20.踊る神議り
出雲に集まってから1週間。問題なく会議が進んでいた――わけではなく。
「それについては、あちらの神が詳しいのではなくて?」
「いやいや、それ今じゃなくてよくね?」
「それよりも、聞きまして? あの村ではまだ生贄なんてものを捧げているらしいですのよ」
「人間は愚かで可愛いことだ」
話があっちに行ったり、こっちに行ったり……
議長役の神も他の神の雑談に混ざったりするので、進まない。一つ目の議題すらまだ話し終えていないのに、1週間も経っている。
「アァ? もういっぺん言ってみろ!」
「これだから野蛮な神は……もう少し頭を使うということをした方がいい」
毎年のお約束である喧嘩も始まった。ウカは慣れたように、自身に簡易的な結界を張った。他の神も巻き込まれないように結界を張って野次を飛ばしている。
こうなると、この喧嘩が終わらない限り、会議が再開しない。そもそも会議らしい会議もしていないので、どうでも良いのだが……
「帰りたい……」
ウカの小さな呟きを聞いた式神は、小さく頷いた。式神も神議りが始まった数日は、ウカを何とかなだめていたが、この様子を見ると帰ってもいいのではないかと思っていたのだ。
「大変なことになっておりますわね」
さりげなく隣に来た神――木花開耶姫がウカに声をかける。柔らかく笑いながら「お久しぶりですわ」と挨拶するのに対し、ウカは「そうだな」と軽く返す。
「相変わらず素っ気ないですわね」
「いつも通りだろ」
「そうですわね。それよりも、愛しのお嬢様は一緒じゃなくて?」
「……留守番だ」
「過保護ですこと」
わかっていて聞いているのだから、たちが悪いと、ウカは心の中で悪態をつく。ニコニコと読めない表情の木花開耶姫を一瞥してから喧嘩をしている神々へと視線を戻す。
驚くほどに白熱している喧嘩に、少し引いたような表情をするウカを、木花開耶姫は面白そうに笑っていた。
「……何か用か?」
「いえ、用という程のものはありません」
「……」
「その、なら話しかけてくるな。という目はおやめなさい」
「わかっているなら話しかけてくるな」
「神付き合いは大事ですわよ?」
「最低限している」
一際大きな歓声が上がった。
どうやら決着がついたようだ。これで会議を再開できるが、進むかどうかは怪しい。
「今日中に一つ目の議題が終わるといいですわね」
「全くだ」
何事もなく終わればいいが、無理だろうなと確信していた。




