第174話「コドモとオトナ」
「次、ヴァレリア=クズネツォヴァ」
高野先生がわたしの次のレーラを呼ぶ。
周囲はまだざわついている。
レーラはゴーレム使い……
だがイメージよりも随分と小さいテディベアぐらいの土でできたゴーレムを出す。
それを見ながら、植村先生の話は続く。
「オトナはさ、ズルいんだよ」
レーラが1度ゴーレムを崩して、作り直した。
今度は大きい。
2mぐらいの大きさだった。
みんなが再びどよめく。
その輪に入らず、わたしと植村先生の話は続いていく。
「……『安全』でいてほしい。でも『成長』もしてほしい。だから途中で止める」
「止める?」
「そこで止められた奴は、そこが限界だと思っちまう」
「……?」
「まあ、そういうもんだ」
よくわからない。
「あー!やっぱり、あたし、教えるの向いてない!言語化が苦手過ぎる!」
「それは伝わりましたよ」
と、わたしは笑う。
「でも」
「ん?」
「わたしは、日本に来て良かったです」
植村先生は少しだけ首を傾げる。
「植村先生にも、会えましたから」
数秒、沈黙。
「……そうか」
先生は次のヨハンナの魔法の様子を見ながら続ける。
「まだまだだ。せめてプラス5キロは逃げられるようになれ」
先生の顔が見えない。
でもきっと笑っていると思う。
♦︎♦︎♦︎
同じ頃。自由の国、首都近郊。アーリントン州、リングレー。CIF(Central Intelligence Freedom-country)本部。
ゲートの外は紅葉と常緑樹が混ざり、思わず目を奪われそうになる。
それでも、私が現職だった頃は、この景色に目を向ける余裕すらなかった。
だから、これから会う彼も同じなのだろう。
「お疲れ様です。ルーザー=ブライトン前長官」
守衛はそう言ってゲートを開けてくれる。
どうやら、本部へはまだ顔パスで行けるらしい。
まあ、自動車のナンバーから所有者を割り出しているので、誰が来るかはゲート前に停車した時点で判明しているのだろうが。
突然の訪問にも関わらず、建物入口でもスムーズにゲストパスを渡してくれる。
ここまで来れば、勝手知ったる。いや、自分の長官時代に『白い家』に行きやすいよう、長官室は通用口の直上に改装していた。
「ーーみんな今回は良くやってくれた。今回の中間選挙に『人民の国』や『北の大国』、中東から選挙妨害やサイバー攻撃は皆無だった。これも皆の普段からの働きのおかげだ。今日はゆっくり休んでくれ」
瞬間、頭に血が登る。
それを抑えるように深呼吸する。
幹部職員にそう言って労う、現職長官ポーター=コールマンに短く言う。
「正気か?」
私のいきなりの登場にその場にいた全員が目を剥く。




