22.不穏な気配
真っ黒な暗闇の中、こちらを見ているものが一人、二人、三人――
それらは静かに佇んでいる。
何をするわけでもなく、ただじっとこちらを見ているだけ。
それらは静かに佇んでいる。
案山子のように、指先一つ、まばたき一つもせずにこちらを見ている。
それらは静かに佇んでいる。
時折、何かを探すように移動しながら、こちらを見ている。
それらは静かに佇んでいる。
それらは何かを見つけ、ニヤリと笑った。
そんな噂話が、学校で話題になっている。
黎たちに教えてくれたのは、もちろん本田。ニコニコとなんとも楽しそうに話すその姿に、思わず笑いが零れる。
その噂の出どころはまだ掴めていない。だが、生徒の中には、その噂に出てくる者たちに出会ったという者もいる。目撃したという者もいる。真偽は分からない。
複数の生徒からの証言があったため、学校側は急遽、不審者情報として注意喚起を行っていた。
噂話が、ここまで大きくなるのは珍しい。もはや、ただの噂話では済まないのかもしれない。
黎はその日、学校に居残っていたため、帰りが遅くなってしまった。日が落ちるのもすっかり早くなったせいで、周りは薄暗い。少し早足で帰っていると、前方に人影が見えた。ぶつからないように横を通り抜けようとしたが、そこにいたのは一人ではなかった。一人、二人、三人――横に広がるように立っていた。
黎は「邪魔だな」と思いながら横を通り抜けようとしたが、足を止めた。立っている人たちの顔を見てしまったからだ。
その人たちは、不気味に笑っている。黎を見て、笑っている。
黎は本田から聞いた噂話を思い出し、顔を顰めた。そして踵を返し、そいつらから逃げるように走った。
幸い、追っては来なかった。
だが、あの顔が忘れられない。目を瞑ると鮮明に思い出され、気が滅入りそうだった。
それらは見つけた。
見つけてしまった。
見つかってしまった。




