13.月
月は見ている。
むかしむかし。月には一人の神様が住んでおられました。
神様は言いました。
「ここは何もなくて、退屈すぎる!」
と……。
神様は、自分の力を使い、眷属を生み出しました。その眷属は、真っ白な毛並みに血のような真っ赤な目を持つうさぎでした。
神様は、うさぎに色々なことを教えました。字の書き方、読み方、体の使い方。そして、餅のつき方。
餅は神様の大好物。毎月、満月の日には餅をついて食べています。
ぺったんぺったんぺったん……と。
眷属であるうさぎも神様の真似をして餅をつきます。
ぺったんぺったんぺったん……と。
そして仲良く食べるのです。山盛りになった餅を二人で仲良く並んで食べます。
二人が見つめる先には、青が広がるまあるい星。見えなくなることはありません。毎日変わらず、二人はその星を見つめています。
どんな人たちが住んでいるのだろうか?
どんな生き物がいるのだろうか?
どんな食べ物があるのだろうか?
神様の疑問は尽きません。
とうとう、我慢できなくなった神様は、眷属に何も言わず、満月の夜にだけ開く『異界のゲート』を使って、青い星に降り立ちました。
その星で見るものすべて、神様にとっては初めてのものばかり。目移りしてしまいそうになりました。
だけど、ずっと一人でいた神様は、他人と交流するすべを知りませんでした。
どうしていいか分からず、そこら辺をウロウロと……。
あっちの方へ、フラフラと……。
時折、困ったようにオロオロとしていました。
そんな時、見かねた一人の少女が尋ねます。
「だいじょうぶですか?」
神様は声をかけられたことに驚いて、声が出ません。プロの引きこもりと言ってもいい神様は、会話という会話をしたことがないのでした。
口をパクパクさせながら、困っていると、少女は神様の手を引きます。
連れられた先は、団子屋さん。少女は奥にいる母へと声をかけ、持ってきたのは、色とりどりの団子たち。
「どーぞ! たべてみて!」
キラキラの笑顔に負けた神様は、一口団子をかじります。すると、みるみる顔を輝かせました。
こんなに美味しい団子は初めてだったのです。
月へ帰った神様は、あの団子が忘れられませんでした。無断で外出したことを眷属に怒られていても、考えていたのはあの団子のこと。
それから、満月の夜は『異界のゲート』を使って、青い星へ降り、団子を食べて歩いているのです。たとえ、眷属に怒られると分かっていても……。




