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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第183話「独立」

アーリントン州、リングレー。CIF(Central Intelligence Freedom-country)本部。


メインモニターにその女が映し出される。


「紅青。……『ミス・パープル』!」


ポーター長官が忌々しそうにその名前を呼ぶ。


紅青。『人民の国』の初代書記長の妻として、『人民の国』成立後に台頭。実際には、大戦やその後の内戦中は軍部が抑えていたが、平和な時代になり彼らが排除された事により表舞台に立ったらしい。自らが若い頃、女優として活躍出来なかった腹いせに『文化革命』を指導。数万人を粛正したとされる。が、それは表向きで実際には海外と繋がる者の一斉粛正だったと判断できる。その粛清によって政権内部から反対勢力は一掃され、以後、国家戦略は数十年単位で一貫して実行され続けた。その結果として、『人民の国』は世界第2位の経済・軍事大国へと成長した。


つまり、モニターに映る女は世界2位の大国を造った女だった。


カメラの位置を割り出し、私は死角になる位置へそっと移動する。


『はじめまして、CIFの皆さん。私が紅青です』

「はじめまして、ミス・コウ。私がCIF長官のポーター=コールマンだ」


そうやって白々しく挨拶からリモート会談は始まった。


「それで今日はどういったご用件で?」


ポーター長官は自動車ディーラーの営業マンのように言う。そこには『アンタの相手をするのは本来なら大統領官邸か国務省だよ』という本音が見え隠れする。


『我々は新国家「新人民中華共和国」の樹立を宣言する。領土は「仲永諸島」の4島とし、我々と支援者を国民とする』


仲永諸島。日本では長崎県に属し『鋭角諸島』と呼ばれている。戦時中は大陸への中継点として軍事基地化され、敗戦によって放棄された無人島4島からなる諸島で、近年、近海の海底にメタンハイドレートが発見され、『人民の国』が沖縄のあの諸島同様に領有権を主張する場所である。


「それならば、大統領官邸か国務省に通信いただく方がよろしいかと……」


ポーター長官が権限を理由に早々に切り上げようとする。


『あら?その必要はありませんわ。国務省は外交を担当する部署でしょう。私は、世界最高の情報機関に「事実」を確認しに来たのです』


そう言って紅青はニコリと笑う。

オードリー=ヘップバーン、グレース=ケリー……女優から登り詰めた者達。その微笑みと同種に見えるが少し違う。

どこか血の匂いがした。


『それとも、国外で起きた事案をCIFという組織は大統領官邸へ確認しなければ判断できない組織なのですか?』


こう言われては、ポーター長官も通信は切れない。


「おっしゃる意味は理解しました。けれど、『独立』の『承認』ならば、やはり大統領官邸か国務省が適任だと思います」


私はポーター長官という人物を少し見誤っていたかもしれない。国家元首を自称する女を前に、ここまで主義主張を言える役人はそうそう居ない。ある意味で前任のルーザーはキチンと後任を選んだのだと思い知る。


CIFとてチームとして完成されている。ケイシー上級分析官がポーター長官に会話を伸ばすようにジェスチャーを送り、サブモニターに様々な情報が表示される。


『攻撃プランA、第9艦隊による攻撃。「人民の国」との軍事衝突の可能性があり、非推奨』

『攻撃プランB、日本による攻撃。ただし、魔法少女を自国全土に展開中。自衛隊だけでどこまでやれるかは不明瞭』

『外交プランA、「人民の国」による対処。海洋進出を加速する結果となる為、不可』

『外交プランB、現状維持で国務省・大統領の判断を仰ぐ』


私もスマホからLINEを開き、水田マリ宛にスタンプを1つ送る。

数秒と待たずに既読がついた。


『ポーター長官、貴方は優秀ね。「領土」「人民」「主権」は揃った。あと必要なのは、他国が我々を「国家」として扱うことだって、気づいているもの。だからこそ、私はさっき「確認」のためにここへ通信したと告げたのだけれど』


一拍の間。

ポーター長官が何かを言いかけて止める。

その間を逃さず、紅青が次の言葉を吐く。


『佐藤ゆりあ、日本国文部科学大臣。いるんでしょ?』


(さすがね…)


舌打ちしたい思いでカメラの画角に入る場所へ移動する。


『やっぱりいたわね。つまり、「自由の国」と日本は「安全保障条約」に基づき、「共同防衛」していた。条約の条文には「第三国による攻撃があった場合」とあるから、便宜上、我々を「国家」と認めた事になるわ』


狙いはそこか!と思う。いや、『これも』と言うべきか。

どちらにせよ、否定する他ない。


「あら?我々は貴方達の行動とは知らず、『第三国』の攻撃と見做して行動を共にしているのだけど?」

『で、あるならば、我々の仕業と知った今、どうするの?全国に展開する魔法少女達を引き上げさせるの?それとも、このまま「安保条約」上の「共同防衛」を続けるの?」


魔法少女が引き上げない場合、『新人民中華共和国』が『共同防衛が続いている以上、国家として扱われている』と紅青らは宣伝できる。

魔法少女を引き上げた場合は『自由の国』が分断される。私が起こしたSNSの停止も永遠ではない。その時に『自由の国』がどうしようもない分断に晒されるのは明らかだ。


これはどちらにせよ紅青らにとってプラスの出来事だろう。


だから、エマ=ブラウンはSNSで『自由の国』国民の分断を煽り。

エレン=チャウシェは特許が取れそうなゴムを開発してテロを起こし、『自由の国』を混乱へ陥れた。

そして、紅青が締めである『独立』を行う。


テマ・ヒマ・カネ。それらのコストに見合う作戦だった。


「日本国として、あなたの論理に付き合う義理はないわ。『新人民中華共和国』を国家として承認しないし、『自由の国』で展開中の魔法少女も引かない」


そう告げた。

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