15.十六夜
その夜、夢を見る。
それは幸せな夢だった。暖かい腕に抱かれ、笑い合っている優しい夢。
隣には、もう一人いたような気がするが、上手く顔が見えなかった。
「可愛い子たち、私の大切な子」
その声は優しく包み込むような温かな声。ぬるま湯に浸かっているように、ふわふわと思考が漂う。
ドスリと腹部に衝撃が加えられ、驚いて飛び起きたミサキの目に、四つの小さな目が映った。
「おきた?」
「おきた!」
「え、え!?」
ミサキよりも小さな子供が二人、楽しそうにキャッキャッと笑いながらミサキを見ていた。
「ぼくは、大葉枝皇子」
「わたしは、小葉枝皇子」
「よろしくね」と、声を揃えて言う姿に、ミサキたちは驚き、声を上げることもできなかった。
大葉枝皇子と小葉枝皇子は、お揃いの紺色に金の刺繍糸で葉っぱが描かれた着物を着ていた。黒髪は顎のラインで切りそろえられており、長い前髪から大葉枝皇子は右目だけ、小葉枝皇子は左目だけが見えていた。その瞳は海のように深い青色だった。
黎と姑獲鳥は揃って首を傾げている。ウカは怪訝な顔をしていた。ミサキは、困った顔をしていた。
「はじめましてだね! 宇迦之御魂神」
「はじめましてだね! その眷属と人間と妖怪」
楽しそうに声を上げながら、トタトタと走り回る二人。そんな二人にウカは声をかける。
「双子神のお前たちがなんの用だ?」
「なんの用?」
「遊びに来たの!」
「試しに来たの!」
「その人間に会いに来たの!」
声をそろえて、黎を指さしながら笑顔で言う。それが少し恐ろしくて、黎は目を逸らした。
「黎くんに、何か御用が?」
ミサキが警戒したように問いかけると、二人はキョトンとした顔をしてから首を振った。
「特に無いよ」
「ただ会いに来ただけ」
「あ、でも本当に見えるのかなって!」
「一緒に遊べるのかなって!」
「思っただけ!」
その無邪気な様子に、毒気を抜かれる。警戒するのもバカバカしくなったウカは、一つため息をつき「勝手にしろ」と言い残し、仕事をしに部屋へと戻って行った。
残されたミサキたちは、困ったように顔を見合わせる。
「えっと、遊びます?」
ミサキが恐る恐る問いかけると、大葉枝皇子と小葉枝皇子の目がキラリと光った。
「遊ぶ!」
無邪気な声が二つ、重なって響いた。
バッと立ち上がった二人は、ミサキと黎の手をそれぞれ取り、庭へと引っ張って行った。




