19.陽気と陰気
「ねぇねぇ、ウカっちってば〜」
ちょこまかとウカの周りを飛び回る神。名を『少名毘古那神』と言う。3寸ほどしかない癖に、存在感がすごく、声もよく響くためうるさい。
ウカは眉間に皺を寄せながら、少名毘古那神を掴んだ。
「うおっ!?」
掴まれた少名毘古那神は驚きの声をあげるが、ウカは涼しい顔でひねり潰そうかと考えていた。流石にこんな所で潰したら、あとが面倒なことを理解しているが、黙らせるには無意味だったようだ。
「なになに〜? どしたよ、ウカっち」
だが、ウカの考えなど知らない少名毘古那神はいつもの調子で話し続けていた。少し力を入れても「苦しいよ〜?」と、軽い調子で返す。ウカは長いため息をつき、手を離した。
いきなり手を離された少名毘古那神だが、くるりと回転して綺麗に着地した。それを見たウカは「チッ」と短い舌打ちをしていた。
「少名毘古那神、騒がしいですよ」
硬い声でそう言うのは、『建御雷神』。丁寧な口調で少名毘古那神を窘めるが、ところどころ棘があるように聞こえる。
「え〜? そんなことはないっしょ? てか、タケっちもお久〜」
「貴方、小さいのに声がでかいんですよ」
「小さいは余計じゃね? タケっちはそんななりしてて丁寧な口調でバグるわ〜」
「戯れるなら他所でやれ」
建御雷神の見た目は、ムキムキのマッチョである。そんな見た目だが、話し方は至って丁寧。そのせいで、初めて会う神は2度見するのだった。
見えない火花を散らしながら話している二人に、ウカは呆れたように声をかける。
「そう言わないでください、宇迦之御魂神」
「そうそ、ウカっちも久しぶりの再会を喜ぼうぜ?」
「勝手にやってろ」
吐き捨てるように言うウカ。雑な対応をしているが、昔馴染み相手だから出来ることだった。
「それよりも、気づいていますか?」
「気づかないわけないっしょ〜」
「良かった。馬鹿な貴方でも気づけるくらいならまだ安心ですね」
「いや、酷すぎじゃね?」
「はぁ……」
重いため息をつくが、二人が話しているのはこの不穏な空気のことだろう。チラチラと見られることは良くあるが、その見る目がこちらを警戒するような不審な目なのだ。
それに加え、何か悪い氣が漂っているような気もする。それを察して、二人が話しかけに来たのだろうが……
「余計なお世話だ」
「そう言わずに」
「そんなこと言って〜? 本当は嬉しいんっしょ?」
「さっさと散れ」
そんなことを言われても、ウカの対応に慣れている二人は、笑いながら神議りが始まるまで居座っていた。




