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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第176話「バタフライエフェクト」

「女王陛下。モニター越しに失礼します。質問してもよろしいでしょうか?」


私が代表して言う。本来なら現職長官である、ポーターが代表すべきだが、今は荷が勝ち過ぎている。


「構わない。それにあれだ、ここで変に『7:MI局長』などが出張ると腹の探り合いになる。事は急を要するのだ。だから私が答えよう」


率直に言えば、私だって同僚だったルイスからルマニア共和国経由で情報を得ただけだ。だが、ここで「『自由の国』は何もわかっていません」などと、この場で無知をさらせば『CIF』という組織そのものへの信頼を失う。


「女王陛下!此度の世論誘導はサクラ=フジワラが全治1ヶ月の怪我を負った事に相関するとAIが導き出しました。ですが、我々には『魔法少女の負傷』と『中間選挙の均衡状態』が結び付きません。ご教授をお願いします」


ポーターだった。

流石CIF長官まで登り詰めた男である。

これなら『情報』は掴んでいるが『活用に難がある』という評価で済むはずだ。


エリザード女王は満足げに微笑み、1度だけうなづいた。


「その問いに答えるには、一つのレトリックと昔話が必要になる。年寄りの長話だと思って付き合ってくれ。在位80年もやっていると、嫌でも思い出話が増えるのでな」


全員がうなづく。そもそも、何かキッカケでもないとこの大量の情報群から必要な情報のピックアップすらできないだろう。対策ともなれば尚更である。


「まずは『自由の国』がこの瞬間、何らかの理由で核兵器が使用不能になり、それが各国の情報機関に筒抜けだったとしよう。どうなる?」


連合王国らしいレトリック問題だと思う。この質問は同時にこちらの現状認識力を露呈させる。


「女王陛下。私はアジア方面の情報分析官でありましたので、そちら方面でお答えさせていただきます」


そう前置きして、ポーターが答える。


「アジア方面に限って言えば、特に東アジアのパワーバランスが激変します。『人民の国』やあの『半島北側の国』の行動ハードルが劇的に下がるからです。同盟国……この場合、日本と『半島南』、更には『あの島』は核武装か超軍拡か属国化かの3択の判断を迫られるでしょう」


その答えにエリザード女王はまた満足げにうなづいた。


「そうだな。ここで重要なのは『自由の国』が他の国の安全保障にも関与している。いわゆる『核の傘』と言われるものだな。今回のケースは逆だ。日本の魔法少女が怪我を負った結果、『自由の国』が魔女による世論誘導を受けた訳だ」


そこで私は気づく、ポーターは『あの話』を知らない事に。それこそが女王の言う『昔話』だろう。


「ポーター長官、貴殿ほどの分析官なら、“なぜ日本での出来事が『自由の国』に伝播するか”この点が腑に落ちないはずだろう?」

「おっしゃる通りです。女王陛下。正直に言って私は『優先度が低い』と処理していました」


案外、エリザード女王は懐の広い人物なのだろう。明らかな失敗にも笑顔でうなづく。


「だろうな。だが、ここで昔話だ。貴国と日本の間には『安全保障条約』が結ばれているな。これは2つ新旧あるのをご存知か?」

「はい。1960年前後ですね」


『安保条約』は、1951年にサンフランシスコ講和条約と同時に締結された旧条約では、講和後も我が軍が駐留することを定めていた。その後、1960年の新条約では『共同防衛』が盛り込まれた。


「その通りだ。ではなぜ、『自由の国』は『共同防衛』などと譲歩をする必要があったのだ?自国を守れない国など守る価値はないだろう?」

「それは1960年という年が冷戦のスタートの年だからでは?」

「それは表向きの理由だな。1957年、ソ連は『ヴォストニク』という人工衛星を打ち上げた。『ヴォストニク』の質量は『ビックボーイ(広島型原爆)』と同じ。つまりはいつ『白い家』や金融街に核が落ちてきても不思議ではない状況だった」


そこまでは誰でも知っている。問題はその後だろう。


「その状況下で、後年『妖怪』と言われた当時の日本の首相・岸川信男はデモンストレーションしたのだ。高高度でのミサイルの撃墜を。だから両国は『共同防衛』を安保条約に盛り込んだ。ゆえに、現在の混乱は『1人の魔法少女の負傷』がトリガーになり得る訳だ」


特に藤原さくらは我が国『第2艦隊』を単独撃破した実力者だった。


そして、エリザード女王は更に続けた。


「両国の関係を更に強固なものにした事件がある。1979年、貴国の『サードマイル島』の事故だ。あの時、日本から派遣された魔女は見事に格納容器内に水を送り込んだ。おかげで後世では『もっとも安全に収束したメルトダウン』などと言われている」


この話は私も初耳だった。

なるほど、そう考えれば、その後の日本の躍進もうなづける。少なくとも、この国は日本に大きな借りを作ったということか。


「ちなみに、1960年のデモンストレーションと1979年に派遣された魔女は同一人物だ。『長田洋子』という。

……そして、その長田洋子と同一のDNAを持つのが、今回のトリガーである藤原さくら女史だ」

更新・投稿が8月末まで不定期になります。

最近は閲覧数も多く、皆様のおかげでランキングに載る事もあり、大変恐縮ですが本業の掻き入れ時のため、創作に充てる時間が少なくなっています。

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