろ」
「いいじゃありませんか。お二人は相変わらず仲が良いことで」
ウカは大きなため息をついた。
「それよりも、なにか動き始めたみたいですわよ」
「そのようだな」
神議りが始まってから、警戒するようにこちらを見ていた神たちが動き始めた。
それでも、警戒を解いたわけではないらしく、時折視線を感じる。ウカたちは気づいていないふりをしていた。
「何をしようとしているのかしら?」
「てか、あいつらもバカじゃね? なんであれでバレてないと思ってんだろうね〜?」
「貴方と同じで馬鹿なんですよ」
「ひで〜な、タケっち」
だが、二人が言うのも事実だ。あそこまで不躾に見られていれば、鈍感な者でなければ気づく。神というものは、常に誰かに見られている存在だ。だからこそ、視線には敏感なのだ。それを理解していないのは、神となって日が浅い未熟な神ということになるが……。
「貴方の考えは正しいと思いますわ」
「前回はいなかったもんな〜」
考えを読まれたウカは、微妙な心境だったが、気にするだけ無駄だと悟った。小さな声で式に指示を出し、もしもの時に備えておくことにした。
そして、顔を上げ、前を見据えて小さく呟いた。
「会議の再開はいつになることやら……」
「気づかれていないな」
「呑気なものだ、神とはこういうものなのか?」
「良いじゃないか、お陰で作業がしやすい」
「それもそうだな」
自分たちが気づかれていることも、警戒されていることも知らず、彼らは呑気に会話をしていた。彼らは、何を目的としているのだろうか――




